チーズ

チーズ

チーズ作りは牛乳を保存する一般的な方法として昔から続けられてきました。現在、スペインには100種類を超えるチーズがあり、それらは各地域に住む多くの人々と、地域固有の文化によって継承された歴史的遺産ともいえるものです。古代ローマ人にとって、チーズは穀物や野菜といった基本の食事を補う重要な栄養源として、また、持ち運びに便利な携帯食として、農民から兵士にまで欠かせない食品となっていました。
スペインで作られるチーズの種類がこれほどバラエティー豊かなのは、国内の地理と気候もまた、多様性に富んでいるからです。チーズは牛、羊、山羊の単独の乳から作られる場合と、数種類の乳を混ぜ合わせて作る場合がありますが、そのほとんどで使われる乳は、在来種の動物の由来の乳です。使われる凝固剤は酵素や乳酸、あるいはこれらを混ぜあわせる場合もあり、サイズや外皮の色、形状も丸や四角など種類豊富です。多くのチーズには独自の刻印が押されます。スモークチーズ、オイル漬けチーズ、あるいはスパイスで香りづけしたチーズなどもあります。大規模な製造工場の他に、その土地本来の特徴と伝統的な風味を守り続けている職人が働く、小さなチーズ工房もあります。

羊乳を使ったスペイン産チーズ


羊はスペインの最も代表的な家畜で、主にスペイン中央部のカスティーリャ平原や南西部に生息しています。これらの地域では、特に冬から春にかけて牧草が豊富に育ちます。最もよく知られる羊の種類はチュラ種、メリノ種、カステリャナ種、マンチェガ種で、これらはすべて昔から羊毛を取るために飼育されてきましたが、現在ではチーズの生産が主な目的となっています。スペインを代表する有名なチーズとして、ケソ・マンチェゴ、ケソ・サモラノ、トルタ・デ・ラ・セレナ、トルタ・デル・カサールがあり、これらすべてが原産地呼称保護(PDO)の対象となっています。

スペイン北部バスク州およびナバラ州に広がる山には、他にもPDO呼称保護を認定された、イディアサバルとロンカルの2種類の羊のチーズがあります。それぞれ、ラチャ種とカランサナ種(PDOイディアサバル)、ラチャ種とロサ・アラゴネッサ種(PDO ロンカル)という珍しい在来種の乳を使っています。

スペイン北部の牛乳を使ったチーズ


イベリア半島においてピコス・デ・エウロパ連山、ガリシアの山々、 ピレネー山脈で隔てられた、スペイン北部の海岸沿いに連なる雨の多い山間地方には、牧草地と耕作された牧場が広がっています。そこで育つ牧草を飼料として、その自然環境に完全に適応した15品種以上の在来種の牛が育てられています。

この地域には山深い辺鄙な場所が多く、地理的に行き来が少ないことから、非常にバラエティー豊かな種類のチーズの生産が生まれました。アストゥリアス州だけでもチーズの種類は20種類以上を数えます。スペイン北部の牛を使ったチーズの多くはPDOの呼称保護認定を受けており、ガリシア州のテティージャ、カタルーニャ州のラルト・ウルジェイ・イ・ラ・セルダーニャなどが代表的です。バレアス諸島の最北端に位置するメノルカ島の、マオン・メノルカの名前で知られる、牛乳から作るチーズもまたPDO呼称保護の対象のチーズです。

バターもスペイン北部を代表する製品で、ソリアバターの他、ラルト・ウルジェイ・イ・ラ・セルダーニャで作られるバターなどはPDOの呼称保護を受けています。

山羊乳を使ったスペイン産チーズ


山羊は他の家畜が近づくことのできない急峻な場所に育つ植物を餌にすることができます。スペインでは、山羊の多くは、地中海沿岸の崖のそそり立つ地形の地域や、アンダルシア地域やエストレマドゥーラ州の一部の地区で飼育されており、在来種が数種、交配種も数種あります。PDO呼称保護を受けている山羊のチーズは2つあり、レティンタ種の山羊乳を使ったエストレマドゥーラ州の同名の地域で生産されるイボレスと、ムルシア種の山羊乳を使い赤ワインに漬けて作られるムルシア・アル・ビノがあります。

PDO呼称保護を受けたカナリア諸島原産の山羊のチーズには、 ラ・パルマ島のパルメロと、フエルテベントゥーラ島のマホレロがあります。この2つのチーズはよく似ていますが、パルメロチーズは通常、燻製処理されています。

混乳を原料とするチーズ

羊、牛、山羊の3種類いずれのチーズも、スペインでは通常、年間を通して作らています。種類の異なる家畜を同時に飼育している場合が多いので、それらの乳を混合してチーズを製造することも多く、特にスペイン中央部ではその製法がよく見られます。一般的に、この種のチーズは円筒形で、生産量、消費量ともに最も多い種類です。混乳を使用したチーズのなかで、一番好まれているのはイベリコチーズで、マイルドでありながら、原料の大半を占める牛乳が持つ酸味と、山羊乳の少しピリッとした辛味、さらに羊乳に含まれるバターのような風味と香りが相まって、際立つ風味を生み出しています。

カンタブリア州、アストゥリアス州、カスティーリャ・イ・レオン州に接する大連峰のピコス・デ・エウロパ の地域では、柔らかいブルーチーズが数種類作られています。ビスケー湾に近い、スペイン北部のこの山地は、チーズの外側につくカビの繁殖に最適な湿度と冷気を生み出す自然の洞窟が点在する場所で、このカビは特徴的な青い縞目を作りながら、徐々にチーズ内部に入り込んでいきます。このタイプのチーズで最も知られているのはPDOカブラレスです。ピコス・デ・エウロパ連山のアストゥリアス側の地区で、春と夏に生の牛乳に山羊乳と羊乳を少し加えて作られます。その他に、PDOピコン・ベヘス=トレスビソやPDOバルデオンがあり、カンタブリア県とレオン県の山間の村でそれぞれ作られています。

スペインで作られるチーズの種類がこれほど多いのは、国内の地理と気候が多様性に富んでいるためです。チーズは牛、羊、山羊の乳から作られるか、またはこれらを混ぜ合わせて作られます。ほとんどの場合、在来種から採った乳が使用されています。

チーズの産地

Spanish Cheese and Butter Map - Protected Designations of Origin (PDO) and Protected Geographical Indications (PGI) 「地図の最新版はこちら」(外部リンク)

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