産地紹介(イベリコ豚と 白豚のハム(ハモン)と 豚肉製品)

PDO デエサ・デ・エストレマドゥーラ(Dehesa de Extremadura)

ハモン(後脚)とパレタ(前脚)といった熟成生ハムは、広大な土地で飼育した純血イベリコ種、又はイベリコ種血統75%以上の交配種(イベリコ種とデュロック・ジャージー種の交配)を用い、ハモンは18か月以上、パレタは12か月以上かけて加工します。

味の特徴

複雑で強い風味が長く続くのに加え、甘さの中のわずかな辛味、そしてナッツのような自然の香りなど、様々な味わいを感じられます。薄くスライスすると口の中で脂肪が溶け、デ・ベジョータ(ドングリを食べて育った豚)という最高級で特徴的な香りをより芳醇にし、しっかりとした歯ごたえと柔らかさを同時に味わうことができます。

その他の特徴

形状は「V型」と呼ばれる細長い形に整えられます。蹄を残したままでハモンは4.5Kg以上、パレタは3.5Kg以上の重量と定められています。スライスした肉の色はピンク~濃い赤/紫色、筋肉の中に浸潤している脂肪は黄/白色に見えます。香りや肉質は飼料におけるドングリの割合によります。水分含有量は外側で50%以下、中心部で55%以下、塩化ナトリウム含有量は5%以下であることを基準とします。

製造/加工工程

輸送時の疲労やストレスから回復するため、イベリコ豚は屠殺場に屠殺時刻の24時間前には届けられます。

四肢が切断されると、重量によって等級分けされます。後脚は6Kg以上と定められており、6~8Kg、8~11Kg、11Kg以上の3グループに分けられます。前脚は4Kg以上と定められており、4~5Kg、5Kg以上の2グループに分けられます。そして、カットした肉はその後36~48時間、1~4℃で保管されます。

最初の工程は塩漬けです。食塩と硝酸塩を肉に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促し、塩蔵製品特有の色や香りを形成します。この工程は室温1~5℃、相対湿度約80~90%で行います。塩漬け時間は肉の重さとイベリコ種の純血度によって異なります。大体の目安としては、1Kg(2.2lbs)当たり1日となります。工程期間の半ばで肉をひっくり返し、塩が均等になじむようにします。
第2工程では、肉を冷水かぬるめの水で洗浄し、表面の塩を除去します。

そして次が寝かしと呼ばれる工程で、35~45日間かかります。肉は室温3~6℃、相対湿度80~90%の部屋に保管されます。この工程期間は35~45日で、塩を均等にしみこませます。

その後、モモ肉と肩肉は自然熟成庫に吊るされます。熟成庫の窓は開閉できるようになっており、通気を管理することで、相対湿度と室温を最適な状態に保ちます。この工程の間に徐々に製品は乾燥され、筋肉繊維に脂肪のサシが入り、製品独特の香りを形成します。
最後の工程(熟成)では肉を貯蔵室に移し、吊るして熟成させていきます。生化学的加工は前工程に引き続きここでも行われ、微生物の力で製品に独特の香りと風味を出していきます。肉の重さで貯蔵庫に保管される時間が決まります。

全製造工程は、ハモンで18か月以上、パレタで12か月以上かかりますが、肉の重量や品質で異なります。原産地呼称認定製品(PDO)は番号の入ったプラスチックのタグとラベルが付けられます。ラベルの色は、赤がベジョータ、緑がレセボ、クリーム色がピエンソです。

地理/気候要因

エストレマドゥーラ州には3つの山系が走っています。北部にはセントラル山系とグレドス山脈の山麓、中部にはトレド山脈がタホ川とグアディアナ川の間を走り、そして南部にはシエラ・モレナ山脈の山麓が走っています。この地方の平均標高は400m、最高峰はカルビテロ山(グレドス山脈)で標高2,041mです。

カセレス県の土壌の大部分はケイ素物質を含有する花崗岩石と広範囲に広がる粘板石と自然砒で主に形成されています。バダホス県の土壌は、エンティソル(最近形成され、未発達の土壌)、インセプティソル(若く、少し発達した土壌)、アルフィソル(比較的栄養に富んだ土壌)、ヴァーティソル(粘土分の多い土壌)のカテゴリーに属します。

この地域は大陸性気候で、大西洋の影響も多少受けています。年間降水量は500mm、北東部山岳地帯では1,200mmに達します。平均的に見ると、1年間で曇りが77日、晴天が140日あります。平均年間気温は16~17℃で、北部地方では10℃を下回ります。41℃という猛暑が7月・8月に記録された半面、12月・1月には3~4℃となります。夏と冬の気温差の平均は16~17℃で、2月末~11月中旬は霜が降りません。

イベリコ豚を自由に放牧するデエサと呼ばれるトキワガシや樫の森林地帯は、エクストレマドゥーラ州を代表するもので、100万ヘクタールもの広さがあります。エクストレマドゥーラ州は東西に流れる2つの重要な川、カセレス県のタホ川とバダホス県のグアディアナ川によって潤されています。タホ川の水量は変化が激しく、最大が2月の1秒あたり350㎥、最小は8月・9月の1秒あたり11㎥です。グアディアナ川は全長357.7Kmで、バダホス県内を流れます。

原産地呼称認定製品(PDO)は番号の入ったプラスチックのタグとラベルが付けられます。ラベルの色は、赤がベジョータ、緑がレセボ、クリーム色がピエンソです。

ハモン・コンソルシオ・セラーノ
(ハモン・セラーノ輸出協会認定生ハム - Consorcio del Jamón Serrano Español)

白豚のハモン(後脚)は、コンソルシオ・デル・ハモン・セラーノ(ハモン・セラーノ輸出協会)の規定した伝統的な加工方法に基づいて製造され、平均的な熟成期間は12か月(最低9か月保証)です。

味の特徴

ハモン・セラーノ輸出協会の品質管理部門は品質管理と製品の選別により、最高品質の保証というだけでなく、スペイン産ハモン・セラーノを特徴づける独特の舌触りと風味がいつも変わらず消費者の皆様に届けられるよう心がけています。

塩分ひかえめで風味は繊細です。独特の良い香りを持ち、均一で繊維質の少ない肉質、脂肪分が少なく、歯ごたえはしっかりとしています。

その他の特徴

- 肉質:固め

- 色:紫~赤色

- 風味:強い

製造/加工工程

現在も、ハモン・コンソルシオ・セラーノは、ハモン・セラーノの熟練職人が何世紀もの間守ってきた伝統的な加工方法で製造されています。

ハモン・コンソルシオ・セラーノの製造においては、精肉の品質、原産地や加工技術(重さ、脂肪含有率、他)など、スペイン・ハモン・セラーノ輸出協会の定めた品質規定に対応しています。

製造工程は、低温・高湿度で生のモモ肉の微生物安定性を確保することから始まります。その後、次のステップに進みます。

塩漬け:この工程の主目的は塩を生のモモ肉に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促すことです。塩漬け期間:6~15日間。

乾燥熟成・成熟期:室温を徐々に上げ、同時に湿度を下げていくことによって、自然に脂肪を溶解させ、筋肉に均等に浸潤させます。それによって、ハモン・セラーノの官能的な特徴(色、香り、味など)を形成します。

熟成:塩蔵工程の最終段階です。これで熟成生ハムの熟成が終了します。非常に長い時間をかけて、この特別な製品を「ハモン・セラーノ」と呼ばれるものにします。

選別:ハモン・セラーノの出荷段階で、スペイン・ハモン・セラーノ輸出協会の品質検査専門チームが製品を一つずつ選別していきます。検査項目は品質規定で定められており、形状や官能的な特徴を含みます。

タグ付け:選択工程で基準を満たしたハモン・セラーノはパッケージにハモン・セラーノ輸出協会認定熟成生ハムであることを証明するタグが付けられます。

簡単に言うと、ハモン・セラーノ輸出協会の品質タグが付けられたハモン・セラーノは、協会の品質基準を満たしたスペイン産のハモン・コンソルシオ・セラーノであることの証明なのです。

•スペイン・ハモン・セラーノ輸出協会の品質基準を満たしています。

•スペイン独特の製造工程で作られています。

•ヨーロッパT.S.G認証(伝統的特産品保証制度)によって「ハモン・セラーノ」の名称は保護されています。

•平均的な熟成期間は12か月(最低9か月保証)です。

•加工施設は、定期検査と監査によって、工場設備、加工工程、製品を管理されています。

•製品の品質はそれぞれの管理番号で保障されています。ハモン・コンソルシオ・セラーノは、認証タグ、焼印、ハモン・セラーノ輸出協会のロゴ、管理番号付きのラベルによって識別できます。その中でも限られたものだけに署名入り特別タグが付けられます。

ハモン・コンソルシオ・セラーノは、ハモン・セラーノの熟練職人が何世紀もの間守ってきた伝統的な加工方法で製造されています。

ハモン・セラーノ(熟成生ハム)&チャルクテリーア(肉加工品)

長い歴史のあるスペイン産熟成生ハムやその他肉加工品は、地理、気候、歴史、文化、さらには宗教的な要因の組み合わせによるものです。なぜなら、豚の飼育は、キリスト教世界全体を通してローマ文明から受け継がれているものの一つだからなのです。

ハモン・セラーノとその他熟成生ハム

もしもスペインの食文化を代表する食品を一つ選ぶとしたら、それは豚肉加工品の頂点に立つ熟成生ハムであるかもしれません。スペインを初めて訪れる人は、誰もが熟成生ハムがどることに驚きます。全ての食料品店やレストランにあるというだけでなく、もはやスペイン人の潜在意識にある本能のようなものかもしれません。

長い歴史のあるスペイン産熟成生ハムやその他肉加工品は、地理、気候、歴史、文化、さらには宗教的な要因の組み合わせによるものです。なぜなら、豚の飼育は、キリスト教世界全体を通してローマ文明から受け継がれているものの一つだからなのです。当時からモモ肉は塩をまぶして何日か置いた後、山の空気で熟成させていました。セラーノとは、元々は「山から来た」という意味です。今日ではこの言葉は白豚の熟成生ハムという意味でつかわれますが、ここでいう白豚とは、伝統的特産品保証制度(TSG)認定のハモン・セラーノ用ラベルを貼るための条件を満たす種類、特にデュロック種、ランドレース種、そしてラージ・ホワイト種などを指します。イベリコ豚で作った熟成生ハムは、ハモン・イベリコと呼ばれます。

現在熟成生ハム生産量と消費量ともにスペインが世界1位です。伝統的な職人の製造法での加工が続けられていますが、昔ながらの自然乾燥室の多くは近代的な冷蔵室にとって代わられ、室温・湿度を製造に最も適した条件で管理しています。

熟成生ハムの品質は、精肉の産地、豚の種類、あるいは餌の種類、屠殺方法、製造技術や工程の長さなどによって、いくつもの等級に分けられます。熟成期間は最低7か月と規定されていますが、未加工肉重量や他の要因によってそれ以上長くなることもあります。

いくつかの町や地域は、伝統と品質を誇る白豚熟成生ハムの特産地として有名になり、それぞれの品質証明タグが付けられます。アラゴン州の原産地呼称制度(PDO)ハモン・デ・テルエル、アンダルシア州グラナダ県アルプハラの山々の地理的表示保護制度(PGI)ハモン・デ・トレベレスなどです。

これらの製品は原産地名で知られた地域特産品であり、TSGハモン・セラーノの規定に対応して「セラーノ」という一般的な名称が用いられる製品とは異なります。

質の良いハモン・セラーノの切り身はつやがあり、ピンク~赤紫の色をしています。しっかりとした歯ごたえで繊維の少ない肉質、強い風味があり、繊細、塩分は強くなく、滑らかな舌触りと独特の香り、といった特徴があります。

熟成生ハムはタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富です。適度な脂肪があり、その多くは不飽和脂肪です。製造工程で食塩が加えられるため、微生物学的な面でも安全です。最近では、新しい技術によって低塩加工が可能になり、より健康的でバランスの取れた製品が作られています。

スペイン人は熟成生ハムが大好きです。昼夜を問わず、どんなお祝いの席にも熟成生ハムが供されます。紙のように薄くスライスした熟成生ハムと美味しいパン、これこそ典型的なタパスです。しかし供され方は様々です。例えば、新鮮なトマトやメロン、その他フルーツに添えて、ガスパチョやサルモレホといった冷たいスープの飾りとして、あるいは、サラダに入れたり、加熱する料理に加えたりしても素晴らしい味を引き出します。

豚肉加工品

スペインの地理、歴史、伝統が組み合わさることにより、数多くの腸詰製品が生産されています。熟成生ハムやイベリコ豚肉加工品と並び、スペインの食文化を特徴づける食材です。

様々なスペイン産腸詰製品を見ていくにあたり、まず製造方法別に見ることにしましょう。最初に、一般的にはデュロック種、ランドレース種、ラージ・ホワイト種から作られています。そして、非加熱製品(製造過程で乾燥・熟成される)と加熱製品の2つのカテゴリーに大きく分けられます。前者の代表はチョリソです。時間や空気で成熟するのだけではなく、豚肉に加える塩や香辛料、そして味の決め手になるパプリカも重要です。

加熱製品を代表するのはモルシーリャ(ブラッド・ソーセージ)で、数多くの種類があります。他にも、加熱後熟成させたブティファラは地中海地方(特にカタルーニャ州)で、燻製腸詰はガリシア州や降雨量の多い北部スペインの山岳地帯で作られています。

カタルーニャ州、バレンシア州、バレアレス諸島の地中海地方では、ほとんどの豚肉加工品が加熱処理されており、香辛料はパプリカよりも黒コショウが良く使われます。この地方で例外的にパプリカを使ったものがマヨルカ島の有名なソブラサーダです。カナリア諸島を含むスペインのその他の地域では、特にチョリソ、ブラッド・ソーセージには塩蔵法が通常用いられ、パプリカが風味づけに用いられます。

いずれにせよ、スペイン国内で先祖代々のレシピや腸詰つくりの伝統のない地域など存在しません。多くの製品は地元の名称を使い続けていますが、カスティーヤ・イ・レオン州のモルシーリャ・デ・ブルゴスやPGIチョリソ・デ・カンティンパロ(セゴビア県)などのように地元を離れて広く名を知られている製品もあります。

豚肉加工品の多くはそのまま食べますが、ロースト、グリル、フライにしたり、様々な郷土料理の材料として使われたりする種類も多くあります。例えば、有名なファバダ(アストゥリアス州のインゲン豆のシチュー)にはアストゥリアス州のチョリソ、ブラッド・ソーセージ や豚の脂肪は欠かせません。同様に、新鮮なチョリソが入っていないパタタス・ア・ラ・リオハーナは考えられませんし、コシードと呼ばれる様々なシチュー料理には地元の豚肉加工品が欠かせません。多種多様な風味、香り、形状、肉質、色を持つスペイン産豚肉加工品は世界的にもユニークで、西洋の豚肉料理に大きく貢献しています。
スペインの地理、歴史、伝統が組み合わさることにより、数多くの腸詰製品が生産されています。熟成生ハムやイベリコ豚肉加工品と並び、スペインの食文化を特徴づける食材です。

PDO ハモン・デ・テルエル (Jamón de Teruel)

テルエル県(アラゴン州)で生まれ育った白豚の熟成生ハム(後脚)は、最低14か月かけて製造されます。これらの豚は、ランドレース種(標準)又はランドレース・ホワイト種の交配種(あるいはこの2種類の交配)の雌豚と、デュロック種の雄豚の交配種で、地元の穀物を餌に育ちます。

味の特徴

繊細で軽めの塩味と、滑らかで官能的な香りが特徴的です。

その他の特徴

形状は長く、角が丸くなっています。皮はそのままでも一部除去しても構いませんが、V・セラーノ・カットと呼ばれる形に整えます。製品には蹄がついたままで、重さは8~9Kgで、7Kg以下のものはありません。スライスした切り身の色は赤く、筋肉に浸潤した脂肪が霜降りに見られます。脂肪分は多めで、つやがあり、白/黄色で、芳醇な香りがします。

製造/加工工程

豚を屠殺場に輸送する前、12時間以上絶食させることが定められています。

統制委員会によって、ハモン・デ・テルエルに用いられる白豚の種類を次のように定めています。

-雌豚:ランドレース種(標準)、ラージ・ホワイト種、またはそれらの交配種

-雄豚:ランドレース種(標準)又はデュロック種

雄豚は育成期間に入る前に必ず去勢され、雌豚は屠殺時に発情期でないことと定められています。繁殖用の豚は原産地呼称認定熟成生ハムの製造には用いられません。

屠殺時の豚の体重は115~130Kgです。この時点で月齢8か月ですが、そのうち1か月半は母乳、残りの6か月半は乾燥飼料で育てられます。

屠殺直前の15日間は豚に治療や投薬をしません。屠殺前は最低でも12時間の休息を与え、輸送の疲れやストレスを軽減します。屠殺前には電気ショックを与え、豚を気絶させます。

製造に使われるのは、4番目の肋骨周辺の脂肪の厚さが最低4cm、最高7cmの豚に限られます。

肉は後脚を最上部(恥骨結合部)で切り落としますが、重量は最低11.5Kgと定められています。

屠殺後最初の4時間、10℃以下の環境で空気に晒します。そのうち、最初の1時間は相対湿度90%、残りの3時間は相対湿度85%に設定します。

枝肉から脚を切り取り形を整えた後、室温-2~2℃で24~48時間、中心部の温度が2℃になるまで保管されます。屠殺場から加工施設への輸送も冷蔵車両で行い、中心部の温度を0~2℃に保ったまま塩漬けラインに運びます。

最初に塩漬けが行われます。塩を筋肉組織に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促します。この工程にかかる時間はモモ肉の重量によって異なります。(最高14日間)
次にモモ肉をぬるま湯で洗浄し、付着している塩を除去します。

その後の塩漬け後期間に残りの塩は肉に均等に浸潤していき、水分を徐々に除去します。この工程はモモ肉を室温3~6℃、相対湿度80~90%の部屋に吊るして行います。この部屋に保管される時間は肉の重量によって異なりますが、45~90日ほどです。

その後、モモ肉は直ちに自然乾燥室に吊るされます。自然乾燥室は、通気を管理することによって、相対湿度と室温を最適な状態に保ちます。

最後に、モモ肉は貯蔵庫に運ばれ熟成させます。自然の寒冷で乾燥した環境の貯蔵庫で吊したまま保管されます。全製造工程は最低でも14か月かかります。

原産地呼称認定製品は、テルエルの文字と県の紋章からとった星の入った焼き印、規制委員会のロゴのついた番号付きのタグによって識別できます。

地理/気候要因

テルエル県は国土の中央部に広がるメセタ高原の東側、イベリコ山系の南東部に位置します。

クカロン山脈北部山麓の西側、県内北東部のマエストラスゴ地方の北・北東からエブロ川までの地域を指します。

クカロン山脈とシエラ・デ・サン・ジャスト(標高1,513m)は、県の北東部に位置する外部山系・アラゴン山脈に属しています。これらの山脈は、メセタのイベリア境界に位置する内陸山系・カステリャーナ山脈の南東部に向かって連なっており、カラタユド - モンタルバン低地地帯とカラモチャ - テルエル低地地帯を形成します。

気候は地中海の影響を受けた大陸性気候で、荒野が厳しく凍り付く長く寒い冬が特徴的です。乾燥気候で、晴天の日が多いです。年間降水量は約400mm(15.7in)で、雨天は年間70日ほどです。

年間平均気温は12℃(53.6ºF)で、最高気温の記録は37℃(98.6ºF)、最低気温は-12℃(10.39ºF)です。夏と冬の気温差は19℃(66.2ºF)、5月~10月は霜が降りません。

テルエル県の約70%はエブロ盆地に属し、ヒロカ川、ウエルバ川、アグアスビバス川、マルティン川、グアダルーペ川、マタラーニャ川といった支流の水がエブロ川に合流します。残りの土地は半島の3つの大きな盆地(大西洋に注ぐタホ川が流れる盆地、及び地中海にそそぐフカル川~ガブリエル川とトゥリア川~グアダラビアル川が流れる2つの盆地)と、モンレオン~ミハレス水系でメセタ北東部の地中海側に注ぐ2つの小さな川が流れる盆地にまたがります。

スライスした切り身の色は赤く、筋肉に浸潤した脂肪が霜降りに見られます。

PGI ハモン・デ・トレベレス (Jamón de Trevélez)

ランドレース種・ラージ・ホワイト種とデュロック・ジャージー種の交配白豚の熟成生ハム(後脚)は、14~20か月かけて製造されます。

味の特徴

繊細で軽めの塩味と、滑らかで豊かな香りが特徴的な塩蔵製品です。

その他の特徴

形状は丸く、重さは7.3~9Kgで、皮と蹄はついたままです。スライスした切り身の色は赤く、中心部に向かって色が薄くなっており、脂肪の一部が筋肉に浸潤しています。脂肪分は多めで、つやがあり、白/黄色です。塩化ナトリウム含有量は5%以下と定められています。

製造/加工工程

ハモン(後脚)は去勢した雄豚か雌豚の肉であること、半膜様筋付近のpH値が5.5~6.4であること、屠殺から最低24時間経過していることが定められています。

加工に使うためには、未加工肉重量は最低11.3Kgと定められています。さらに、重量が12.3Kg以下の場合は、最低1cmの皮下脂肪と浸潤脂肪があること、重量が12.3~13.5Kgの場合は、最低1.5cmの皮下脂肪と浸潤脂肪があること、重量が13.5Kg以上の場合は、最低2cmの皮下脂肪と浸潤脂肪があることと定められています。
屠殺場から加工場への輸送には、規則に完全に対応した車両が使用されます。それによって、塩蔵加工施設に運ばれるモモ肉は、どの個所も1~4℃に保たれます。

最初に塩漬けが行われます。塩を筋肉組織に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促します。海塩をまぶした肉を重ねて、1Kg当たり1日の期間、冷蔵室で保管します。この工程は季節を問わず、1年を通じて行われます。

その後肉を飲用水で洗浄し、表面に付着している塩を除去します。
次の工程は、自然環境の部屋に肉を吊るし、水分をゆっくり除去します。その結果、塩が筋肉に均等に浸潤します。例外的な場合においては、規則委員会の許可を得て、室温と相対湿度を管理できる部屋を利用することも可能です。この工程は最長30日かかります。

乾燥熟成工程では、肉は相対湿度と室温を最適な状態に保つことができる自然乾燥室に吊るされます。この工程でも引き続きゆっくりと乾燥させ、また同時に発汗作用も促されます。それによって脂肪が筋肉繊維に浸潤していきます。

全製造工程は、プリメーラ(1等級)の熟成生ハムで17か月、セグンダ(2等級)で20か月、テルセーラ(3等級)で23か月かかります。

最終製品は、後脚全体、センターカットなどの切り身、骨抜きやスライスなど、様々な形状で供されます。規則委員会が管理する番号付きのタグによって識別され、等級(プリメーラ、セグンダ、テルセーラ)によって3種類の異なるタグが用いられます。熟成生ハムに貼られるラベルやタグには、地理的表示保護制度の名称がはっきりと記載されています。

地理/気候要因

ラス・アルプハラスにある地域で製造されています。この地域の標高は1,200m(3,936ft)以上あり、グラナダ県のシエラ・ネバダ自然公園の中腹にあります。樫の木や数多くの種類の植物が標高の高い自然公園内にふんだんに生えています。

気候は寒冷で乾燥しています。冬には積雪が多く、夏は多少気温が上がります。

シエラ・ネバダの峰からシエルソ(北風)が吹きおろし、切り立った景観ときれいな空気は塩蔵肉製品の製造に適しています。このユニークな微気候は、ハモン・デ・トレベレスの特徴ともいえる常在微生物の培養を促します。

ハモン(後脚)は去勢した雄豚か雌豚の肉を用います。

PDO ギフエロ(Guijuelo)

ハモン(後脚)とパレタ(前脚)は、広々した環境で育てられた純血イベリコ豚あるいはイベリコ種血統75%以上の交配種を用いて製造されます。ハモンは最低24か月、パレタは12か月かけて製造されます。

味の特徴

肉は繊細で甘い味がし、少し繊維質で口の中で身がほどけます。独特でよい香りがします。飼料に含まれるドングリの影響で脂肪が豊富です。強い香りと白/黄色の色合い、臭みのない味を楽しめます。

その他の特徴

形状は幅広で、蹄を付けたまま定型に整えられます。純血イベリコ豚のハモンは6.5Kg以上、パレタは3.7Kg以上の重さと定められています。イベリコ種血統75%のハモンは7Kg、パレタは4Kg以上の重量と定められています。

外観は真菌フローラの作る白、灰青色、暗色や紫色といった色が特徴的です。肉質はしっかりしており、脂肪は若干多めです。切り口の色合いはピンク~赤紫色で、脂肪の筋と筋肉に浸潤した脂肪も見られ、つやがあります。

製造/加工工程

この原産地呼称認定ハモンとパレタは、国内の規制に従って、純血イベリコ豚か、イベリコ種血統75%以上でデュロック種との交配種のみから製造されます。

屠殺場は加工施設隣接地域に設置され、現行の法律に技術面・衛生面で対応しています。規定に定めてある通り、豚は屠殺前に12時間以上休息さます。四肢を切断し、タグ(等級に応じて黒、赤または緑)で分類したのち、塩蔵加工を行います。塩蔵加工は、5つの工程―塩漬け、洗浄、塩漬け後処理、塩蔵、熟成―に分けられます。

最初に塩漬けが行われます。塩を筋肉組織に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促します。この工程にかかる時間はモモ肉の重量によって異なります。次に肉をぬるま湯で洗浄し、付着している塩を除去します。その後、肉は形を整え精製されます。塩漬け後処理は、ハモン又はパレタに塩が拡がるよう休ませる工程です。次の熟成工程も含め、肉は徐々に水分を失い、保存処理が促されます。この工程は原産地呼称制度に登録された乾燥室で行います。乾燥室は自然の環境が保たれており、外に面した窓がついています。自然環境下で乾燥させることで脂肪がゆっくりしたたり落ちるまでこの部屋に置かれます。さらに肉は小さく硬くなり、この工程は最低6か月かけられます。

熟成工程では肉は貯蔵庫に運ばれ、厳密に等級分けされます。重量、血統、処理法によって公式タグとラベルが付けられます。この工程の最後には、タグの番号と対応した番号のラベルが、製品に付けられます。タグには販売用表示が記載され、EUのマークと原産地呼称認定ギフエロの名前とロゴがはっきりと記載されています。これら全てのチェックが終了すると、製品は出荷され、ギフエロ原産地呼称の熟成生ハムをタグとラベルの証明付きで販売されます。

品質によって以下の3つの等級に分けられます。黒と赤はベジョータ製品、緑はその他飼料で屋外飼育した豚の製品です。スライスした製品イベリコ熟成生ハムを最初で唯一、原産地呼称制度で管理・保証しているため、スライスした状態でもギフエロ原産地呼称の格付けを失いません。スライス工程は厳格な衛生基準に対応した加工施設で行われます。

地理/気候要因

ギフエロ地方はセントラル山系の麓、シエラ・デ・ベハルとフランスの間に位置し、カスティーリャ・デエサと呼ばれる寒冷で、標高が平均1,000mという地方の中心にあります。冬は長く、6か月ほど続き、製品の自然乾燥を促します。過ごしやすい夏の気温は発汗作用を促します。これは筋肉に脂肪を浸潤させて脂肪の筋を入れるために、非常に重要な現象です。湿度と植物性環境も熟成生ハムの塩蔵のために重要な要素です。全製造工程は約2年に及び、熟練した職人によって独特な特産品を作り出しています。

この原産地呼称の生産地には、高原(メセタ)の南西部の4つの自治州に及ぶいくつかの地方が含まれます。生産地が広いことと、異なる自治州が含まれることで、一帯は多様な景観が見られます。セントラル山系、トレド山脈、シエラ・モレナが横切り、平原、丘、谷、山麓、小さな山脈、と変化に富んでいます。トキワガシが生えている一帯の土壌は固く、シリカ物質を含有する、花崗岩石と広範囲に広がる粘板石と砂岩で主に形成されています。浅く、石の多い土壌です。このような土壌では雨で水があふれ、作物に害も出てしまいがちですが、一帯の降水量が少ないため逆に収穫には恵まれています。大陸性気候で、霜の降りない時期を含む長く寒い冬と乾燥して暑く、熱振動の強い夏に分かれます。降雨量という点では、秋・冬に雨は降るものの、県内で最も乾燥しています。このような湿度と温度は、高品質の熟成生ハムの製造には非常に適しています。

肉質はしっかりしており、脂肪は若干多めです。

PDO ハブーゴ(Jabugo)

ハモン(後脚)とパレタ(前脚)といった熟成生ハム、は、広大な土地で飼育した純血イベリコ豚、又はイベリコ種血統75%以上の交配種(イベリコ種とデュロック・ジャージー種の交配)用い、ハモンは18か月以上、パレタは12か月以上かけて製造されます。

味の特徴

複雑で強い風味が長く続くのに加え、甘さの中のわずかな辛味、そしてナッツのような自然の香りなど、様々な味わいを感じられます。薄くスライスすると口の中で脂肪が溶け、最高級クラス(Summum)で特に有名な特徴的な香りをより芳醇にし、しっかりとした歯ごたえと柔らかさを同時に味わうことができます。

その他の特徴

形状は「V型」と呼ばれる細長い形に整えられます。パレタの場合は半月状の形状も認められています。蹄を付けたままの製品は、きれいな形状と、フローラの働きによる白/灰青色の色合いが特徴的です。ハモンは7Kg以上、パレタの場合は4Kg以上と定められています。スライスした肉の色は赤~赤紫色で、筋肉の中に浸潤している脂肪と脂身が見られます。

製造/加工工程

輸送時の疲労やストレスから回復するため、イベリコ豚は屠殺場に屠殺時刻の最低24時間前に届けられます。

最初の工程は塩漬けです。食塩を筋肉組織に浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促し、塩蔵製品特有の色や香りを出していきます。この工程は0~5℃の室温、相対湿度約70~90%で行います。塩漬け時間は肉の重さとイベリコ種の純血性、そして飼料の種類によって異なります。大体の目安としては、1Kg当たり1日となります。

次に、肉を水で洗浄し、表面の塩を除去します。その後、形状を整えます。その後、モモと肩肉は、室温2~17℃、相対湿度65~95%に管理された部屋に吊るして保管されます。この工程の目的は、水分を徐々に除去し、塩分が筋肉に浸潤するのを促すことです。期間は30~90日かかります。
次に、肉は脂肪が筋肉繊維に浸潤するまで、十分時間をかけて自然乾燥室に吊るします。(これを「発汗」工程と呼びます)

ここまでの製造過程に最低約6か月かかります。最後に肉は貯蔵庫に移され、微気候と微生物の力で独特の風味と香りを形成します。熟成期間は重量によって異なります。

全製造工程はハモンで18か月以上、パレタで12か月以上かかります。期間は重量と品質によって異なります。

原産地呼称認定製品は、等級ごとに色分けされたタンパー(認証タグとラベル)によって識別されます。赤は最高級(Summum)製品、緑は特級(Excellens)製品、青は特選(Gran Selección)製品、黄色は上級(Selección)製品です。

地理/気候要因

ウエルバ山脈はウエルバ県の北部、シエラ・モレナ山脈の西の山麓に位置します。標高分布は同心状になっており、最も標高の高い中心の三角地帯はアラセナ山脈として知られます。標高は500~1,045mと様々で、最高地点はカスターニョ山頂です。

この地域は石灰質の土壌と切り立った崖が多くみられ、水はけが非常に良いのが特徴です。編成相は主として粘板石あるいは火成岩です。
一帯の降水量は比較的多く、平均700mm(27.6in)を超えます。

平均気温はアラセナで14.8℃、ガルナチャで18.4℃です。一般的に気温が下がるにつれ降雨量が増え、逆に気温が上がるにつれ降雨量は減少します。

グアディアナ盆地、グアダルキビル川、オディエル川を含む山岳地方は、水路や季節流(降水量次第)が豊富で、一帯の川や水源を潤します。

原産地呼称認定製品は、等級ごとに色分けされたタンパー(認証タグとラベル)によって識別されます。赤は最高級(Summum)製品、緑は特級(Excellens)製品、青は特選(Gran Selección)製品、黄色は上級(Selección)製品です。

PDOロス・ペドロチェス (Los Pedroches)

ハモン(後脚)とパレタ(前脚)といった熟成生ハム、は、純血イベリコ豚又は交配種(イベリコ種血統75%以上、デュロック種かデュロック・ジャージー種血統25%以下)の豚を用います。ラベルにはイベリコ・プーロ(純血イベリコ豚)、イベリコ豚の別が記載されています。

味の特徴

肉の塩気は柔らかく、甘みと特徴的な良い香りを味わえます。肉は繊維質ではありません。ピンク~赤紫色の特徴的な色合いで、脂肪が霜降に入っています。脂肪はつやがあり、黄色がかったピンク/白色で、芳醇なうまみがあります。脂肪含有量は、ドングリが豚の餌に占めていた割合で決まります。

その他の特徴

形状はセラーノの「V型」と呼ばれる、細長い形に整えられます。蹄は付けたままで、製造期間はパレタは最低12か月、ハモンは最低18か月です。

製造/加工工程

豚の育成期間中、ドングリが実る山に連れていき、屠殺前の最終段階として脂肪を蓄えさせます。ここで重要になることが2点あります。まず脂肪含有量です。ドングリを食べる量が多いほど、熟成生ハムの脂肪の融点が下がります。脂肪は熟成生ハムにとって大切な香りとジューシーな肉質を作ります。次に重要なのがドングリを探して豚が運動することで、それによって筋肉が締まり、脂肪の分布が良くなります。

血統、月齢、飼育環境の確認後、豚は屠殺されます。解体の際、まず四肢を切断し、自然環境での塩蔵加工を開始させます。これによってこの認証製品特有の色、風味、香りが形成されます。製造工程は以下の通りです。

- 塩漬け:この工程の主目的は生のモモ肉に食塩を浸潤させることにより、肉の脱水・保存を促すことです。この工程は室温0~5℃、相対湿度80%以上で行います。工程期間は肉の重量によって異なりますが、大体1Kgあたり0.7~1.2日です。

- 洗浄:肉を水で洗浄し、表面の塩を除去し、脱水します。
- 寝かし:この工程では塩をなじませ、筋肉組織全体に浸潤させます。ゆっくりと水分が抜けることで肉が締まります。この工程は室温0~6℃、相対湿度75~85%で行います。工程期間は肉の重量によって異なりますが、通常30~90日です。
- 乾燥熟成・成熟期:この工程でも徐々に乾燥させ、肉の発汗作用を促します。それによって脂肪が筋肉繊維に広がります。ひとたび浸潤すると芳香を醸し出します。この工程は自然乾燥室で行い、約6か月かかります。
- 貯蔵庫での熟成:この工程は常に自然の貯蔵庫で行います。モモ肉は最低18か月、肩肉は最低12か月熟成させます。この工程では、ロス・ペドロチェスの微気候と微生物の力によって、熟成生ハム特有の肉質、香り、風味、外見的特徴を形成します。

地理/気候要因

コルドバ県の北部に広がる30万ヘクタールのトキワガシの生える牧草地には、数世紀にわたって発達した放牧と農場のシステムがあります。この地域では昔から畜産が盛んで、トキワガシの林のドングリで育てるイベリコ豚の飼育と販売もその一つです。ドングリは、平均して1ヘクタール当たり1,000Kg実ります。

この認証ハモンとパレタの特別な風味と香りは、屋外や山の牧草地(モンタネーラ)を利用する独特で他に類を見ない飼育法によって形成されます。つまり、ドングリ・草・牧草・下草などが季節によって育つ山の天然の牧草地帯を育成期間の最終段階で利用するのです。これは認証製品の脂肪含有量を増やすために欠かせない要因で、他の生産システムが決してまねできないものです。

コルドバ県北部の牧草地には、スペイン全土に生えるトキワガシの多くが生育していて、この原産地呼称の地域の豚が食べるドングリに多大な影響を与えています。また、この一帯はスペインでも唯一ポルトガル樫のドングリが実る地域でもあります。ポルトガル樫は一帯で生息する3種類のコナラ属植物のうちの一つです。ポルトガル樫は、他のコナラ属植物が実る約20日前に実り、そのタイミングでイベリコ豚は山に移動します。そして、これが製品の際立った特長を形成するのに非常に重要なのです。

この地域は海抜700mに位置し、乾燥して寒い大陸性気候です。この気候条件は製造の際に優位に働きます。

ハモンは最低18か月、パレタは最低12か月熟成させます。

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