チーズの産地

PDO アフエガル・ピトゥ(Afuega'l Pitu)

ホルスタイン種とアストゥリアス地方種の殺菌した牛乳のみで作る、柔らかく脂肪分の高いチーズです。60日間熟成させる場合、殺菌は必ずしも必要ではありません。

風味の特徴

程よい刺激があって、塩味は軽め、あるいは味が薄いを感じるほどの風味が特徴です。食感はクリーミーですが、また、かなり乾燥もしています。「アラモの赤」と呼ばれるチーズは、力強いピリッとしたスパイシーな味わいで、飲み込む時に、ねっとりとした感じを取り戻して、喉につっかえるような感じを与えます(「ピトゥ」とはアストゥリアスの方言で咽頭を表すくだけた言い方で、「喉につまる」を表すチーズの名前です)。香りの特徴はマイルドで、熟成が進むにつれて印象的な香りになります。凝固の初期には、柔らかく伸びやすい状態で、熟成が進むにつれ徐々に硬くなります。このチーズの主な特徴の一つとしては砕けやすいこと。そのため、きれいにカットするのは困難です。

その他の特徴

チーズの形状は、型を使用した場合は先を切り取った円錐台、またチーズを固めるのに布で包み、上部分を結ぶ方法をとった場合は、茶巾絞りのような布目がついた、カボチャのような形になります。高さはどちらの形も5cm~12cm、底辺の直径は 8cm~14cm、重さは200g~600gです。

外皮は自然のままの状態なので、熟成の度合によって外皮の硬さが変わります、また、ピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)が加えられているかどうかによっても外皮の様子は異なります。販売はフレッシュな状態でも、熟成させた状態でも可能で、色は熟成状態によって、白からクリーム色、さらに、ピメントンが混ぜ込まれているものは、オレンジがかった赤色になります。

成分は以下の通り:
- 固形分中乳脂肪: 最低45%
- 固形分中たんぱく質:最低35%
- 固形分量:最低30パーセント
- pH:4.1~5

製造および加工方法

製造地域内で認定を受けた酪農家の牛から採った乳を72℃で15秒~30秒間低温殺菌します。ただし、60日間熟成するチーズの場合は、この殺菌は必須条件ではありません。

低温殺菌タンクまたは冷蔵タンクから牛乳を直接、凝固用バットに入れ、スターター(種菌)を加えます。その際に、ごく少量の液体レンネットを加えることもあります。温度を22℃~32℃に保ち、15時間~20時間かけて凝固させます。

カード(タンパク質が固まったもの)を食品用プラスチック製の穴のあいた容器にすくい入れ、12時間かけて水気を切ります。この過程では圧力をかけずに、カードの自重でホエーが滲みだすのを待つため、この工程はゆっくりと進みます。

この工程が終わると、容器の中のカードは、大部分のホエーが抜け、分量も非常に小さくなります。その後、さらに小さな型に移し替えて、塩(塩化ナトリウム)が加えられます。12時間後、型から外し、穴のあいたトレーに並べて、仕上がりまで水分が滲みだすのを待ちます。その後、販売可能な状態になるまで熟成室で保存します。

チーズ生地に加工を加える場合、まず初めにカードを型に入れて水気を切ります。約24時間経過したところで、練りの作業に移り、この段階で塩を加えます。この時、あわせてピメントンも加えるとRoxuと言われる種類になります。その後、型に移して成型した種類をAtroncau Roux、布巾で包んで成型する種類をTrapu Rouxと区別しています。この状態からさらに24時間置きます。

トレーに並べたチーズを熟成室に移し、目標の熟成加減になるまで、定期的に向きをかえる工程を5日から60日続けて世話をします。販売は認定を受けているチーズであることを示すラベルを貼って行われています。販売時までの保存には、4℃~10℃の低温が求められます。

地理、起伏、気候

この地域は海洋性気候に属します。年間を通して雨が多く、穏やな日差しで、曇りの日も多くあります。年間平均降水量は海抜高度と密接に関係しており、沿岸地域の一部では1平方メートル当り900リットル、山間地では1平方メートル当り2000リットルと大きな差があります。

地形の成り立ちは、約2億5000万年前の古生代の終わりまでさかのぼり、約2500万~5000万年前の第三紀における造山運動によって形成されました。

総体的に、この地域は海岸線と分水嶺を結ぶ、狭い帯状の土地に沿って急な勾配が続いており、ほぼ海面の高さの地域から、最も高い場所では海抜 1788mまでの標高差があり、両者の間には、まったく異なる2つのの気象条件がうまれます。この地域の半分以上の土地は海抜400m以上に位置し、海抜800mを超える地域も全体の四分の一以上になります。このような標高の高さの違いが、この地域の気候、生物分類、社会生活を決定づける要因として、放牧地や家畜の飼育に影響しています。

土は有機含有量が高く、わずかに酸性 で(pH 6.9~6.5)、 窒素、リン、マグネシウム、カリウムがかなりバランス良く含まれています。この土壌条件が、この地域の牧草地を他とは違うものにしています。

この牧草地では、イネ科、マメ科、シソ科など、幅広い種類の有用な植物が育ち、牛には最適な飼料を提供しています。

程よい刺激に軽い塩味と口当たりの良さが特徴です。食感はクリーミーでかなり辛味があります。赤いチーズは力強いピリッとした辛味があり、飲み込むとねっとりして渋みが感じられます(「ピトゥ」とはアストゥリアスの方言で咽頭を表す日常的な言葉)。

PDO アルスア・ウジョア(Arzúa-Ulloa)

ルビア・ガレガ種、ホルスタイン種、パルダ・アルピナ種、さらに交配種の牛から絞った生乳または低温殺菌牛乳から作るチーズで、最短で6日間熟成させます。

風味の特徴

アルスア・ウジョア:バターやヨーグルトを思い起こさせる牛乳の香りに、バニラ、クリーム、クルミの風味を感じさせる、マイルドな味わいのチーズです。味は牛乳の風味がベースとなり、酸味は中程度から弱めで、塩分は控えめです。なめらかな食感で、水分量は低から中程度、それほど硬さがなく、ほどよい弾力性があります。、適度な弾力がありながら、口の中でとろりと溶けていきます。

アルスア・ウジョア・ファームハウスチーズ:食感、風味ともに、上記のアルスア・ウジョアと同じ特徴を持っています。

アルスア・ウジョア熟成チーズ:とても強い牛乳の香りに加え、若干鼻をつくようなバターの強い匂いがあります。鼻にツンとくる香りです。味は塩味がしっかりとして、酸味は少なく、中程度から弱い苦みを感じます。バターのような風味が中心的ですが、かすかにバニラやナッツの風味も持ち、生地の中央部分と外皮に近い側では味に違いがあります。キリッとした味わいで、わずかにバターとバニラの風味を持った苦みのある後味です。

その他の特徴

アルスア・ウジョア:このチーズの熟成期間は最低6日間です。形状は縁の部分に丸みを持った凸レンズ形や円筒状の形で、直径は100mm~260mm、高さは50mm~120mmです。高さが半径を上回ることはありません。重さは通常0.5kg~3.5kg。外皮は薄くて弾力があり 、中間色から濃い黄色で、艶があり、きれいで、滑らかな外見です。無色透明の抗菌剤で覆われている場合があります。中の生地の部分はアイボリーホワイトから薄い黄色までの同じ系統の色で、艶があり、ひびは入っていません。生地全体に四角や丸の小さい「チーズアイ」と呼ばれる穴(気孔)が数箇所見られることもあります。

アルスア・ウジョア・ファームハウスチーズ:チーズを製造する酪農家の牛から採れる乳のみで作ります。上記のアルスア・ウジョアと外見、中身の特徴は同じです。

アルスア・ウジョア熟成チーズ:最低熟成期間は6か月。チーズの形状は凸レンズや円筒状で、上部がくぼんでいるものもあります。直径は120mm~200mm、高さは30mm~100mm。重さは0.5kg~2kgの幅があります。濃い黄色で艶があり、どっしりとした外形です。外皮はそれほど厚くなく、透明で無色の抗菌剤で覆われている場合があります。生地は外皮に近い部分が濃い黄色で中央部分が薄い黄色、しっかり詰まっており「チーズアイ」はほとんどありません。生地は硬めなのでカットするのが難しく、水分の少ないカット面の端の部分からひびがはいってしまいます。均質にしっかりと詰まった感じの生地です。高脂肪で水分量は少なめです。

製造および加工方法

原産地呼称保護の認定を受けた健全な酪農家が育てるルビア・ガレガ種、パルダ・アルピナ種、ホルスタイン種、あるいはその交配種から採れる新鮮な乳のみを使用して、これら3種類のチーズは作られます。

製造の方法は次のとおりです。

凝固: 動物性レンネットや品質マニュアルで使用の認められている凝固酵素を使い、30℃~35℃の温度で、牛乳やレンネットの状態を見ながら30分~75分かけて凝固させます。

カードの切断と洗浄:カードの粒がとうもろこしの粒の大きさほどになるようカットします(直径5mm~10mm)。そして酸味を抑えるため、新鮮な飲料水で洗います。

成型:完成後のチーズが決められたサイズや重量になるのに適した大きさの円筒形の型の中にカードを入れます。

圧縮:求められる硬さやチーズのサイズによって圧縮する時間が変わります。

加塩:凝固させているカードの段階で塩を加えることもありますし、また、チーズを塩水に漬けこんで行います。食塩水につける場合は、不必要な微生物の発生を起こさないよう、冷蔵状態で行い、24時間以上食塩水に漬けることは避けます。

熟成:湿度75%~90%、室温15℃以下の場所で熟成させます。熟成期間は圧縮が終わった時点、あるいは食塩水に漬けた場合は漬け終りから数えて、最低6日間です。熟成チーズの場合は、この熟成期間は最低で6か月間になります。熟成させる期間中、必要に応じて向きを変え、拭き取り作業を行って、このチーズ固有の特徴を引き出します。

製品の品質とトレーサビリティ(飼育から加工・製造・流通・消費の過程を明確にすること)を保護するために、原産地呼称保護を受けたチーズは、通常、全形のままで、認可を受けたパッケージに入れて販売しなければなりませんが、販売時のカット売りを含め、カットされたピース販売認められています。この場合、製品の仕入先、産地、品質を保証し、完璧な状態で消費者のもとに届くよう、いかなる間違いも起こさないような、適宜な管理方法を定めることが求められます。

地理、起伏、気候

このチーズの産地の地形は、全体に緩やかな起伏が続いており、そこに牧草が豊かに茂る草原や牧草地のある風景です。ガリシアの中心部は海抜300m以上の山がちの地形で、、平均気温は12℃をわずかに下回ります。年間降水量は1200mm~1700mmで、先に述べた景観の特徴と相まって、降水量の多さがこの地域を、家畜にとって必要な牧草やさまざまな種類の作物が一年中育つ特別な環境にしています。これらの牧草や作物すべてにとって、大量の雨は欠かせないのです。

製品の品質とトレーサビリティを確保するために、原産地呼称保護を受けたチーズは、全面的かつ認可されたパッケージで販売されなければなりません。

ブルゴスチーズ(Burgos cheese)

このフレッシュチーズは、従来、羊乳を使って作られていましたが、今日では牛乳あるいは羊乳と牛乳との混乳て作ることが多くなっています。生乳と低温殺菌乳のどちらも使います(低温殺菌乳がより一般的)。酵素を加えて凝固させた、柔らかな食感のチーズです。

風味の特徴

硬さの少ないクリームのような口あたり、マイルドなミルク風味です。熟成させないフレッシュなチーズなので熟成の過程で生じる香りはありませんが、加塩の工程で生じる香りがわずかに感じられます。

その他の特徴

通常、チーズの形は円筒形です。元々の形状には上部に小さい三角形が並んだ円筒形の形をしていることもあり、この三角形の跡は型に入れてホエーを排水する間に、型にある孔の跡がつくことでできるものです。重さは1kg~3kgで、2kg程度のものが一般的です。

製造および加工方法

今日では、低温殺菌された牛乳で作るのが最も一般的で、それにカルシウム塩と動物性レンネットを加え、28℃~30℃に維持します。30分以上かけて、しっかりとした、それでいて硬くないカードができます。

カードを、優しく扱いながら大きめにカットし、休ませて、ある程度の収縮が起こってから、ホエーを排出させます。バットから型に移し替える前に塩を加えることもあり、型の中で数時間かけてホエーを分離させます。ホエーが排出され、チーズが固まれば、食べられます。

地理、起伏、気候

ブルゴスは高原に広がる地域で、スペインで最も高い場所にある県の一つとして知られています。さらに、東部と北部、西部と南部のあいだには明確な違いが見られます。標高が高いことから冬の気候は厳しく、寒くて雨の少ない冬が長く続きます。

ブルゴス県の境界線は、北はカンタブリア山脈に、東と南東はイベリカ山系に接しています。

ブルゴスの気候は大陸性気候と考えられます。年間の平均気温は約11℃、記録された最高気温の平均は 36.2℃、最低気温はマイナス7.5 ℃。冬は気温が低く、長くて厳しい気候で、夏は乾燥した天気が続きます。雨は通常、春に集中的に降り、年間降水量の平均は400mm~600mmです。

重さは1kg~3kgで、2kg程度のものが一般的です。

PDO カブラレス(Cabrales)

主に牛の生乳から、あるいは牛、羊、山羊の乳を2、3種類混合した混乳で作る青かびチーズです。熟成期間は2か月以上で、天然の洞窟の中で熟成させます。

風味の特徴

バランスの取れた風味で、使用する乳の種類によってその味の強さに違いがあります。塩味、苦みは強すぎず、渋みも強くありません。特に羊乳のみ、または山羊乳のみ、あるいはその混合乳を使用した場合、ほどほどのピリッとした刺激味があります。特徴のある後味が長く残ります。使用する乳の種類によって香りの広がりや強さも変わりますが、山羊乳から作られたもの香りは最も強く感じられます。乳酸菌が大部分を占めますが、このチーズに不可欠な微生物は青かび(ペニシリウム)であるため、青かびの脂肪分解作用により、非常に複雑な味と香りが生まれます。すっきりとした心地よい香りで、ピリッとした刺激的ながらも、ヘーゼルナッツやアーモンドなどを感じさせる木の実の風味があります。生地は均一できめ細かいチーズで、ほとんど目に見えない粒状感があります。

その他の特徴

チーズの形状は上部と底が平らなドラム型で、わずかにくぼみのあるものもあります。側面は真っ直ぐか、多少の丸みのあるふくらみを持つ場合もあります。直径と重さはさまざまで、高さは7cm~15cmです。 外皮は自然のままで、柔らかく、薄くてクリーミーで、オレンジがかった茶色あるいは灰色がかった色をしています。微生物が成長することで表れる、赤や黄色の斑点が見えることもあります。触ったときに、少しべたつく感じがありますが、これは熟成してゆくあいだに、チーズの外側で微生物が育ってゆくことで生じるものです。中の生地はややソフトなものからソフトなものまでさまざまあり、この違いは熟成期間の長さによります。熟成すると、生地はしっかり詰まり、チーズアイはなく、べたつき感は中程度から弱くなって、クリーミーさが生まれます。生地の色はアイボリーホワイトで、使用された乳の種類によって色には幅がありますが、ひとつの生地では全体が同じ色をしています。青かびの働きにより緑がかった青色の斑点と縞模様が生じ、この色は熟成が進むにつれてだんだんと色が濃くなってきますが、黒といえるほど濃い色になることはありません。青かびはチーズの生地全体に平均に広がります。固形分量中の脂肪分は45%以下にならないよう、また水分量が最低でも30%を保つよう維持します。

製造および加工方法

まだ子牛などの胃から抽出される、天然の凝乳酵素や、粉末状のレンネットを乳に加え凝固させます。少量の凝固剤を使用するため、凝固の進みはゆっくりです。乳は少なくとも一時間、22℃~23℃ の温度に保ち、乳酸を混ぜて凝固させます。通常、この工程に2、3時間を要します。

できあがったカードをていねいに分けて、直径1cm~2cmの均等の大きさに丸めます。

ホエーを排出した後のカードを円筒形の型に移して、2日~4日間置きます。その間、圧縮はせずに、型を数回ひっくり返す作業を行います。その後、チーズの上部に塩をふりかける方法で加塩して、12時間置きます。再度ひっくり返して塩をふりかけます。さらに12時間経ってから、型から取り出します。

天然の洞窟での熟成作業に入る前に、約2週間、風通しのよい場所に置かれます。熟成用の洞窟は、個人やグループに割り当てられており、だいたい、洞窟ひとつ、あるいは洞窟の一区画を使用する権利は代々受け継がれているものです。

洞窟内の相対湿度は90%、温度は8℃~12℃です。この環境が、青かびの自然発生を促進し、そのため、他の多くのブルーチーズのように青かびの胞子を加える必要はなく、自然に緑がかった青の斑点や縞模様がチーズに生み出されてゆきます。チーズは2か月~5か月間、洞窟内の木製棚に置かれ、熟成が適切に進むように定期的に向きを変え、拭く作業を行い世話をします。

かつての規則ではチーズをシカモアカエデ(セイヨウカジカエデ)の葉で包むことが認められていましたが、現在ではこの習慣は廃止され、食品基準に合格した紙にカエデの緑色の葉を印刷した、独自の包装用紙が使われています。包装された完成品には、製造者を記したラベル、2本の緑色のストライプの間に赤色の幅広のストライプが通っている帯に原産地呼称委員会のロゴマークをつけたもの、シリアルナンバーがついています。

地理、起伏、気候

この生産地域は逆三角形の形をしています。南側には、ピコス・デ・エウロパ山塊の中央部あたりにそびえる標高2500m を超えるナランホ・デ・ブルネス(別名ピコ・ウリエジェ)があります。中央部分はラス・アレーナス、ポオ、カレニャの低地部分があり、そこの標高は 200m未満、北側にはシエラ・デ・クエラ山脈が位置し、最高標高に達するピコ・トゥルビナ峰は1315mの高さです。

この地域の基盤岩はほとんどが石炭紀のもので、石灰岩と粘土岩がちりばめられています。主な2つの土壌の種類は珪質(大部分が粘土岩、珪岩、礫岩)と、石灰質(固結岩屑土、腐植炭酸塩土)です。湿度の高い気候で、年間降水量は一平方メートル当り1400リットルを上回り、ピコス・デ・エウロパの高地では2000リットルにも達します。降水量が最も少ないのはシエラ・デ・クエラ山脈の山腹ですが、年間を通して十分な水分量があります。

気温は標高により大きく異なります。高山地帯は年間平均気温が0ºCを超えることはなく、中腹の地域では、気温はこれよりずっと暖かく、川の流れる谷では平均気温が6℃~8℃になります。標高の高い高地では、気温変動は少なく、このチーズの生産地のほとんどがこの高山地域です。この地域にはカターニョや ドゥーデに流れるこむアクレス川をはじめとする、その他の小さな川が入り組んで流れ、縦横に交わりながら谷を作り、標高が異なる様々な山腹に牧草地が広がっています。

搾乳用の家畜は、山の牧草を飼料にしています。カブラレス地域で育つ牧草やその他の草の種類の顕著な特徴は、生命力が旺盛で、栄養価が高いことです。石灰質の土地、厳しい気候などの環境に完全に適応し、かつ放牧地の植物として理想的な種類の草が育ちます。

牧草は2種類に分かれます。標高の低い場所は気候が穏やかで、そこに広がる牧草地には飼料や干し草に適した良質の草が青々と生い茂ります。標高の高い山間地では気候が厳しく、生育量は少なくなりますが、質の良い草が育ちます。この場所で育つ牧草は大部分が飼料としてそのまま使われ、干し草作りに用いられることはごく稀です。標高の低い地域は乳汁生産に、高い地域はチーズ製造に、それぞれの経済基盤を置いています。

カブラレスチーズは塩味、苦みは強すぎず、渋みも強くありません。特に羊乳のみ、または山羊乳のみ、あるいは二つを混合した場合、ほどよい辛味があり、はっきりとした後味が残ります。

PDO セブレイロ(Cebreiro)

地元で飼育されたルビア・ガレガ種、アルパイン・ブラウン種、ホルスタイン種の牛乳を使ったチーズで、熟成させないタイプ、熟成させたタイプがあります。

風味の特徴

熟成させないチーズの場合、外皮にあたる部分がほとんどなく、中の生地は白い粒状で、触った感触は粘土のように柔らかく、クリーミーで口の中でとろけます。味と香りの刺激は弱めであることは、その他の牛乳から作ったチーズと同様です。熟成させたチーズの場合には、薄い外皮があり、生地は黄色から明るい黄色をしており、時には硬い食感のものもありますが、通常はバターよりもしっかりした程度の硬さです。わずかな刺激味と牛乳の風味に加え、特徴的な香りを持ちます。

その他の特徴

このチーズの形は、ずんぐりとしたマッシュルームやコック帽の形に似ており、二つの部分からできています。土台となる円筒形の部分の直径はさまざまですが、高さは12cmを超えることはありません。その上の部分は土台部分の円筒形から、1cm~2cm張り出し、高さは3cm以内の膨らんだ笠のような形をしています。重さは 0.3 kg~2 kgです。

成分は以下の通り:
- 水分:熟成度合いによるが50%以下
- 脂肪:固形分中、最低45%~最高60%
- タンパク質:30%以上

製造および加工方法

製造工程は以下の通りです。

凝固:26℃~30℃に温めた牛乳に、動物性レンネットまたは品質マニュアルで定められたその他のスターターを加えます。凝固時間が60分以下にならないように、使用する用量は計算されています。

カット:一辺が10mm~20mmの立方体になるように、カードをカットします。

排水:最初にバットの中である程度の水分を抜き、その後、布製の袋に入れて5時間~10時間吊るして排水します。

練りと加塩:排水後、全体的に粘土のような感触になるまでカードを練り、発酵させて、塩化ナトリウムを加えます。

成型と圧縮:練った生地を型に入れ、かける圧力の加減やチーズのサイズに合わせて、適宜な時間圧縮します。型から外し、2℃~6℃の低温で最低1時間置くことで冷や固めます。この過程を経ると、フレッシュタイプのチーズとして販売できます。

熟成させるチーズの場合、相対湿度70%~80%、10℃~15℃の保存室に移して、最低 45日間かけて熟成させます。

地理、起伏、気候

このチーズの生産地は山が多い、海洋性気候です。海に近いこと、また著しい大陸性の特徴が大きく影響して、酪農には非常に厳しい環境になっています。この地域の大部分は標高1000mを超えており、気温が非常に低く、ガリシア地方としては珍しく、霜の降りない期間は5か月もありません。

この厳しい環境条件(気候、土壌、起伏)が、地域経済に適した産業として畜産業を、耕作農業よりも適した経済活動として選ばせています。畜産業に利する要因として、質の良い自然の牧草地(広さは限られるとしても)、山の傾斜を利用できること、家畜がこの厳しい気候に適応していることが挙げられます。

ずんぐりとしたマッシュルームやシェフの帽子のような形をしたチーズです。

PDO ガモネド(Gamonedo)

牛乳(ホルスタイン種、スペイン・アストゥリアスの地方品種、アルパイン・ブラウン種、これらを交配した種)、羊乳(ラクサ種、カランサナ種、東フリージア種、これらを交配した種)、山羊乳(アルパイン・ピレネー、ピコス・デ・エウロパ、ムルシアノ・グラナディナ種、ザーネン種、これらを交配した種)、あるいはこの3種類のうちの2種類を混ぜた乳を使って作る、天然の外皮を持つ高脂肪の熟成チーズです。チーズは軽く燻製され、端の近くに緑がかった青色の青かびの胞子がうっすら浮かぶことがあります。

風味の特徴

マイルドなスモーク風味がメインで、わずかにピリッとした味が伴います。口の中ではバター風味の味を感じさせ、ヘーゼルナッツのような後味が長く残ります。

香りは少しスモーキーですが、すっきりとしながらも、深く浸透するような香りが広がり、熟成させたチーズでは、その香りはより強く感じられます。生地の色は白、あるいは黄色みを帯びた白で、端に近い部分に緑がかった青色の青かびがうっすらと見られます。外側は独特な色をしています。これはスモークすることにより、チーズが赤みを帯びた茶色になり、その後、洞窟や貯蔵室で型に入れたまま熟成される間に、カビの働きにより赤や緑、青の色合いを帯びてくるからです。

生地の見た目は、目が詰まっておらずに孔ができています。生地はハードまたはセミ・ハードタイプです。硬さはありますが、切る際にはポロポロと砕けやすいです。チーズアイは小さく、不規則に散らばっています。

その他の特徴

形状は上下が平らな円筒状で、高さは6cm~15cm、直径10cm~30 cm、重さ0.5kg ~7kg。天然の外皮は薄く、スモークされることで、赤みがかった茶色になり、赤、緑、青の色合いが出てきます。

成分は以下の通り:
- 脂肪:固形分中、最低45%
- タンパク質:固形分中、最低25 %
- 水分:固形分中、30%
- pH値: 5.5~6.5.

製造および加工方法

認定農場で搾乳した乳を使います。原乳はまず冷却され、加工場へ運びこまれます。そこで最低1時間で凝固過程が終了するように、必要な量のレンネットあるいはスターターが正確に加えられ、乳酸菌を使って凝固させます。この段階では原乳の温度を24℃~30℃に保ちます。

次にカードを5mm~15mmの大きさに丁寧にカットします。ホエーを1時間~1時間半かけて排出します。その工程を経て、カードを円筒形の型に詰め、軽く圧力をかけて残っているホエーを抜きます。チーズの上下部分に24時間後と48時間後にそれぞれ塩化ナトリウムを擦り込みます。

その後、型から外したチーズを15日~30日間スモークします。熟成は石灰質の洞窟、貯蔵庫、熟成室の中で、温度8℃~12℃、湿度85%~95%に保った状態で行われます。この工程の間に、熟成が適切に進むよう、必要に応じて向きを換え、布で拭き取る作業を行いながら、凝固の終了から少なくとも2か月熟成工程は続きます。この作業によって、このチーズ独特の個性が生まれます。

地理、起伏、気候

ピコス・デ・エウロパの西部、コリオン山塊と呼ばれる地域が、主に原乳やチーズの生産地域になっています。この地域では、山の峰々から低地に続く、急な斜面が存在します。谷では牧草地の起伏は緩やかになり、そこにある小さな村々の近くに農家の集落ができています。

冬でも十分に飼料となる草が生えるので、家畜を常時、屋内飼育する必要はありません。標高の高い場所では、斜面は急で、カルスト地形の典型的な特徴である、ドリーネあるいはシンクホールと呼ばれる陥没孔が存在し、洞窟、石灰岩の地面、大きな割れ目などが見られます。谷には非常に栄養価の高い牧草地が広がり、牛は春から、秋に雪が降り始める頃まで牧草地で放牧されています。

チーズの製造は、季節に応じて家畜を谷から山の頂上まで移動させる伝統的な移牧の習慣から始まったものです。春や夏の季節には、搾乳後に余った乳を無駄にしないために、チーズやバターが作られるようになりました。乳は羊飼いたちが使う小さな山小屋の中で固められ、その後、周囲に多く存在する石灰岩の洞窟で保存されるうちに熟成してゆきました。こうして羊飼いたちにとって、年間を通じての生活の糧となっていたのです。

マイルドなスモーク風味がメインで、わずかな辛味が伴います。食べるとバターのような味を感じ、ヘーゼルナッツの後味が口の中に残ります。

ガローチャ・チーズ(Garrotxa cheese)

ガローチャ地域(カタルーニャ自治州ジローナ県)とカタルーニャ地方全域で昔から作られてきた、山羊乳のみを使ったチーズです。柔らかく、しっかりと締まった生地の、熟成あるいはフレッシュなチーズです。

風味の特徴

このチーズを、ホール(全形)状態で外側から見ると、ひび割れや孔が見えることはありません。形は標準的な円筒形で、縁の部分は丸みを持っています。このチーズの一番の特徴は、外皮全体がかびに覆われているところです。色は全体にわたりほぼ同じ色をしていますが、その色合いは、灰色がかった青色から灰色まで幅があります。斑点が出たり、前述の色以外の色調をしたりすることはほぼありません。チーズの上部は平ら、あるいはわずかな膨らみがあります。

その他の特徴

生地はアイボリー調のすっきりとした白色です。生地はしっかりと締まっており、深い香りと、他に類を見ない風味があります。

製造および加工方法

搾乳後、チーズを作る前に、乳を冷却タンクで最高48時間、4℃~6℃で保存します。

低温殺菌:乳は低温殺菌後、37º℃まで急冷します。

発酵:乳を熟成させます。乳をカード作りのタンクに入れ、37℃に保ち、1リットルあたり0.5ml~1mlの塩化カルシウムを加えて発酵させます。 乳は30分~60分ほど、そのままの状態で休ませます。

凝固:乳を30℃~32℃(86ºF ~89ºF)まで加熱し、動物性レンネットを加えます。これ以外のレンネットは使用できません。

カードをトウモロコシの粒の大きさにカットします。10 分~30分休ませた後、15分~20分間攪拌します。この間にホエーは徐々に排出されます。

成型と圧縮:室温20℃に保たれた製造室で、手作業でカードを型に入れます。チーズをわずかに圧縮します。

加塩:濃度20%の塩水に漬けこむことでチーズに加塩します。0.5kgと1kgの大きさのチーズは、望ましい温度である10℃~12℃で、それぞれ2時間と4時間漬け込みます。チーズを漬け込む塩水は、製造者が自己管理する手順書に従い、製造するチーズの重さに合わせて定期的に取り換えられます。手作業で塩を擦り込む場合もありますが、この場合の加塩はチーズの重さの2%までとされており、また、この方法が一般的ということはありません。

乾燥:ガローチャ・チーズは、温度16℃~18℃、相対湿度75%~80%で約24時間かけて、外皮が形成されるまで乾燥させます。

熟成と仕上げ:熟成室の室温は10℃~12℃、相対湿度85%~90%に調整します。塩水に漬けた後、チーズは熟成室に運びこまれ、棚に並べられますが、この時、棚ごとのロットをつけて、熟成中に他のチーズと区別できるようにします。小・中サイズのどちらのチーズも、約21日間、熟成室内で熟成させます。熟成を始めてからの最初の数日間は、向きを換える作業を行います。この作業は、チーズ全体が均一に灰色の外皮で覆われて、全体に灰がまぶされたような外観になるまで繰り返されます。

保存: 保存は温度4℃~8℃、相対湿度70%~80%で、製造日から最長4か月間保存します。

地理、起伏、気候

ガローチャ地域はカタルーニャ自治州の北東、ジローナ県のアルト・アンプルダーとリポイの間に位置します。アルト・ガローチャとバハ・ガローチャの2つの地域に分かれます。

アルト・ガローチャの地形は、岩がごろごろした崖と高い岩山に挟まれた深く狭い谷で、対照的にバハ・ガローチャでは、過去の火山活動の影響で、平らな谷が広がります。ガローチャ地域の中心の都市はオロトです。

この地域は、地中海性気候-山地気候の間に位置し、年間を通して降水量が多い場所ですが、冬には乾燥した天気が続きます。このふんだんな雨により、夏は涼しく、冬はピリネオ山脈の影響をうけて、気温が下がります。

ガローチャ地域はカタルーニャ州北東、ジローナ県のアルト・アンプルダーとリポイの間に位置します。

イベリコチーズ(Ibérico cheese)

セミ・ハードまたはハードタイプの非加熱圧縮チーズです。さまざまなサイズの円筒形で、高さは7cm~12cm、重さもさまざまですが4kgを超えることはありません。牛乳(最大50%)、山羊乳(最小15%)、羊乳(最小15%)の混乳で作られます。

風味の特徴

生地はしっかりと締まっており、黄色がかった白色です。

その他の特徴

外皮はやや硬めから硬めで、見た目は乾いています。色は黄色みを帯びた白色から、緑がかった黒色まで、色合に幅があります。表面は滑らかで、側面には型やパドル(へら)の跡があります。上部と下部に特徴的な花の刻印がつけられています。

製造および加工方法

- 凝固:
レンネットまたは認可された酵素を使い凝固させます。28℃~32℃の間の温度で45分以内で凝固させます。凝固して、ちょうどいい固さのカードができたところで、適当な大きさにカットします。切り分けたカードを5分間ほど休ませ、ホエーの一部が抜けるのを待ちます。

- カッティング:
この後、36℃~38℃の温度になるまで、カードを優しく攪拌しながら、徐々に加熱してゆきます。この温度まで上がったら、攪拌する力を強くして、カードが小麦の粒くらいの大きさで、硬い弾力を持つようになるまで混ぜ続けます。カードがその状態になるまで、約30分かかります。

- 成型と圧縮:
前述の、イベリコチーズの特徴にあわせた形とサイズに合わせた型に入れます。

適切な時間と圧力をかけて、プレス機でチーズに圧をかけます。この圧縮作業が終わった時にpH値 が5.0~5.5になるように調整します。

- 加塩:
塩化ナトリウムの塩水に漬けて込んで加塩します。漬け時間は、温度と塩水溶液の濃度によって変わりますが、48時間以内で作業を終了させます。チーズの塩化ナトリウム成分量が、この作業が終了時に、最高で2.5%以内であることが要求されています。

- 発酵:
主に乳酸菌の働きにより発酵させます。

- 熟成:
温度12℃~16℃、相対湿度75%~90%で乾燥させ、その後、4℃~10℃、同じ相対湿度で熟成させます。

- その他の特徴:
熟成が終了したチーズは、オリーブオイルに漬けるか、真空パックの状態で保存します。販売はポーションにカットしたもの、スティック状にカットしたもの、スライス、粉タイプがありますが、全て包装された状態で販売されています。

このチーズはスペイン全土で作られていますが、メセタ・セントラル(スペイン中央台地のことで、カスティーリャ・イ・レオン自治州、カスティーリャ・ラ・マンチャ自治州がある)とアンダルシア自治州の両方の地域での製造が多くなっています。

PDO イディアサバル(Idiazabal)

ラチャ種およびカランサナ種の羊乳を、搾ったままの生の状態で使って作る、圧縮タイプのハードチーズです。最低60日間熟成させます。

風味の特徴

香りは、深く、趣のある羊乳の香りそのものです。すっきりとした香りと濃厚な香りの両面を持ちうるのは、チーズが作られる時期、場所、製法、熟成期間により、香りの持つ刺激、酸、甘さの程度が変わるからです。スモークタイプでは、生地にそれほど強い燻製の香りを残さないように注意します。

味は、強くて芳醇なバランスの良い風味です。きめ細かく締まった生地で、濃厚な羊乳の味、子羊の天然レンネット特有のかすかな風味等がこのチーズの特徴です。軽い辛味に加え、甘味と酸味はごくわずかに感じさせるものから中程度まで幅があります。苦みはなく、ほどよい塩味で、スモークタイプは、軽めから中程度のスモーク味を感じさせます。はっきりした後味が口の中に長く残ります。

生地はきめ細かく、ほどよい弾力をもち、噛み応えがあります。チーズを噛むと粒々した感じがありますが、だまが残っるような食感ではありません。水分は熟成する間に失われるため、熟成期間が長くなるほど弾力性が失われ、ボロボロと崩れる硬いチーズになります。

その他の特徴

形状は上下部分が平らで整った円筒形です。側面にはわずかに膨らみがあり、小さいチーズでは縁が丸くなっており、大きいものでは外縁はシャープです。高さ8cm~12cm、直径10cm~30cm、重さ1kg~3 kgです。

外皮は硬く滑らかですが、加工中にに使う布巾の跡が残っていることがあり、また、片側に熟成の間に置かれていたトレーの跡がわずかについていることもあります。外皮は自然にできるため、製法によって様々です。例えは、水を含ませたブラシでゴシゴシこすった場合には黄色みのあるベージュ色を持つようになり、このブラッシングをやさしく行った場合や、水を使わずに行った場合は、白っぽい灰色になります。スモークタイプでは茶色みがかった黄土色や淡い茶色になります。スモークする前にチーズは丁寧に洗われます。

生地はしっかり締まっており、米粒よりも小さい孔がまばらに散在することもあります。均一でマットな色調は、時間によってアイボリー色から麦わら色まで変化します。通常、端の部分に細くて若干暗い色をした筋があり、この筋はスモークタイプでは茶色みを帯びています。この筋は熟成が進むに従い、幅が広がり、色も濃くなります。大きいチーズの場合は、その筋はさらに幅が広くなります。

成分は以下の通り:

- 固形分中の脂肪:最小45%
- pH:4.9~5.5
- 固形分:最小55%
- 固形分中の総タンパク質:最小25%

製造および加工方法

このチーズを作る乳を搾るための羊は伝統的な飼育方法で飼われており、このチーズの生産地域で育つ最良の牧草を直接食べて育ちます。

羊乳は搾ったままの純粋なもので、保存料の使用などの調整は行いませんので、タンパク質と脂肪のバランスが良い羊乳を選びます。また、チーズの製造、熟成、保存、衛生状態にマイナスの影響を与える恐れのある初乳や薬剤は使用しません。

羊からていねいに搾乳された乳は、10℃未満に保たれます。前処理をしないままの乳をステンレス製のバットで30℃になるまでゆっくりと加熱します。その後、動物性レンネットまたは呼称委員会が定めた酵素を正確に必要な量だけ用いて、20分~45分間かけて凝固させます。凝固にかかる時間は乳の酸性度や季節によって変わります。凝固の過程の間、温度は常に28℃~32℃に保たなければなりません。哺乳中の子羊から取れる天然レンネットは、初めにきれいに洗浄して乾燥させ、細かく砕いて、塩と混ぜます。

出来上がったカードを繰り返しカットして、直径5mm~10mmの、トウモロコシの粒や米粒程度の大きさにします。その後、生地の素となるものを15分間ほどかき混ぜ続け、通常の場合、36℃~38℃の温度で約25分間再加熱します。

ホエーの排水を促すため、バットの温度を約37℃に上げながらゆっくりと混ぜ続けます。これにより、脂肪分やタンパク質といった乳の栄養分だけを残して、水分を排出することができます。カードの粒がかなり硬くなったら加熱をやめ、カードの粒が底に沈んで、上澄みのようなホエーでカバーされた状態にします。

ホエーを抜いたあと、車輪に似た、このチーズを特徴づける形をした円筒形の型にカードを入れます。それぞれのチーズには、トレーサビリティを保証するための番号が付けられます。通常、圧縮は空気圧縮機を使い、1.5~4 気圧の圧力をかけて、5時間~6時間かけて行います。

その後、型から外したチーズに加塩をします。加塩は、8℃~13℃に温度を保ちながら、乾燥した塩、または飽和食塩水の中に漬け込んで行います。飽和塩水に漬ける時間は、小さいもので24時間、大きいもので48時間です。風にあてて乾燥させる期間は製造者によって異なりますが、温度10℃~13℃、相対湿度 80%の環境で行い、30日を越えることはありません。

熟成は、型入れの日から最低60日以上、温度 8℃~10℃、相対湿度85%~90%で行います。チーズはトレーに並べられ、必要に応じて定期的に向きをかえて、磨かれます。この工程でこのチーズ特有の持ち味が生まれてきます。

これらの工程を通して、チーズの酸性度があがり、品質を保つ特性が促進されます。熟成期間は最低2か月ですが、チーズを最高の状態にするためには、好みにもよりますが、4~8か月熟成させることが望ましいとされています。

スモークする場合は、出荷される2~3日前に、ブナやハンノキを使ってスモーク作業が行われます。PDOの認定を受けた製品は原産地呼称保護委員会が発行し管理する番号を記したラベルが付けられます。

地理、起伏、気候

この地域は、標高1500mの山々や起伏に富んだ地形から成る山岳地域です。大きく2つの地域に分かれ、一つはピレネー山脈から続くバスク山脈で、もう一つが南側のエブロ谷です。この地域は大部分が白亜紀に形成されたもので、ナバラ自治州や、バスク自治州のビスカヤ県およびアバラ県に、古第三紀にできた地層が線状に見られる地域があり、またアララール山地北部のギプスコア県とナバラ自治州の間には石炭紀にできた地層も見られます。

土壌は石灰岩、石灰岩砂岩、泥灰土、砂質泥灰土からできており、これらの堆積岩が表面の土壌を形成しており、pH 7~7.5の湿った石灰質の褐色土に分類されます。このような土壌は牧草地に非常に適しています。このチーズの基本的な品質に加えて、ウルバサ山地やサンディア山脈の牧草を食べた羊の乳を使ったチーズは、その土壌が炭酸カルシウムを多く含むために、より甘味が強くなり、一方、アララール山地の酸性度の高い土壌で育った牧草を食べた羊の乳を使ったチーズは、よりピリッとした味である、と言われています。

この地域では、昔から11月~4月にかけて放牧が行われています。干し草用の草刈りは、7月後半と、8月に行われます。秋になると、羊たちはまた牧草地に戻ります。最も広い牧草地があるのはビスカヤ県です。

地形の特徴がこの地域の気候に多様性を与えています。ビスカヤ県やギプスコア県、およびアラバ県の北部の谷や、ナバラ県の北西部は大西洋気候に分類されます。リオハ・アラベサやリベラ・ナバーラの内陸部分では地中海気候に属し、さまざまなタイプの気候がみられます。後者の2つの地域には羊はほとんど見られません。大西洋気候は年間1200mmを超える雨をもたらし、平均気温は13℃~14℃です。平均最高気温は16℃~18℃、平均最低気温は9℃~10℃です。

複雑な起伏と大量の雨のふるこの地域には、河川が網のように広く張り巡らされており、水量も豊かです。水系の集まる場所が2箇所あり、一つがビスカヤ県とギプスコア県、さらにアラバ県北部の谷やナバラ県から水が集まるカンタブリア流域と、アラバ県、中部ナバラ自治州、ラ・リベラを含む地中海盆地地域です。カンタブリア流域の川は短く急流で、ビダソア川、オリア川、デバ川、ウロラ川、イバイサバル川、ネルビオン川、カダグア川、ウルメア川が流れています。地中海盆地の地域はエブロ川の支流、アラバ県のサドーラ川やバジャス川、ナバラ自治州のエガ川、アルガ川、アラゴン川が流れています。

出荷される2~3日前にブナやハンノキを使ってスモークするものもあります。

PDOマオン・メノルカ(Mahón-Menorca)

ホルスタイン種、メノルカ種、ブラウンスイス種の搾ったままの牛乳から作られる、牛乳の圧搾チーズです。メノルカ種の羊の乳を、最高5%加える場合もあります。熟成期間は最低 21日間です。

風味の特徴

一般的には、マイルドな酸味を持つチーズです。熟成の浅いものはマイルドで、熟成が中程度のものはバターやナッツ(特にヘーゼルナッツ)のほのかな風味があり、口の中に残る後味はあまりしつこくありません。熟成の進んだものは、古い樹木、なめし皮、あるいは熟成室の香りを思い起こさせる、複雑で強い風味があります。熟成が進むほどピリッとした味が増し、後味が長く残るようになります。

ミルクの香りのチーズで、バターや独特の酸味を感じさせます。熟成が進むと、香りはさらに深くなります。

熟成の浅いチーズは柔らかく弾力があり、中程度のものは生地がしっかりしまってきて、カットしやすくなります。熟成の進んだものは生地がさらにしまってきますので、噛み応え感がでて、弾力性は失われます。しっかり熟成が進むと、カットする際にポロポロと崩れて、フレーク状になることがあります。

その他の特徴

四角い底面と側面、縁の部分に丸みを持った、六面体の形をしたチーズです。高さ5cm~9cm、側面と高さの比率は、熟成の浅いチーズで2:3、中程度および熟成の進んだものでは2:4、重さは1kg~4kgです。

熟成の浅いチーズの外皮は目が詰まって脂っぽさがあり、はっきりとした外皮という形成ができていません。外皮の色は熟成の浅いものでは白色から黄色、仕上げ職人によって加工される中程度まで熟成が進んだチーズは、オレンジや明るい茶色をしており、さらに熟成の進んだチーズは茶色です。職人によって手作業で作られるチーズの上部には、成型の段階でチーズを包んだ布巾のしわの跡がついています。
生地は黄色からアイボリー色で、大小の丸い孔が不規則に散っていることがあります。孔の大きさは豆粒以上のものはありません。脂肪分は固形分中38%を下回ることはなく、全体に占める固形分量は50%以下にはなりません。

製造および加工方法

搾ったままの無調整の乳を使い、保存料も一切使いません。季節ごとに変化する、原料の牛乳の性質に合わせて、異なる種類の牛から搾乳されたミルクをブレンドして脂肪とタンパク質のバランスを調整することで、最終的な脂肪分が固形分中38%以下にならないようにしています。

職人による手作りチーズは、搾乳したばかりの牛乳を使います。工場設備をもった製作所で作るチーズの場合は、成分調整をしたり、貯蔵しておいた牛乳を使ったりする場合があります。凝固には動物性レンネットを使用します。30℃~34℃の温度を保ちながら、最低30分~40分で凝固するように計算して、適量のレンネットの分量が決められます。凝固してきたカードをカットしたりホエーを排水させたりする工程でも、30℃~34℃の温度はが保たれるように気をつけます。カードが豆粒くらいの大きさにまでカットされたら、10分ほど休ませてホエーを抜きます。

手作業でチーズを成型し、綿の四角い、フォガッサー(fogasser)と呼ばれる布巾で包み、四隅をひっかけて吊るします。その後、作業台の上に並べてホエーをさらに抜き、布巾を手で絞って圧をかけることで、生地を締めてゆきます。生地はさらに圧縮機にかけて絞られます。この作業によって、チーズには生地を包んでいた布巾のしわと結び目の跡が上部に残ります。

このチーズの特徴である四角い六面体にするために、特注の型を使う場合もあります。約10時間かけて圧縮し、その後、チーズは、10℃~15℃の温度で、最高48時間、飽和食塩水の中に漬け込まれます。それから風とおしのよい部屋に並べて、3~4日かけて風をあてて乾燥させます。この期間に表面フローラが成長します。乾燥室から出したチーズは、熟成室に並べて販売可能な状態になるまで寝かせます。熟成期間は、浅い熟成のもので21~60日、中程度の熟成のもので60~150日、熟成の深いもので150日以上をかけます。

熟成させている間、定期的にチーズの向きを変えて、表面をきれいにします。また、チーズの表面にオリーブオイルやピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)を擦り込みます。この作業を数回繰り返すことにより、外皮を乾燥から守り、虫がつくのを避け、このチーズの特色である色と外観ができあがります。

地理、起伏、気候

メノルカ島はバレアス諸島で2番目に大きな島で、最北東部に位置します。

岩の多いこの島の面積は約 689 平方キロメートルで、主に2つの地域からなっています。北部のゴツゴツした地形のトラモンターナと、南部のミグホルンで、南部は起伏が緩やかで北部に比べ平らですが深い渓谷もあります。

島で最も高い地点はトーロ山の山頂で 358mになります。その他には、2つの主な地形が見られます。マオン港からファバリッツ岬 まで伸びる沿岸部は石炭紀に作られた最初の地形で、南側半分は深い渓谷が交わり、その土壌は中新世の堆積物からなる、石灰炭質のような石混じりの土壌です。

気候は温暖で、夏の気温は34℃を超えることはなく、冬も5℃を下回ることはありません。夏季の平均気温は23℃、冬季は10℃です。

年間平均降水量は 600mmをわずかに超える量です。この降水量のほかに、大量の露が降りますので、牧畜を行うのに十分な牧草が育つ環境にあります。海から吹く風と水分を多く含んだ空気が牧草を潤すことになり、その牧草を餌にして育った牛の乳は、酸味が強く、海の塩の風味があります。

牧草地として使われている場所のほとんどが、以前は耕作地として利用されていたケースが多く、今では酪農が農業に取って代わった産業です。牧草はびっしりと密集して生え、背も高く育ちます。牧草の多くはイネ科とマメ科の植物で、牧草として非常に有用なものです。この地域の河川は、川底の乾いた渓流と渓谷からなっており、川に水が流れるのは、大雨が降った後のみといえます。

熟成の浅いチーズは柔らかく弾力があり、中程度のものはやや硬くなりカットしやすくなります。熟成の進んだものはさらに硬く、目が詰まり弾力性はなくなります。しっかり熟成せたものはカットする際に砕けやすく、フレーク状になることがあります。

PDOラルト・ウルジェイ・イ・ラ・セルダーニャ のバター
(Mantequilla de l'Alt Urgell y la Cerdanya)

低温殺菌された牛乳から作るアルト・ウルジェイとサルダーニャ地方(カタルーニャ自治州)原産のバターです。

風味の特徴

深い味わいと香りが広がるバターです。上品な味わいで、なめらか、ヘーゼルナッツを感じさせる軽い酸味があります。これは、フレッシュクリームの持つ天然の脂肪酸と、特定の乳酸菌スターターの働きによりクリームを長く熟成させたあとに生成されるジアセチルから生まれる風味です。

その他の特徴

しっかりとした塊でありながら、なめらかなバターです。とても伸びが良く、すうっと溶けて舌の上にべたつき感を残しません。色は均一な光沢のある黄色ですが、天然カロチノイドの含有量(プロビタミンA)が多いため、作られる時期によって色が変わります。

製造および加工方法

まず、牛乳からクリーム(乳脂)を分離し、得られたクリームを低温殺菌して、最後に空気を抜きます。
次に低温殺菌したクリームを冷却します。そうすることで熟成は、特定の中温性ヘテロ型乳酸菌スターター(ストレプトコッカス・ラクチス、ストレプトコッカス・ディアセラクラチス、シトロボラム乳酸菌を含む)の働きによって進み、酸性化と芳香化が起こります。

乳酸菌の培養と発酵は、乳酸菌がそこで発酵する媒介物、つまりアルト・ウルジェイやサルダーニャで搾られた牛乳を使った培地の調製から始まります。乳酸菌の発酵は22º Cの温度で20時間かけて行います。これを経て、酸度チェックが行われます。乳酸菌が適切に成長すれば、酸性度が80~100ºの間の値になっています。その後、クリーム100リットルごとに2%~3%の割合のスターターが混ぜられます。

この工程は、熟成が適切に進み酸性度が40~50ºになるよう、16℃~18℃の温度で48時間かけて行います。着色料、その他の添加物の使用は厳しく禁止されています。同様に、抗生物質や発酵防止剤の使用も禁止されています。

クリームはその後、適正な粒の大きさ(米粒程度)になるよう激しく攪拌します。バターミルクを分離させた後、バター粒を洗い、次にバター粒を練り合わせ、成型、包装と作業はすすみます。

地理、起伏、気候

アルト・ウルジェイとサルダーニャは、スペイン北東部、ピレネー山脈の東部・中央部の南側に位置する2つの地域です。カディとピレネー山脈で守られた場所で、セグラ川流域につながっています。

この二つの地域をつなぐ細長い地域は、中程度から高い標高に位置し、非常に多くの谷が続き、セグラ川やその支流につながる渓流や川が流れています。最も大きな支流はバリラ川で、他の支流と合流しアンドラ公国の盆地に流れています。

この地域の主な気候は、地中海性気候よりの山岳気候で、比較的気温が低く乾燥しており、澄んだ空と太陽の日差しがたっぷり降りそそぎます。ここは、動物の飼料として牧草地で育つ植物にとっても理想的な自然環境です。冬は乾燥して気温が低く、春は雨が多く、夏は暑く乾燥し、秋は適度な湿度があります。

このバターの原料である乳を搾るための牛は、主に加工した飼料で育てられており、日常与える餌の約70%が飼料です。飼料にはバターの生産地域で採れる牧草を使い、干し草やサイレージとして、作りたてのものを与えます。飼料にする牧草の大部分は自然の牧草地から刈り取ります。牧草の質が最適な状態になる4月の終わり頃、最初の刈り取りおこないます。この時期は、カモガヤ、ウシノケグサ、プロムグラス、ライグラス、さらにその他のイネ科植物が花を咲かせる時期と重なります。

この一番刈りの牧草は、通常、優れた栄養価を保存するためにサイレージにします。その後に育つ牧草は、気候に恵まれた時期に生育するので、質の高い干し草になります。夏の間、家畜は放牧されます。放牧地は自然の牧草地の中で、牧草が最適な状態に育った、なるべく若い草が生えている場所を選びます。アルト・ウルジェイの南部で使われる飼料の大部分はコーンサイレージで、アルファルファも干し草として与えます。

飼料のうちの30%には大麦、小麦、トウモロコシなどを使います。ほとんどはアルト・ウルジェイの南部やサルダーニャの日当たりの良い地域で育てられたものです。このバターの持つ品質と特質は主に、地域の植物や自然の植生、そして丁寧な製造工程によって生み出されています。

口に入れると強い風味と香りが広がります。硬くてなめらかなバターで、とても伸びが良く、素早く溶けて舌の上に残ることはありません。

PDO ソリアバター(Mantequilla de Soria)

ホルスタイン種、ブラウンスイス種、またはこれらを交配させた品種の牛乳からとれるクリームを低温殺菌して作るバターです。ソリア(カスティーリャ・イ・レオン自治州)の酪農場で作られます。

風味の特徴

-ナチュラルバター(無塩バター):やや軽めのジアセチルとフレッシュクリームの香り、後味は適度にごく軽い酸味を感じさせます。口に入れるとほどよい早さで溶け、適度な粘りけがあります。

-有塩バター:軽く熟成したクリームの香りで、強い塩味が短い間口に広がります。口に入れるとほどよい早さで溶け、適度な粘りけがあります。

-甘味を加えたバター(バタークリーム):ジアセチルとクリームの香り、わずかな草の香り、カラメルにした砂糖を感じさせる。強い甘味とわずかな酸味がほどよく口に残ります。口に入れるとさらっと溶けて、ほどよい粘りけがあります。

その他の特徴

ナチュラルバターは麦わら色からアイボリー色、有塩バターはアイボリー色、甘味を加えたものはほとんど白に近い色をしています。甘味を加えたバター(バタークリーム)には、明るいオレンジ色やピンク色をつけてくるりと絞り出したバターを飾ります。カットした断面は、有塩バターは若干ザラザラし、甘いバターは軽い泡のように見えますがしっかりと詰まっていて、グラニュー糖と米粒の間くらいの孔があります。

成分は以下の通り:
-ナチュラルバター:最低脂肪分80% m/m、脂肪分以外の最大固形分2% m/m、 最大水分量16% m/m
-有塩バター:最低脂肪分80% m/m、脂肪分以外の最大固形分4% m/m、 最大水分量 16% 、最大塩化ナトリウム2.5% m/m.
-甘味を加えたバター(バタークリーム):最低脂肪分39% m/m、脂肪分以外の最大固形分35% m/m、最大水分量 25% m/m、 サッカロース20%~35% m/m、着色料にはベータカロテンおよび/またはコチニールを使用。

製造および加工方法

原乳の製造農場は、2日分の牛乳を5℃以下で保管できる冷蔵庫を設置する義務があります。搾乳から集荷までの期間は最大で2日です。加工施設に運ぶ間、牛乳の温度が9℃を超えないように保ちます。

ナチュラルバターを作るためには、殺菌とクリーム分離の処理の前に牛乳をプレート熱変換器で熱処理し、遠心分離機にかけます。

30℃~40℃の熱処理で取り出したクリームには38%~45%の脂肪分があり、酸性度は13º未満です。クリームを低温殺菌した後に冷却して、12℃~15℃の熟成タンクに入れます。12℃~15℃の温度で12~15時間かけて熟成(エージング)させます。このエージング作業の開始から3~4時間後に、乳酸菌スターター(ラクチス、クレモリス、ジアセチルラクティス)を加えます。

クリームの酸度が18~28ºに達したら、培養を抑えるために冷却します。その後、バターチャーンに入れ(バターチャーンの許容量の約40%まで)、2~3時間激しく撹拌します(チャーニング)。

バターミルクを分離して排出後、脂肪粒を水洗いします。残ったバターミルクを取り除くために、脂肪粒を攪拌します。その後、バターチャーンの中で、60分~120分間、断続的にゆっくりと練り上げて(ワーキング/練圧)してバターを仕上げます。最後に機械で成型し、商品として出荷するように包装します。

有塩バターの製法はナチュラルバターとほぼ同じですが、練圧の段階で塩を加えます(最大25% mm)。甘味を加えたバター(バタークリーム)は、水とサッカロースを適切な濃度になるまで煮詰めて作る、昔ながらの方法で作られたシロップをバターに加えて混ぜます。シロップをバターに練り込む作業が終わったら、硬くて口の広い箱に絞り袋を使って詰めます。この上に、同じバタークリームをベータカロテンやコチニールで色付けしたものを絞り出し、飾りにして完成です。この装飾が全体の15%を超えてはいけません。この販売方法は昔から継承されているものです。

地理、起伏、気候

ソリアはスペイン中央台地で最も高い場所に位置する都市の一つです(平均で海抜1026m)。起伏が激しく、気候も非常に厳しい地域です。この環境の中で飼育される家畜は、硬く、乾燥した牧草や独特な植物相など、一般的な飼料とは異なるもので飼育されることになり、結果としてこの地域で生産される牛乳にも独特な品質として表れ、またその牛乳から製造されるバターも特別なものとなります。

ナチュラルバターは麦わら色からアイボリー色、塩味を加えたものはアイボリー色、甘味を加えたものはほとんど白色をしています。甘味を加えたバターは明るいオレンジやピンクをした渦巻き状のバターが上部に飾られています。

PDOピコン・ベヘス - トレスビソ(Picon Bejes-Tresviso)

牛乳、羊乳、または山羊のいずれか乳を単独で、あるいはこのうち2種類または全種類を混合した乳から作るブルーチーズです。牛はカンタブリア原産種のトゥダンカ種、ブラウンスイス種、ホルスタイン種、羊はラチャ種、山羊はピレネー種やピコス・デ・エウロパ地域の品種の乳をそれぞれ使います。熟成期間は最低2か月で、自然の洞窟で熟成させます。

風味の特徴

よく熟成したチーズは、強烈で舌を刺すような風味、そしてバターのようなコクがあります。香りは、青かびを感じさせます。

その他の特徴

上下が平らな円筒形で、高さは7~15cm、重さと直径はさまざまです。外皮は薄く柔らかく、脂分が染みだしています。色は全体が灰色の色調で、そのなかに、緑色や黄色のマーブル模様が見られます。孔のある生地は締まってクリーミーですが、熟成期間によっては砕けやすいものがあります。生地の色は白色で、緑色から青色の斑点と筋があります。固形分中の脂肪は45%以上、水分量は30%以上でなければなりません。

製造および熟成方法

混合乳を使う場合、その配合の割合は季節によって変わりますが、呼称統制委員会からも脂肪とタンパク質のバランスがとれた含有量になるように、理想的な配合の推奨も行われています。凝固には乳酸菌を使用し、最低1時間、22℃~26℃で 凝固するように、正確な量のスターターを添加します。

生成されたカードをヘーゼルナッツほどの大きさに丁寧にカットし、15分ほど休ませます。その後、ホエーが排水され、カードが乾燥するまで置きます。その後、カードを直径1cm~2cmのボール状にまとめて固め、球状になったものを円筒形の型に詰めてゆきます。カードでできた粒のすき間で青かびが成長するように、ぎゅうぎゅうに詰めたり、押し付けたりしないようにします。2時間~3時間たったら、型を逆さまにひっくり返して24時間置きます。

加塩にはチーズの重さの2~3倍の量の乾燥塩を使います。1日目に平らな面の片面に塩をまぶし、2日目には反対側に塩をまぶし、3日目に型から外して側面に塩をまぶします。その後、15℃~18℃の風通しの良い保存室(オレオ)に12日~18日間置き、空気の流れを利用してチーズを乾燥させます。

熟成は天然の石灰岩の洞窟にチーズを置いて行います。このような洞窟は、通常、標高500m~2000mの山間の地域に多く見られます。洞窟内の温度は5℃~10℃で、湿度は85%~95%です。洞窟には、チーズ内部の「ペニシリウム(青かび)」と外部の「ブレビバクテリウム・リネン菌」が成長するのを促すために通気口があります。

乳を凝固させた日から、最低2か月かけて熟成させます。その間、チーズの向きを変え、チーズの周囲を拭き取る作業を行うことで、このチーズ固有の特徴を引き出します。

自然に形成される外皮の特徴に手を加えることは、呼称統制委員会の規則により認められません。とりわけ、ワックス、パラフィン・ワックス、プラスチック物質、着色剤などを使って外皮をコーティングすることは禁止されています。セイヨウカジカエデの葉で包む伝統的な方法は許可されています。

地理、起伏、気候

リエバナ地域は、カンタブリア自治州南西部に位置し、西をアストゥリアス自治州、南をパレンシア県とレオン県(カスティーリャ・レオン自治州)に接しています。

この地域は造山運動によって生じた、幅約40kmの円形のくぼ地です。最も低い場所で、標高300m~400m、周囲を囲む高い部分の標高は2000mを超えます。長く狭い谷と、でこぼこに激しく浸食された河間地域が交互に見られる非常に不規則な地形になっています。垂直の崖が多い西側は山の起伏が特に激しく、南や東側では、段々になった部分もみられる、緩やかな起伏になっています。

くぼ地で最も低い場所の土壌は、古生代のスレートで、基盤としての栄養成分が豊富な湿った石灰質の褐色土が形成されてきました。くぼ地の取り巻く高地部分は、古生代の石灰質の土壌で形成されており、ペーニャ・ラブラ山を超えると礫岩、砂岩、粘土、リモナイトが複合的にに混ざり合って見られます。

年間平均気温14.5℃の穏やかな気候で、平均最低気温は10℃、平均最高気温は20℃です。7月と8月には、最高気温が約36℃に到達することがあります。年間雨量は900mm~1200mmと非常に多く、年間降雨日数は90日~120日あります。

涼しい北からの風が、この地域に最も頻繁に吹く風ですが、南部では暖かい乾いた風が吹きます。この地域に流れる主な川はデバ川とナンサ川で、デバ川はピコス・デ・エウロパを水源として、アストゥリアス自治州との境界線を形成しながら海へと流れこみます。支流の中で主要なものは、キビサ川とバジョン川です。ナンサ川は地元で最も変則的な流れの川で、ティナ・メノールの河口を形成しています。

牧草地には非常に多様な植物が生えていますが、大部分はイネ科の植物で、飼料として利用するのに適しています。標高の高い場所でも同じ種類の植物が育つ風土です。

よく熟成した強烈で舌を刺すような風味、そしてバターのような風味があり、新鮮なかびの香りが感じられます。

PDO ケソ・カメラノ(Queso Camerano)

山羊乳から作るチーズで、山羊の種類はセラーナ種、 ムルシアーナ=グラナダィナ種、 マラゲーニャ種、 アルピナ種、またこれらの交配種の山羊です。乳は低温殺菌をするか、あるいは生乳のままで使い、チーズを作る時期によって熟成期間が変わります。ケソ・カメラノの際立った特徴は、外側についた連続模様ですが、これはチーズを成型する際に使用する「cilla(シーリャ)」という型によってできる模様です。この「cilla」は、以前は籐を編んで作られており、この網目がチーズの外側に残した模様でした。

風味の特徴

- ケソ・カメラノ・フレスコ(フレッシュタイプ):カードは白く艶があり、孔はなく、滑らかなでとても柔らかくプルプルした質感です。味は幅広く、とても甘みを感じさせるものから、酸味を感じさせるものまで揃っています。

- ケソ・カメラノ・ティエルノ(ソフトタイプ):外皮として区別できるものがあります。かびは成長が全くないもの、少し見られるもの等があります。生地の色は白からアイボリーホワイトまでの幅があり、生地の硬さは中程度から柔らかい質感で、孔はありません。味は、少し酸味のある、はっきりした味です。

- ケソ・カメラノ・セミクラード(半熟成タイプ):はっきり外皮として区別できるものがあり、緑がかった茶色のかびの生育が表面に見られます。生地の色は白からアイボリーホワイトで、生地の硬さは硬めからやや硬めの質感。味は、酸味を少し感じさせ、濃い特徴のある風味です。

- ケソ・カメラノ・クラード(熟成タイプ):はっきりと外皮として区別できるものがあり、表面に緑がかった茶色のかびの成育がみられます。生地の色は白からアイボリーホワイトで、生地の硬さはきっちりしまった硬めです。孔はまったくないか、あってもごくわずかです。味は、パワフルで特徴のある風味です。

その他の特徴

- ケソ・カメラノ・フレスコ(フレッシュタイプ):
形:上下が平らな円筒形、「cillas」と呼ばれる型による網目の模様がついています。
サイズ:多種
重さ:200g~800g
外皮:ほとんどない
固形分:最低40%
固形分中の脂肪:最低35%
塩化ナトリウム:最大1.5%

- ケソ・カメラノ・ティエルノ(ソフトタイプ):
形:上下が平らな円筒形、「cillas」と呼ばれる型による網目の模様がついています。
サイズ:多種
重さ:200g~1200g
固形分:最低40%
固形分中の脂肪:最低35%
塩化ナトリウム:最大2%
pH:4.80~5.50

- ケソ・カメラノ・セミクラード(半熟成タイプ):
形:上下が平らな円筒形、「cillas」と呼ばれる型による網目の模様がついています。
サイズ:多種
重さ:200g~1200g 
固形分:最低45%
固形分中の脂肪:最低50%
塩化ナトリウム:最大 3%.
pH:4.90~5.60

- ケソ・カメラノ・クラード(熟成タイプ):
サイズ:多種
重さ:200g~1,200g(0.44ポンド~2.65ポンド)
固形分:最低55%.
固形分中の脂肪:最低50%.
塩化ナトリウム:最大3%.
pH:4.90~5.60

製造および熟成方法

- ろ過:チーズ製造工場内の集乳場に届いた乳は、まず、ろ過されます。

- 低温殺菌:71.7 ℃で15秒、または、呼称統制委員会で定めたその他の温度と時間の組み合わせで乳を殺菌します。

- 塩化カルシウムの添加:乳1kgあたり最大250mgの塩化カルシウムを加えます。

-乳酸生産菌培養物を添加します(乳酸発酵)。

- 凝固:子山羊や子羊由来の動物性レンネット、あるいは工業用レンネットを使って乳を凝固させます。

フレッシュおよびソフトタイプ: 32℃~38℃の温度で、15分~45分かけて凝固させます。

半熟成および熟成タイプ: 29℃~38℃の温度で、25分~60分かけて凝固させます。

- カッティング:カードが生成されたら、粒の大きさが適当なサイズになるまでカードをカットします。
フレッシュおよびソフトタイプ: 粒の大きさは直径約4mm~5mm。
半熟成および熟成カメラノチーズ:粒の大きさは直径約4mm~5mm。

カードを洗う:この工程は任意で、必要性に応じて行われます。

- 再加熱:これも工程も任意ですが、実施するのは、半熟成および熟成タイプのチーズの製造の場合で、凝固温度より2℃~5℃高い温度まで加熱します。

- 粒を練る:必要な硬さになるまで粒を混ぜます。
フレッシュおよびソフトタイプ:粒の練りは軽く、柔らかめにできます。
半熟成および熟成タイプ:粒をしっかりと練ります。硬い出来上がりになります。

- 成型:ホエーを排水した後、カードを円筒形のケーキ型(cillas)に入れる(ガーゼを使用)、あるいは極小の穴の開いた円筒形の型(ガーゼの使用は有/無しの場合があります))に入れて、熟成した後のチーズがその特徴的な形、サイズ、重さになるように、適切なサイズに成型します。

「cilla」という言葉は、昔、ケソ・カメラノを作るために使われていた、籐を編んで作った型のことです。現在ではプラスチック製の型を使用することになっていますが、形は従来のままの姿を保っています。

- 圧縮:カードを型に入れ、適切なpHになるまで、自然に自重でつぶれてくるまで、あるいはその他の方法を用いて圧縮します。

フレッシュおよびソフトタイプ:圧縮する場合でも、強い力はかけず短時間で行います。
半熟成および熟成タイプ:適切なpHになるまで1時間~4時間圧縮します。

- 加塩:塩化ナトリウムを使用した新鮮な塩水にカードを漬けて込んで加塩します。塩水は濃度15º ボーメから飽和状態に保ちます。最大で15時間塩水に漬けることができますが、この時間は塩水の濃度、チーズの大きさ、温度(必ず20℃以下にする)によって変わります。

- 熟成:熟成させている間、チーズをひっくり返して磨き、さらにその都度チーズの外皮に適切な手入れを行います。すべての工程を通して、熟成室は相対湿度80%以上、室温9℃~15℃の間に保ちます。

- 保存熟成:5℃~10℃の温度で保存して熟成させます。

- 販売:ソフトタイプ、半熟成、および熟成タイプのチーズは、自然の外皮がついた状態で、収縮包装、真空パック、紙の包装、セロファンの包装などの方法で販売されます。
フレッシュタイプはタブ型か熱形成の容器に入れて販売されます。このタイプの容器はソフトタイプのチーズに使用されることもあります。長く熟成させるチーズは、外皮の部分にオリーブオイルを添付することがあります。このチーズの販売は、全形のホール販売のみとなっています。

地理、起伏、気候

この原産地呼称制度で認定されている地域は、良質の飼育用牧草が豊富なことで知られています。加えて、酪農業から生まれるさまざまな副産物もあり、これらがラ・リオハの谷に住む人々の生活に重要なものとなっています。山羊は牧草地や穀物収穫後の土地を最大限活用するのに最適な家畜です。さらに山羊は、その身体的特徴により、羊や牛などの他の動物が近づけない場所まで行くことができますので、山羊はラ・リオハ自治州に自生する、丈の低い若草、低木、森林地帯の植物を好んで食べ、そのすべてが自然の牧草地となっています。

ラ・リオハ自治州はエブロ川流域にあり、南はイベリコ山系、北はエブロ川に挟まれています。次のように、自然にできた二つの地域に分かれます。

- エブロ川沿いの、標高600m未満の低い地域で、第三紀時代にできた段丘、ブドウ畑、耕作地が広がっています。ここに、地域人口の 80%が住んでいます。

- ソリア県とブルゴス県に隣接する標高600m以上の山間地域で、南はイベリコ山系の頂上まで続く山岳地域です。この地域は北部と南部では明確な違いがあります。北部は、ラ・リオハ自治州の南部を占め、急勾配の山々と、ナヘリリャ川に削られた狭い谷があり、ピコ・デ・ウルビオンおよびシエラ・デ・セボレラ山地と、シエラ・デ・ラ・デマンダを隔てています。これらの場所は大西洋や標高の高さの影響を受けて、ブナ、オーク、マツが茂る森林に覆われています。南部はシエラ・デ・カメロス山脈にあり、エブロ川へ下る山々が続き、シダコス川、レサ川、イレグア川、ナヘリリャ川が流れています。

ラ・リオハ自治州は全体的に地中海性気候ですが、州内の気候を次の4つのタイプに区分することができます。(I) 温暖な大陸性の地中海性気候、 (II) 温暖な地中海性気候、 (III) 低温の地中海性気候、 (IV) 寒冷の地中海性気候。

(I) 温暖な大陸性の地中海性気候は概ね標高600メートル未満に位置する州の東側低地の半分を占める地域

(II) 温暖な地中海性気候は州の北西部とイベリコ山系の北端に沿った地域でみられます。
(III) 低温および (IV) 寒冷の地中海性気候はイベリコ山系の残りの大部分でみられ、標高の高い場所(シエラ・デ・ラ・デマンダ、シエラ・デ・ウルビオン、シエラ・デ・セボレラ山地)は寒冷気候となっています。

このような気候状況が、家畜の飼料に最適な天然の豊かな牧草地を育て、ここで採れる乳にも際立った特徴を直接的に与えています。すなわち、風味、脂肪、タンパク質、糖分、無機塩といった乳の成分にその影響は現れ、それがチーズになったときに、独特な味わいとして生きてきます。

長く熟成させるチーズはオリーブオイルで外皮を磨くこともあります。このチーズはホール販売のみとなっています。

PDOケソ・カシン(Queso Casín)

無殺菌の成分調整がされていない牛乳で作る脂肪分の高い熟成チーズです。原産地呼称保護の認定を受けるために、このチーズには、アストゥリアナ・デ・ラ・モンターニャ種(アストゥリアス地方での別名 カシナ)、アストゥリアナ・デ・ロス・バージェス種、 ホルスタイン種、あるいはこれらを交配した品種の牛から搾った乳を使います。チーズの凝固には酵素を使用し、セミ・ハードおよびハードタイプの生地は練って作られます。

風味の特徴

生地はしっかりつまっており、セミ・ハードからハードタイプ、黄色っぽい色で、孔はないが小さなひびが入っている場合があります。カット面はボロボロともろく砕けやすいが、舌の上にバターのような食感が残ります。均一な腰のある粘りの生地で、強くてパンチのある香りが特徴。色は白みがかった濃いクリームイエローで、チーズの上部には各製造者の屋号が金型で押されています。

風味は製造工程により異なり、特に、特製の練り器で練る回数に影響されます。よく練るほど、苦味、スパイシー感、キリッとした味がよりはっきり表れます。慣れるにつれてその良さがわかる種類の味で、時間を経て風味が増した素朴なバターの香りなどが生まれます。それほど練らない場合は、似た風味ではありますが、刺激の強さが減少します。どちらのタイプも、強く、芳醇で、余韻の残るスパイシーな風味と、喉元に感じるわずかな苦みと、後味の強さがこのチーズの特徴です。

その他の特徴

不定形な円盤状の片面をもつドーム型あるいは円筒形で、円盤状の部分には花柄や幾何学模様がついており、この模様で製造者の名称や屋号を表しています。大きさは直径10cm~20cm、高さ4cm~7cm、重さ250g~1000 gです。

外皮はないといってもいいくらいで、繰り返し練った後、外側と内側とは均質に熟成します。チーズの外側と内側の両方ともしっかりと目が詰まった生地になり、なめらかで、乾いた、あるいは少しオイリーな質感になります。

製造および熟成方法

カシンチーズは牛の生乳のみで作るチーズです。牛は生産地にある牧草地で採れる干し草や新鮮な餌を取り入れつつ、実質年間を通して牧草を食べ、地元の自然の恵みを栄養源にして飼育されています。チーズの凝固には酵素を使います。使用する酵素は動物由来のレンネット、凝固剤、発酵剤、塩化ナトリウムで、バットの中でカードを生成させるのに必要な量を正確に使います。凝固は30℃~35℃の温度で約45 分間かけて行い、その後、リラ(lira)と呼ばれるカードナイフでカードを切ります。温度を 約2℃上げつつ、同時にカードがヘーゼルナッツほどの大きさの粒状になるまで少なくとも10分間混ぜ、その後、さらに最低10分休ませます。

次に、布巾あるいはドレイナー(穴の開いたプラスチック容器)にカードを数時間入れてホエーを排水します。その後、風が通る室内で、室温を15℃~20℃に保ちながら3日以上、カードを布巾に置いたままで、排水作業を続けます。ホエーが完全に抜けるまで、カードの向きを毎日変える作業を続けます。この期間に乳酸菌の発酵がはじまります。

次に、この地方では「Rabilar」と呼ぶ、カードを練る作業に入り、この過程で塩の一部を加えます。より均一な状態にするため、それぞれ反対方向に動く二つのモーター駆動ローラー付き混錬機でなんども練ります。練る工程の中で何度か塩を加えます。次に手でカードの形を整えて、底の小さい背の高いピラミッド型に整えます(この状態のカードをgorollusと呼んでいます)。これを、室温15℃~20℃で5日~2週間かけて、風の通る室内に保存して乾かします。この間、毎日チーズの向きを変える作業を怠りません。「gorollus」が乾いたところで、再びこれを崩して、製造者ごとに異なる好みの質感がえられるまで、機械を使って練りあげます。練る回数が増えるほど、滑らかで均一な状態になり、締まった質感で強い風味を持つようになります。

最後にチーズの形を整えます。一方が円盤型で他方が丸くなったドーム型にするか、円筒形のケーキ型にします。ケーキ型に成型する場合は、最初にチーズのボールを作り、それから両面を平らに延ばしながら、好みの形に整えてゆきます。円盤型の部分に、押し型で製造者のロゴをつけます。その後、少なくとも2日間、風の通る部屋に置きます。チーズの最も目立つところに、「marcu Casín」の呼称統制委員会のシールがつけられ、このチーズの原産地を特定するだけでなく、見た目も引き立てます。

熟成は室温8℃~10℃、湿度 80% の熟成室で行います。熟成はカードが生成された時点から数え始めて少なくとも2か月続きます。この期間に必要に応じてチーズの向きを変えて磨くことで、チーズの際立った特徴が生まれます。熟成期間中に物理的・化学的変化が起こり、最終的な官能特性がもたらされます。

地理、起伏、気候

この地域の南部はカンタブリア山脈に接しており、ペーニャ・デル・ビエントの山頂が最も標高が高く2000mに達します。また、北部はシエラ・デル・スエベ山脈に接し、最も標高の高いピコ・ピエンスの山頂で1159mです。この地域は異なる3つのエリアに分かれます。

1. 北部はシエラ・デル・スエベ山脈とその支脈。
2. 中央部はピロニャ川やナロン川、およびこれらの川の支流が流れる谷と湿地牧野。
3. 南部はカンタブリア山脈の中に位置し、谷から山頂に向かって急な斜面が伸び、小さな谷と、森林や低木に覆われた広い帯状の土地が広がっています。

最も高い山脈部分を除いて、ここは温暖な海洋性気候で、年間を通して雨が降り、気温の変動も穏やかです。典型的な大西洋気候ですが、高山の影響も現れる土地柄です。年間平均気温は標高が上がるほど低くなります。気温は全体的に温暖ですが、山岳地域の気候は厳しく、標高の高い場所では冬の平均気温は0℃前後です。 降水量は一年を通して一定で多雨です。また、降水量も標高が上がるほど多くなります。

強く、芳醇で、余韻の残るスパイシーな風味と、口の奥に感じるわずかな苦み、後味の強さがカシンチーズの特徴です。

PDO ケソ・デ・フロール・デ・ギア(Queso de Flor de Guía)
ケソ・デ・メディア・フロール・デ・ギア(Queso de Media Flor de Guía)
ケソ・デ・ギア (Queso de Guía)

各チーズの定義は以下の通りです。

フロール・デ・ギア・チーズ:主にカナリア諸島の羊の乳を無調整あるいは半脱脂した乳で作るチーズです。アザミの花(cynnara spp)から取り出した植物性レンネットのみを使用して凝固させます。

メディア・フロール・デ・ギア・チーズ :主にカナリア諸島の羊の乳を無調整あるいは半脱脂した乳で作るチーズです。アザミの花から取り出した植物性レンネットを50%以上使用して凝固させます。

ギア・チーズ:主にカナリア諸島の羊の乳を無調整あるいは半脱脂した乳で作るチーズです。動物由来のレンネット、植物性レンネット、許可された発酵剤の全て、あるいはこのうちの1種類か2種類を使用して凝固させます。

その他の特徴

形状は円筒形で、高さ4cm~8cm、直径20cm~30 cm、重さ2kg~5kg。

熟成度合いによって成分に違いがありますが、最低含有量は以下の通りです。

フロール・デ・ギア・チーズ:
固形分中タンパク質:22.50%
固形分中脂肪:29.50%
固形分:56.50%

メディア・フロール・デ・ギア・チーズ :
固形分中タンパク質:23.50%
固形分中脂肪:27.50%
固形分:55.50%

ギア・チーズ:
固形分中タンパク質:24.10%
固形分中脂肪:27.50%
固形分:57.00%

製造および熟成方法

原材料の受入:手作業もしくは搾乳機を使って搾った乳をろ過し、場合によっては事前に洗浄してからろ過した乳を別の容器に移して岩塩を加えます。塩の量は、乳100リットルに対し25g~30gを超えないようにします。

レンネット添加:伝統的な方法で行います。乳の温度が28℃~35℃になったら、レンネットと塩を同時に加えます。レンネットは動物性、植物性のいずれも使います。動物性レンネットは子山羊や子羊の胃袋から取ったものです。このレンネットを乳や冷ました湯に溶かしてから乳に加えます。市販されているレンネットの使用も認められており、それらは凝固酵素から作られています。植物性レンネットは地中海地方産のキク科の草カルドンや、アーティチョーク(朝鮮アザミ)の花の部分を乾燥させ、さらにそれを水につけて抽出した液を使います。

フロール・デ・ギア・チーズの凝固には、フロール(花)の名のとおり、植物性レンネットのみを使います。具体的にはカルドンやアーティチョークの乾燥させた花から水抽出した凝固成分を使います。カードの生成は、28 ℃~35℃の温度で、60分~90分間かけて行います。

メディア・フロール・デ・ギア・チーズの凝固 は、28℃~38℃の温度で、最大で1時間かけてカードを生成させます。メディア・フロール(花の半分)の名が示すように、植物性レンネット(カルドンやアーティチョーク)は総使用量の50%か50%以上であることが定められており、残りの分量は植物性以外のレンネットか許可された酵素を使用します。ギア・チーズの凝固も、30℃~38℃の温度で、最大で1時間かけてカードを生成させます。各種のレンネット(植物性レンネットを含む)、または酵素を使用します。

カッティングと排水:カードが生成されたら、カードが適当な粒の大きさになるまで(米粒大から小豆大くらいまでの大きさ)カード専用カッター(Liras)または手作業ででカットします。その後、カードを休ませて、その間にホエーを排水させます。

成型と圧縮:この段階で使用するチーズプレスは「ケセラ(quesera)」と呼ばれます。フロールチーズに使うチーズプレスには中央に左右対称な幾何学的な花模様があり、原産地呼称保護委員会のロゴと同じ、あるいはよく似た印になっています。

成型は手作業か機械を使って、カードの生地を丸い型に入れます。圧縮状態にむらがある生地が、均一でペーストのように柔らかい塊になるようにピッタリな時間をかけて圧縮します。

加塩:レンネット添加と同時に行った加塩処理を補完するため、あるいは先に加塩を行っていない場合にはこの段階で、乾いている状態での加塩作業を行います。海水から作った少量の岩塩をチーズプレス機に置き、この上に型に入ったチーズを置き、さらにチーズの上部にも岩塩をふります。その後、型に入ったチーズが約24時間この状態に置かれている間に塩が浸透します。塩水を使って加塩する場合もありますが、この場合は厳しく衛生管理されています。

熟成:このチーズがPDO認定を受けるためには、最低15日間の熟成が必要です。熟成期間中は、向きを変え、磨きの作業を繰り返し、コーティングを行ってこのチーズ独特の特徴を引き出します。コーティングは60日以上熟成させたチーズに行うもので、動物性脂肪や食用の植物油を使って行います。ピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)やゴフィオ(gofio-トウモロコシのひき割り粉)も使用します。コーティングに使用する原料は現行の規則に従ってラベルに記載されています。

地理、起伏、気候

このチーズの生産地は比較的狭い地域(136.62平方キロメートルにもかかわらず、 土地の特徴により多様性に富んだ微妙な気候の違いがみられます。この地域は非常にいびつな三角形をかたちづくる外周で囲まれており、島の中心部には標高1,500mを超えるシャープにそびえる山があり、この山がもう一つの主な気象要因を作りだしています。
サンタ・マリア・デ・ギア地域の気候は、グラン・カナリア島の北部に位置していることによる影響を受け、標高別に3つの地域に分かれます。モヤは風上に位置し、中高度点から高地では湿度が高く、多雨です。ガルダルは400m以下の標高で、乾燥しており、その細かい気候の差がこのチーズの独特な特徴を生み出しています。

これらの町村では1000種類ほどの野生の植物が育ち、それらのうち100種類ほどは固有種で、これは微妙な気候の差や標高差によってもたらされたものです。野生種として育つ植物の多くが家畜飼料として利用できる植物で、こうした植物がこの原産地呼称保護を受けたチーズに、他のチーズとは一線を画す、独特な見た目、香り、風味を与えます。こうして生産地とチーズは深く関連しているのです。

コーティングは60日以上熟成させたチーズに動物の脂肪や食用の植物油を使って行います。

PDO ケソ・デ・ラ・セレナ(Queso de La Serena)

メリノ種の羊乳を使った、ソフトからセミ・ハードタイプのチーズで、最低20日間熟成させます。

風味の特徴

羊乳の独特な香り、強くてわずかに苦みのある風味が特徴で、塩味は強くありません。バターのような風味と長く続く後味があり、よく熟成させたチーズはわずかな辛味を舌の上に残します。生地の質感はねっとりしてクリーミーなものから伸びが良いものまでさまざまです。

その他の特徴

形状は上下が平らな円筒形で、側面はやや膨らみを持ちます。高さは4cm~8cm、直径は18cm~24cm、重さは750g~2kg。外皮は若干硬い程度で、つやのある黄色から黄土色、染み出してくる脂肪分の影響で上下の表面は滑らかです。側面もすべすべした肌か、または型に使われた籐の跡が模様のようについていることもあります。生地の質感はソフトからセミ・ハードまで幅をもち、色はアイボリーからつやのある黄色です。不均等に散らばった小さな孔があいている場合もあります。よく熟成させたチーズでは生地と外皮が硬くなります。脂肪分は固形分中最低50%、pH5.2~5.9、総タンパク質は固形分中最低 35%でなければなりません。

製造および熟成方法

健康な羊から搾る、成分調整をしていない乳を使用します。純粋な乳であることが要求され、初乳、薬品、保存料等が混入しないように注意します。これらが、チーズの製造、熟成、品質維持、さらにチーズの出来や衛生状態に悪い影響を及ぼす可能性があるからです。

1kgのチーズを作るのに15頭分の羊乳が必要です。初めにキク科の草カルドンの花を乾燥したもの(現地では「Yerbacuajo=凝固させる草」として知られています)から採れる天然の植物性レンネットを使って乳を凝固させます。カルドンの繊維状の花を乾燥させたものを、冷暗所で12時間水に漬けます。加えるレンネットの量は、チーズを製造する時期と求めるクリーミーさによって変わります。

凝固の工程は、乳を25℃~32℃の温度に保ち、50分から75分間かけて行います。カードが生成されたら、直径10mm~20mmの粒状になるまでカットします。

凝固を中温に保って行い、天然レンネットを使用することで、凝固に要する時間が長くなり、かなり柔らかいカードになります。また、タンパク質分解活性作用により、生地の質感にばらつきが生じますが、固形分含有量は高くなります。その後、チーズが適切な形、大きさ、重さになるように、エスパルト繊維を編んだ帯や、金属やプラスチックでできた円筒形の型にカードを入れます。この作業は傾斜した作業台の上で行います。

加塩作業は、手でチーズの表面に乾燥した塩を擦り込む方法と、最大で24時間20%の食塩水に漬け込む方法があります。最後にチーズを木製の棚に並べ、オレオと呼ばれる保存室や貯蔵室に置き、湿度と温度を一定に保った状態で熟成させます。

オレオに置かれたチーズには、毎日向きを変え、型の締め付けを調節する作業が続けられます。この作業は特徴的なクリーミーさと風味が生まれるまで続きます。通常、成型して20日後には、チーズ生地は非常に柔らかいペースト状に固まりますが、その外皮を破かないように注意深く取り扱います。

地理、起伏、気候

バダホス県の地形は大部分が平均標高430mの準平原で、緩やかな斜面のほとんどが南向きになっています。県の北東部ラ・セレナ地区はエストレマドゥーラ州の準平原の南部のサブ・メセタ(台地よりやや標高の低い地域)の一部を形成し、ほとんど大きな木は生えていません。

地理的構造は古生代の準平原で、その後の覆土と数多くの噴火露頭で形成されています。地形は浅層で平均的に浸透性のカンブリア紀やシルル紀の花こう岩で形成され、母岩が多く露出しています。

土壌は未開墾の酸性土で、pHは5~5½、リンの含有量は低めです。非常に質の良い花こう岩が露出したスレート(粘板岩)の岩盤で、そのため降水量が非常に少なくても草はよく育ちます。

大部分の土地が放牧地として使われています。牧草の量が豊富とはいえませんが、質は高く、地元で生産される乳に土地独特の風味を与えます。冬の気候は温暖ですが、11月1日~3月10日まで頻繁に霜が降り、夏の気候は暑くて乾燥しています。地域は全体的に乾燥しており、年間平均降水量は498mmです。

側面は滑らか、または籐の型の模様がついていることもあります。質感はソフトからセミ・ハード、色はアイボリーから淡い黄色です。

PDOケソ・デ・ムルシア・アル・ビノ(Queso de Murcia al Vino)

ムルシア種の山羊の乳から作る、ウォッシュタイプの圧搾チーズです。大きいサイズで最低45日、小さいサイズで最低30日熟成させます。赤ワインに漬けて熟成させることで外皮に独特な色と香りが生まれます。

風味の特徴

キレのある心地良い香りと、塩味が抑えられた風味。熟成期間に赤ワインに漬けることで、花のような香りと、山羊乳やクリームを感じさせるほどよい後味が残ります。クリーミーで弾力のある食感です。

その他の特徴

形状は円筒形で、高さ6cm~7cm、直径7cm~9cm、重さ300g~400g。大きいサイズのものは重さ1kg~2kg、直径は12cm~18cmのものもありますが、高さは6cm~7cmを超えません。外皮は滑らかで薄く、特徴的な赤ワインのような色をしています。生地の色はアイボリー色で、しっかりと詰まった断面です。小さな孔がいくつかある場合もあります。

製造および熟成方法

山羊の中でも、このチーズを作るための乳を搾るムルシアナ・グラナダィナ種は乳量が多い種です。搾乳の方法はいろいろありますが、搾乳回数は一日に一回だけです。年に一頭の割合で子山羊を生み、授乳期には1頭あたり600kg以上の搾乳が可能です。乳の脂肪分、タンパク質、固形分がバランスよく、チーズ作りには理想的な乳です

手作業あるいは搾乳機で搾った乳は、ろ過され、動物由来のレンネット、または許可された酵素のスターターを加えて凝固させます。凝固は30℃~34℃の温度で40分~60分かけて行います。

生成されたカードを直径6mm~8mmの粒状にカットします。このチーズ独特の洗浄作業をおこないます。つまり、まずホエーの15%を抽出し、その後水を加えて、変動値が+ 3%になるようにします。次に凝固温度よりも3℃~4℃高い温度まで再加熱します。その後、カードの粒が適度な弾力性を持つまで、練って、休ませてを繰り返します。

すべすべした円筒形の型にカードを入れ、適切なpHになるまで2時間~4時間圧縮します。次に、最大濃度20ºボーメの塩水に最大で20時間漬けて加塩します。

最後に熟成作業をおこないます。大きいサイズのチーズは最低45日間、小さいものは最低30日間かけます。熟成期間中にチーズをムルシア産の赤ワインに漬けます(al Vino)。果汁の割合に対して皮の多いぶどうで作るこのワインは、タンニン含有量が多いため、強い染色力をもち、また、さらに強い花の香りをチーズに与えます。これらすべてがこのチーズの特徴となります。

地理、起伏、気候

このチーズが作られる地域の地勢は変化に富んでいます。異なる景観ごとに気候条件も異なりますが、亜熱帯性の地中海性気候に属し、雨が少なく、気温は高めです。大部分の土壌が塩性地で水分量は少ない土地柄なので、植生はほとんどが低木です。シソ科とハンニチバナ科の植物が多く、乾燥した山地ではこれらが山羊の主な飼料になっています。

赤ワインに漬けて熟成させることで、花のような香りと、山羊乳やクリームを感じさせるほどよい後味が残ります。

PDO ケソ・デ・ムルシア(Queso de Murcia)

この地方原産の、ムルシアノ・グラナディナ種の山羊の乳を使ったチーズです。この原産地呼称統制のもとに、2種類のチーズがあります。

ケソ・デ・ムルシア・フレスコ(フレッシュタイプのチーズ):熟成させないフレッシュチーズです。形状は円筒形で、上部にプレイタ(pleita)と呼ばれる植物で編んだ帯の模様がついています。重さは250g~3Kg、最大直径は200mm、最高で高さは120mm。

ケソ・デ・ムルシア・クラード(熟成タイプ):形状は円筒形で、外皮は滑らかで、熟成期間が増えるにつれて、外側の色はつやのある黄色から黄土色に深まります。熟成期間は最長でも120日を超えません。重さは250g~2.6Kg。最大直径は190mm、最高で高さ100mm。

風味の特徴

ケソ・デ・ムルシア・フレスコ:山羊乳のクリームやヨーグルトのような香りと味に加え、軽い塩味があります。塩味は外側部分ほど強く感じられます。生地はなめらかに均一で、弾力があり、しっとりしています。

-ケソ・デ・ムルシア・クラード:
干し草とナッツのマイルドな香り、山羊乳と甘いナッツの風味を持ちます。さらに熟成したチーズは、炒ったナッツの風味を持ちます。質感はしっかりと締まって硬めですが、弾力も残っています。

その他の特徴

-ケソ・デ・ムルシア・フレスコ:
形状は円筒形です。重さは250g~3Kg、最大直径は200mm、最高で高さは120mm。外皮はほどんどなく、このチーズの昔ながらの特徴である、上部にプレイタ(pleita)と呼ばれるエスパルト繊維で編んだ帯の網目模様と圧縮に使う板の跡がついています。生地はつやのある白色、軽く圧縮されたフレッシュタイプのチーズで、断面はしっかりと締まって孔はほとんど見られません。

-ケソ・デ・ムルシア・クラード:
形状は円筒形で、外皮は滑らかで、熟成期間が増えるにつれて、外側の色はつやのある黄色から黄土色に深まります。重さは250g~2.6Kg。最大直径は190mm、最高で高さ100mm。圧縮タイプのナチュラルチーズで、断面には小さな孔が少し見られます。

製造および熟成方法

山羊の中でも、このチーズを作るための乳を搾るムルシアナ・グラナダィナ種は乳量が多い種です。搾乳の方法はいろいろありますが、搾乳回数は一日に一回だけです。年に一頭の割合で子山羊を生み、授乳期には1頭あたり600kg以上の搾乳が可能です。乳の脂肪分、タンパク質、固形分がバランスよく、チーズ作りには理想的な乳です。

手作業あるいは搾乳機で搾った乳は、ろ過され、動物由来のレンネット、または許可された酵素のスターターを加えて凝固させます。フレッシュタイプの場合、凝固は32℃~35℃の温度で30分~45分かけて行い、熟成タイプでは30℃~34℃の温度で40分~60分かけて行います。

次にカッティングの作業をおこないます。フレッシュタイプでは、生成されたカードが直径10mmの粒になるよう、熟成チーズでは5 mmの粒状にカットします。その後、凝固温度よりも3℃~5℃高い温度まで再加熱します。
練りの作業では、フレッシュタイプは柔らかい質感をえるために練り加減は軽くします。熟成タイプは硬さが出るまでしっかり練ります。

型に入れて固めます。フレッシュタイプでは、伝統的なエスパルト繊維の網目模様と圧縮に使う板目模様がついた型に入れて、軽く短時間圧縮します。熟成タイプの場合は、すべすべした円筒形の型にカードを入れ、適切なpHになるまで2時間~4時間圧縮します。

加塩の工程では、フレッシュタイプの場合、最大濃度16ºボーメの塩水に最大で10時間漬け込みます。熟成タイプの場合は最大濃度20º ボーメの塩水に最大で20時間漬け込むことで加塩します。最後にフレッシュタイプはホエーを排水して、4℃以下に冷やし、一切熟成させません。熟成タイプは最低60日間熟成させます。

地理、起伏、気候

このチーズが作られる地域の地勢は変化に富んでいます。異なる景観ごとに気候条件も異なりますが、亜熱帯性の地中海性気候に属し、雨が少なく、気温は高めです。大部分の土壌が塩性地で水分量は少ない土地柄なので、植生はほとんどが低木です。シソ科とハンニチバナ科の植物が多く、乾燥した山地ではこれらが山羊の主な飼料になっています。

フレッシュチーズの生地は柔らかく均一で弾力があり、しっとりしています。熟成チーズはしっかりと締まって硬め、少し弾力があります。

PGIケソ・デ・バルデオン(Queso de Valdeón)

ブルーチーズ。牛乳のみで作る場合と、牛乳と山羊乳の混合乳、または、羊乳を加えるか、山羊乳の代わりに羊乳のみを使う場合もあります。生乳で作る場合は少なくとも2か月、低温殺菌乳から作る場合は1か月半、熟成させます。

風味の特徴

風味が強く、軽いミルク味、塩味、辛味に加え、わずかにスパイシー感もあります。カラメルのような香りと、口の中で溶けるバターのような食感。スプレッドタイプに練りあげたタイプのチーズも同じ香りと味ですが、食感はクリーミーで、温度が上がるにつれて、よりクリーミーさが増します。

その他の特徴

全形で出荷する場合、形状は円筒形で、重さ0.5kg~3kg。カットしたものは250g以上で販売されることが多い。全体を覆う外皮は自然のままで、薄く、柔らかく、でこぼこして、灰色がかった色調の黄色っぽい色をしています。生地はアイボリーホワイトからクリーム色で、しっかりつまってねっとりとしており、艶があり、熟成度合いに応じて端の部分の色はわずかに濃くなります。断面には大小の大きな孔が平均して散らばっており、色は緑色を帯びた青色です。

スプレッドタイプのチーズは重さ20g~1.5kgのパックに詰めて販売されています。外皮は無く、ホールタイプのチーズの生地と同じ色で、クリーム状の生地はバターのようなほどよい硬さです。固形分中の脂肪分は45%以上、固形分中水分量は30%以上、 塩分量は3.5%以下。

製造および熟成方法

乳酸菌の働きによって凝固させます。1時間~2時間で凝固させるのに必要な量の乳酸菌スターターを使用します。この段階で青かびを注入し、乳の温度は凝固の工程を通して28℃~32℃に保ちます。生成されたカードを約1cmの辺のキューブ状になるまでカットし、14分~17分間休ませます。その後、カードを振り動かして、ホエーを排水し、その後、円筒形の型に入れて圧縮せずにそのまま置きます。

次に両側に乾燥塩を擦り込んで加塩し、空気が中まで通るように穿孔する作業をおこないます。熟成室の室温は5℃~10℃、湿度85%以上に保ちます。生乳で作った場合は最低で2か月熟成させ、低温殺菌乳の場合は1か月半熟成させます。スプレッドタイプのチーズは外皮を取った熟成チーズから作られ、熟成チーズを細かく切り、練ってからパック詰めします。

地理、起伏、気候

チーズが作られるこの地域は、ピコス・デ・エウロパの南側にあるパンデルエダス(1450m)、 ポントン(1311m)、パンデトラベ(1562m)の山々が造り出す自然の壁面に囲まれた、平均標高 650mの谷で、レオン県の北西に位置しています。これらの山には多くの自然の洞窟があり、シェルターやチーズの保存場所として昔から羊飼いに利用されてきました。

気候は典型的な高山気候で、厳しく長い冬が11月~4月まで続き、冬季の100日以上は氷点下の冷え込みを記録します。降水量も多く、降雪も珍しくありません。夏は短く涼しい陽気で、平均最低気温は5℃~6℃、平均最高気温は18℃、降水量が多く、霧やもやが発生するため湿度も高くなります。年間平均降水量は谷の周辺で1100mm、山頂付近では1800mmになります。ここでみられる微妙に変化する気候が、このチーズ特有の個性を生み出す微生物叢(フローラ)の生息を促します。

風味が強く、軽い酸味、塩味、辛味に加え、わずかにスパイシーな辛さもあります。カラメルのような香りと、口の中で溶けるバターのような食感が特徴です。

PDO ケソ・イボレス(Queso Ibores)

セラーナ種、ベラタ種、レティンタ種、あるいはこれらを交配した品種の山羊の乳を無殺菌のまま使って作るチーズで、最低 60日間熟成させます。

風味の特徴

特徴的なすっきりとした味わいで、わずかな酸味とマイルドな辛味、最後に山羊乳の味が感じられます。舌の上に心地良いクリーミーさが広がり、山羊の搾りたての乳の香りがほどよく感じられます。生地はバターのようでみずみずしく、砕けすぎず、ほどよい弾力性があります。

その他の特徴

形状は円筒形で、上下部分は平たく滑らかで、側面は平らあるいは少し膨らんでいます。高さ5cm~9 cm、直径11cm~15 cm、重さ650g~1200g。販売単位は1kg程度のホール、500gぐらいのハーフカット、250gの1/4カットとして売られています。

外皮は滑らかでやや硬め、自然のままやウォッシュタイプ、ブラシで表面を磨いたもの、ピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)やオリーブオイルを塗ったものなどがあります。自然に出てくる色は艶のある黄色から濃い黄土色まであり、表面の加工方法によって色合いに差がでます。自然のままの外皮は灰色っぽく、ピメントンをコーティングしたものはオレンジがかった赤色、オリーブオイルをコーティングしたものは黄色から黄土色になります。生地はアイボリーホワイトでセミ・ハードタイプ、大小の孔がまばらに散って見られることもあります。

成分は以下の通り。

- 固形脂肪:最低50%
- 固形分中の総タンパク質:最低30%
- 固形分:最低50%、塩化ナトリウム: 最大4%
- pH:最低5.2

製造および熟成方法

山羊の飼育は、広い場所でも、またある程度広さが制限された場所でも行えます。後者の場合、厳しい夏の気候から群れを守るために、谷の牧草地から近くの山の斜面へ移動させて放牧します。搾乳は秋から始まり、冬に搾乳量を増やし、春にピークを迎えます。そして暑さが増して、繁殖時期に重なる初夏には搾乳を休みます。

一般的に、PDOで認められている山羊の種は、生産地の厳しい牧草生育条件によく適応し、十分な量の乳を提供します。しかし、レティンタ種とベラタ種は絶滅の危機に瀕しているため、 このチーズの原料となっているのはほとんどがセラーナ種の乳です。

昔から続く放牧方法で山羊は飼育されています。PDOイボレスチーズに使用する乳は、PDOの認定を受けた酪農家が飼育する、健康な山羊から採れた、自然のままの乳でなければなりません。成分無調整の乳であることが要求され、また、初乳、薬品、保存料等が混入しないように注意します。これらが、チーズの製造、熟成、品質維持、さらにチーズの出来や衛生状態に悪い影響を及ぼす可能性があるからです。搾乳後の乳は使用するまで6℃以下で保存し、微生物の増殖を防ぎます。

チーズ作りは凝固から始まります。自然のレンネットまたはその他の許可されたスターターを使って、乳を28℃~32℃の温度に60分~90分間保ち凝固させます。生成されたカードは直径10mm~20mmの粒状になるまでカットします。その後、円筒形の型に移して、1平方センチ当り1 kg~2 kgの重しをかけて3時間~8時間圧縮します。

次に加塩作業です。使うのは塩化ナトリウムだけです。これを、乾燥塩として擦り込むか、または、最大20º ボーメの塩水に最大24時間漬けこみます。

最後に、最低 60日間熟成させます。熟成室は相対湿度75% 以上、室温4℃~15℃の状態に調整します。通常、チーズは無殺菌の無調整の乳から作りますが、呼称統制委員会が許可したスターターを使用した場合には低温殺菌乳を使った製造も認められるようになりました。イボレス独特のチーズらしさは失われません。

PDOの認定を受けたこのチーズは、呼称統制委員会によって発行・記録される、ナンバリングの入ったラベルによって管理されています。あわせて付けられる製造者のラベルには、PDOの名称、製造日、チーズの製造に使ったミルクが生乳あるいは低温殺菌乳のどちらであるかなど、必要なデータを明確に記載することが義務付けられています。

地理、起伏、気候

このチーズの生産地は、エストレマドゥーラ自治州カセレス県の南東に位置し、トレド県(カスティーリャ・ラ・マンチャ自治州)とバダホス県(エストレマドゥーラ自治州)に隣接しています。

景観は主に地中海沿岸に見られるタイプで、平原にはコルクガシなど、いろいろな種類の樫の木、、川沿いにはハンの木、黒ポプラ、柳、山地にはシスタスなどの低木が生えています。この地域の重要な樹木として、樫の木各種とならんで、栗の木、オリーブ、シスタスなどの低木が挙げられます。日照の少ない場所には、サクラ属に分類される、めずらしい常緑樹のポルトガルローレル(Prunus lusitanica)が育っています。その他にも野生種の植物の育成が見られます。ポルトガルローレルの濃い緑色の葉は、「横に降る雨」と呼ばれているように、霧に含まれる水分を地面へ運ぶ役割をしています。これらの木は、第三紀にこの地域で大きく成長した、古代のうっそうとした雲霧林が残ったものです。

地形学的に、この地域の大部分が高地に属し、南東から北西方向に平行に並ぶ連山と、火成岩で表面が覆われた準平原があります。グアダルーペ山、ビリュエルカス山、アルタミラ山を源流とするビエハ川、 イボル川、アルモンテ川、ルエカス川、グアダルーペ川、グアダランケ川と、いずれも長く深い川の流域にそって谷が造られています。

この地域で最も高い頂をもつピコ・ビリュエルカス山の頂上は、標高1600mです。山の土壌堆積はあまり深くなく、痩せており、主に珪岩、花こう岩、スレートが母岩となっています。この地域での耕作地は川の流域の谷や、山の周りの高原に限られています。

年間降水量は、低地で1平方メートル当り600リットル、山岳部で1000~1200リットルの雨が、季節の差なく降ります。この雨のおかげで、天然の牧草の生育が促され、多年草と一年草の両方の植物が生育します。平均気温は15℃~16℃で、冬は寒く、夏は非常に暑い気候です。

自然に出てくる色は淡い黄色から濃い黄土色まであり、成型の方法によって色合いが異なります。自然のままの外皮は灰色っぽく、ピメントンをコーティングしたものはオレンジがかった赤色、オリーブオイルをコーティングしたものは黄色から黄土色になります。

PGI ケソ・ロス・ベヨス(Queso Los Beyos)

無殺菌あるいは低温殺菌した牛乳、羊乳、山羊乳を原料に、混乳せず、それぞれの乳を単体で使って作るチーズです。発酵には乳酸菌を使用し、熟成は最低で20日間、低温殺菌しない乳から作る場合は最低60日間熟成させます。

風味の特徴

外皮は薄く、しっかりしており、外皮の色は使用する乳によって異なります。クリームイエロー(牛乳)、淡い黄色(羊乳)、明るい茶色(山羊乳)と色の違いに幅があります。

その他の特徴

セミ・ハードからハードタイプで、生地は詰まっており、発酵段階でできる孔も、自然発生的にできる割れ目もありません。カットする際には砕けやすく、ボロボロのフレーク状になりやすいです。生地の色は、山羊乳を使った場合は白色、羊乳や牛乳を使った場合はアイボリーから淡い黄色です。

しっかりと締まっている生地ですが弾力性はなく、断面が薄片状になるボロボロと崩れる、硬めの質感のチーズです。

臭いが少なく、マイルドな香りのチーズですが、羊や山羊の乳を使ったチーズは香りが立ち、羊乳や山羊乳が持つそれぞれの香りを感じさせます。

味もマイルドですが、羊乳を使ったチーズはその風味は強く感じさせます。羊乳や山羊乳のチーズは、それぞれの乳が持つ風味をわずかに感じさせる味わいです。牛乳を使ったものは塩味もほどほどで、酸味がありますが、ほどよくバランスが取れ、新鮮な乳の後味が残ります。羊乳と山羊乳のチーズはより強い後味が長く口に残ります。

チーズの外見:
形状:円筒形で、上下は平らか、わずかにくぼんでいる
サイズ:高さ6cm~9cm、直径9cm~10cm
重さ:250g~500g

成分:
固形分:最低50%
固形分中の脂肪:最低45%
固形分中のタンパク質:最低30%.

製造および熟成方法

①カードの生成:カード用バットの中で乳酸発酵によりカードを作ります。この工程は乳酸菌と少量のレンネットを乳に加えることから始めます。殺菌していない生乳から作る場合、乳酸菌は使用しません。塩化カルシウムを使って凝固を促すこともあります。レンネットを添加してから、12時間~24時間かけてカードが適切な硬さと酸性度になるまで凝固作用を継続させ、この工程の間、温度を23℃~26℃に保ちます。

②カッティング:カード用バットの中で、カードを均等にカットしてゆきます。そうすることにより、表面積が増して、ホエーが排水されやすくなり、ホエーが完全に抜けるようになります。カットの際には、スパチュラ(へら)を縦方向と横方向から入れるように注意して、ゆっくりと、カードが潰れないように扱います。このように細心の注意をはらう作業ですが、成型の段階でもホエーは排水されるので、この工程が最重要部分というわけではありません。

③成型と加塩:カードが生成されたら、食品用の多孔性のプラスチック容器に入れます。容器いっぱいに入れられたカードは徐々にカードの自重で圧縮されてゆきます。出来上がりのチーズの高さが直径よりも少し短い円筒形になるように、最初の1時間の間に2回~3回カードを容器につぎ足します。
細菌の増殖を調整し熟成が適切に進むよう、ホエーを完全に排水して、そして、チーズのうまみを引き出すために、チーズの成型の工程で、精製塩を型の上下のカードに手作業で塗りこみます。片面に塩を摺り込んだら数時間置き、反対側に塩を摺り込みます。この作業はチーズをひっくり返しながら繰り返し行われます。
この成型と加塩の工程に要する時間は24時間~48時間です。

④熟成: チーズを型から外して、熟成させます。熟成室やその他の熟成場所に移す前に、小さな穴の開いたトレーに並べて、温度を12℃~14℃に保ちながら2日~4日保存します。その後、熟成室やその他の熟成場所に運び、温度8℃~12º C、相対湿度75%~85%の環境で、最低16日間熟成させます。熟成期間はあわせて最低20日間です。殺菌していない生乳を使う場合、熟成期間は最低60日間に延びます。最初の数日間はチーズを毎日ひっくり返し、チーズが乾燥し始めたらひっくり返す回数を減らして、全体的が均一に熟成するようにします。 熟成室や熟成場所に置いている間に、全工程を通してトレーサビリティを確保するために、チーズを一個ずつはっきりと区別してタグをつけます。

地理、起伏、気候

このチーズは ロス・ベヨスの大きな渓谷の名から名づけられました。この渓谷は石灰岩質の土地が、セージャ川によって削られてできたものです。セージャ川は、このチーズの製造場所であるオセハ・デ・サハンブレ、ポンガ、アミエバなど、多くの地方自治体の区分を通って流れています。多くの山々が、地域ごとにそれぞれの場所を隔てる自然の境界線としての役割を果たしており、各地域間の行き来を非常に困難にし、この地域を移動するためには、急な山の斜面や危険な道を避けながら、険しい地形を乗り越えることを余儀なくされます。この土地の立体地図をみると、高い山地のエリアと、緩やかな谷(中には急な斜面と狭いく深い谷間を形成する渓谷)がみられます。土壌には山の石灰石が大部分を占め、量は少ないもののスレートと珪岩も見られます。石灰石が削られた渓谷や珪岩の崖の他、スレートが窪んで谷になった部分があり、そこにこの地域の主な町があります。

土地の利用に関しては、約三分の一の土地が一年のうちほとんど牧草地や放牧地に使われます。それ以外の土地は森林、生産性の低い土壌、集約的耕作が行われない土地となり、多くの場合、急な斜面によって利用度が限られています。

気候は主に海洋性気候で、穏やかな気温に恵まれ、夏に最高気温を記録する場所でも30℃を超えることはめったになく、平均気温は17℃前後です。冬の厳冬期でも、通常、気温が3℃以下になることはなく、平均気温は8℃前後です。年間を通して霧がよく発生し、特に夏には湿度を一定に保つ役目を果たしています。雨量は多く、降り方は穏やかで、霧の発生とほぼ同じくらい頻繁で、この湿り気によって植物は一年中青々としています。

マイルドな風味ですが、羊乳を使ったチーズは強めの風味になり、羊乳や山羊乳のチーズはそれぞれの乳が持つ風味がわずかに感じ取れます。牛乳を使ったものはそれほど塩味が強くなく、酸味が少しあり、ほどよくバランスが取れ、新鮮な乳の後味が残ります。羊乳と山羊乳のチーズはより強い後味が長く口に残ります。

PDO ケソ・マホレロ(Queso Majorero)

原則、マホレラ種の山羊の乳のみを使って作るチーズですが、羊乳を混ぜる場合もあります。最低8日間熟成させます。

風味の特徴

バランスの取れた、しっかりと山羊の乳の風味を感じさせるチーズです。よく熟成させたチーズはわずかな刺激と辛味があります。独特な香りとクリーミーな食感が特徴です。

その他の特徴

形状は円筒形で、高さ6cm~9 cm、直径15cm~35 cm、重さ1kg~6kg。熟成の浅いチーズでは、外皮はほとんどありません。側面にヤシの葉で編んだ帯の模様があり、上下には型の跡が模様として残っています。中程度にまで熟成させたチーズの外皮は白色で、熟成が進むにつれて、外皮は茶色っぽい黄色になります。ピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)やオリーブオイル、ゴフィオと呼ばれる炒ったトウモロコシの粉を擦り込むこともあります。生地の断面はしっかりと締まっていて白色、よく熟成させたものはややアイボリー調の色合いです。孔は少なく、あっても小さいものです。

チーズの成分は熟成期間によって異なります。各タイプの成分は次の通りです。

- ティエルノ(熟成の浅い、柔らかいタイプ):タンパク質17.4%、固形分中の脂肪 52.0%、固形分 50%
- セミ・クラード(中程度の熟成タイプ):タンパク質25.5%、固形分中の脂肪54% 、固形分 57%
- クラード(熟成タイプ)):タンパク質27.5%、固形分中の脂肪55.5%、固形分 63%

製造および熟成方法

純粋な乳であることが要求され、初乳、薬品、保存料等が混入しないように注意します。これらが、チーズの製造、熟成、品質維持、さらにチーズの出来や衛生状態に悪い影響を及ぼす可能性があるからです。

手作業あるいは搾乳機で搾った山羊の乳は、ろ過され、動物由来のレンネット(最適なものは、離乳前の子山羊の胃から取って乾燥させた凝固剤)、または許可された酵素のスターターを加えて凝固させます。この凝固の工程では乳を温度28℃~32℃に保ち、約1時間かけて行います。

生成されたカードを、製造するチーズのタイプに合わせて5mm~15mmの粒状になるまでカットします。熟成タイプほど、このカードの粒は小さくなります。その後、カードを予備圧縮して、できるだけ多くのホエーを排水させます。

予備圧縮が終わって、半分程度ホエーが抜けたカードを、ヤシの葉を編んだ帯やプラスチック製の帯状の型、または伝統的な型の模様が付いたプラスチックやステンレスの型に入れます。

加塩作業を行います。乾燥塩を擦り込む方法、または最高濃度20º ボーメの塩水に最大24時間漬け込んで加塩する方法があります。翌日あるいは翌々日に、型の上下をひっくり返して、涼しくて風通しのよい場所に置きます。3日めか4日めに、はチーズを洗い(できればホエーを使って)、余分な塩を取り除き、風通しのよい冷暗所へ戻して、定期的にチーズの向きを変えます。

熟成期間は最低で8日です。この熟成期間中に、チーズの向きを定期的に変えたり、拭き取ったりの作業を行い、またコーティング作業を行って、このチーズの伝統的な特長を引き出します。コーティングには、ピメントン(スペイン産のパプリカパウダー)やオリーブオイル、ゴフィオと呼ばれる炒ったトウモロコシの粉を擦り込む方法が一般的です。時には、チーズの脂肪分や別の熟成したチーズから採った菌を擦り込むこともあります。最後に、チーズの品質を高め重量が減らないようにするため、気孔を引き締める原料を加えます。

地理、起伏、気候

フエルテベントゥーラ島は南北に100kmの島で、 面積は1659平方キロメートルあります。カナリア諸島の南東に位置し、アフリカ大陸に最も近く、アフリカ大陸までの100 km足らずの距離にあります。

フエルテベントゥーラ島の地形の特徴の一つとして、山が低いことが一番に挙げられます。島内の最高峰のピコ・デ・ラ・サルサ山は標高807mで、島の南部のハンディア半島にあります。この山の火山的構造は、噴火により玄武岩の岩流が水平的な地質構造を蓄積して形成しました。マシソ・デ・ベタンクリアでは、基礎複合体の最も壮観な露頭の一つを見ることができますが、標高はさほど高くなく、ピコス・デ・ラ・アタラヤ山頂で標高752mです。

特に興味深いのは、風で運ばれた有機質の砂で形成された砂丘がこの島を広く覆っていることで、地元ではハブレ(jables)と呼ばれています。 広い砂浜が広がる島内の海岸線の各所に、この砂丘がみられます。山の起伏がなだらかなことから、この島では生物気候学的に珍しい状態が見られます。年間平均気温は19.6℃~18.8℃で、非常に穏やかな気候です。

気候に関して一番の特徴は、乾燥していることです。一年のうち雨が降る期間は短く、激しい降り方をします。島の大部分で降水量は年間100mm以下ですが、標高の高い場所は、時々吹く貿易風の影響で、降水量が 250mmになることもあります。豪雨となって降ることが多く、山の斜面を水が急流となって流れ落ちます。斜面に流れ出る水を利用するため、貯水容量4ヘクトメートルのダムが建設されています。このダムで貯めた水は農業用に使用されており、他に土壌や帯水層に浸みこんでゆく雨水もあります。

断面はしっかりと締まっていて白色、よく熟成させたものはややアイボリー調の色合いです。孔はある場合でも小さいものです。

PDOケソ・マンチェゴ(Queso Manchego)

マンチェガ種の羊の乳から作る、圧縮タイプのチーズ、熟成期間は重さ1.5 kg以上のもので最低30日、それ以上の重さのものは最低60日~最高2年まで熟成させます。

風味の特徴

特徴的な香りをもち、わずかな刺激と力強い風味を持ちます。熟成が深まると、若干のピリッとした風味が生まれてきます。マンチェガ種の羊乳がもたらす、ほどよい独特な後味をもつ、硬めで生地の目がしっかりと詰まったチーズです。

その他の特徴

形状は上下が平らな円筒形で、高さは最高で12cm、直径22cm、重さ0.4kg~4kgです。

外皮は硬めで黄色。側面には型の跡が網目模様のようについており、上下には特徴的な花の刻印がついています。生地の色は白から黄色みを帯びたアイボリーまであり、小さな孔が散らばって見えることもあります。

成分

- pH: 4.5~5.8
- 40℃での屈折率:1.4530~1.4557
- 固形分:最低55%
- 固形分中の総タンパク質:最低30%
- 固形分中の脂肪:最低50%
- 塩化ナトリウム:最大2.3 %

製造および熟成方法

搾ったままの乳を、温度を4℃の冷却タンクに入れて保存します。チーズの製造、熟成、保存に影響を及ぼす可能性のある初乳や薬品を使用することはできません。

凝固には、天然のレンネット、あるいは呼称統制委員会が認定しているその他の乳酸菌スターターを乳に加えて行います。この工程の間、ミルクは28℃~32℃の温度に保ち、30分~60分かけて凝固を行います。その後も45分~60分間、28℃~32℃の温度に保ちます。生成されたカードを米粒の大きさになるまでカットします。

その後、カードを混ぜながら、再びミルクの温度が40℃になるまで、少しずつ再加熱します。この工程を経ることで、ホエーが排水しやすくなり、カードだけが残ります。そのカードを、上下には「花」、側面には網目の、このチーズ特有の模様がついた型に入れます。

手作業、あるいは機械を使って、カードを型に入れたら、圧をかけて内部にあるホエーを抜きます。しばらくたったら、型をひっくり返して、今度は反対側から圧縮します。ホエーが抜けて、カードが固まったら、型から抜いて加塩作業を行います。乾燥した塩化ナトリウムを擦り込むか、または塩水に最大48時間漬けて込む方法があります。

最後に水分がさらに抜けるように、適切な湿度の状態でチーズを休ませてから、温度と湿度が管理された熟成室へ移します。熟成期間は成型の日から数えて、最低60日です(1.5 kg未満のチーズは30日)。熟成させている間、チーズ固有の特性が完成されるまで、チーズの向きを変え、磨く作業を続けます。

原産地呼称統制委員会の定めた基準に達しているチーズは、ナンバリングとPDOのロゴの印刷されたラベルによって、一つひとつ識別されています。1.5Kg未満のチーズには、ラベルの右上に青い線が交差したラベルが使われ、ポーションにカットして販売されるチーズに使われるラベルの線は緑色、と細かい決まりがあります。原料の乳はマンチェガ種の羊乳のみであることも併せて表示されます。

チーズの底に付けられるラベルはカゼインで出来ているもので、マンチェゴを表す標記がついています。この地名標記は、販売ラベルにも記載されます。また、原料の乳はマンチェガ種の羊乳のみであることも、大切な記載事項です。

地理、起伏、気候

ラ・マンチャは中央台地(メセタ)のうちの南東部分、南メセタ(あるいはサブ・メセタと呼ぶ)に位置します。大西洋方向に下る平坦な景観が特徴です。最西端の高い場所と耐浸食性の岩から成る小さな丘だけが所々、まれに見られる起伏を形成しています。

この地域は標高600m以上の広範な東西南北に広がった広大な平原です。マドリードの南東に位置するカスティーリャ・ラ・マンチャ自治州にある地方で、トレド、クエンカ、シウダー・レアル、アルバセテの各県の領域のかなりの部分にまたがって位置しています。

この地域の土壌は、中新世にできた粘土質の土壌で、牧草地の土壌は石灰と泥灰土を豊富に含んでいるものです。この地方の気候は極端な大陸性気候で、気温の変動が激しく、とても厳しい寒さの冬と、夏は気温が40℃に届くこともある、大変暑い場所です。一日の気温差が20℃にもなる日もあり、年間の最高気温と最低気温の気温差は50℃まで大きく開いています。

雨が少なく、大気は非常に乾燥し、相対湿度は65%です。この地域を4つの主だった川が流れています。タホ川とグアディアナ川は大西洋へ流れ込み、フカル川とセグラ川は地中海に河口を持ちます。また、タホ川とグアディアナ川へ流こむ支流もあり、さらには灌漑や発電に使われる貯水池、地下水を汲み上げた井戸などが多くあります。

この地域は非常に広大で、主たる産業としてマンチェガ種の羊の放牧が盛んに行われています。穀物が育つ場所では、羊はわらや収穫後の穀物の刈り株を餌にしています。また、羊はべッチやひよこ豆などの高タンパク質のマメ科作物の刈り株も飼料にしており、その中でも、レンズ豆が最も多く利用されています。

また、ブドウの新芽も食べますが、これはこの地域がワイン生産の重要な場所であるためです。ブドウの低木地を整地した後の牧草地は、羊を育てるの酪農家にとって、非常に好まれる牧草地となっています。

外皮は硬めで黄色、側面には型の網目模様がついており、上下には特徴的な花の刻印がついています。生地の色は白から黄色みを帯びたアイボリーまであり、小さな孔があいているものもあります。

PDOケソ・ナタ・デ・カンタブリア(Queso Nata de Cantabria)

ホルスタイン種の牛から搾った牛乳を使ったチーズ。外皮は蠟引きされたような艶を持った、滑らかな生地のバター風味のチーズです。

風味の特徴

風味はとてもマイルドで、甘味とキレの良さの中間にあたる味わいです。新鮮なクリームを感じさせる香りで、外観は艶があります。質感はしっかりした噛み応えがあり、同時にクリーミーでバターのような食感で口の中で溶けます。

その他の特徴

形状は円筒形か直方体で、重さは400g~2880g。外皮は滑らかで象牙色、外皮にも生地にも、通常孔は見られません。最低脂肪分は固形分中45 %です。

製造および熟成方法

使用するミルクは、ホルスタイン種の牛から搾った牛乳のみです。乳は、製造前の段階で酸性度が最大18~20 °になるように調節します。ピンタス・デ・カンタブリア(Pintas de Cantabria)種の子牛から採った動物性レンネットか、呼称統制委員会が許可した酵素を使って乳を凝固させます。凝固は温度30℃で40分間行います。カードを直径5mmの粒状になるまでカットし、その後、34℃まで再び加熱します。次にチーズを型に入れ、最大で24時間圧縮し、塩水に漬けて込んで加塩します。最低熟成期間は加塩が終わってから7日間です。熟成中はチーズの向きを変え、磨く作業を続けて手をかけます。

地理、起伏、気候

カンタブリア自治州はイベリア半島の北に位置しています。多くの山や広い谷からなる地方です。内陸部の標高は、自治州内で最も高い場所となっており、その大部分はカンタブリア山脈がカスティーリャ平原と接する南の境界線に沿っている山岳部です。

この隆起は浸食によって起こったもので、エンチソル(非成帯土壌)やまだ未成帯の土壌が広範囲に見られます。標高の高い場所の土壌は石灰質で、岩場に根づき始める植生の残滓が見られますが、それらが牧草として使われることは、非常にまれであるか、ある特定の季節の時期に限られます。

カンタブリア自治州の大部分は大西洋気候に属し、穏やかな湿気の高い気候です。沿岸地域は夏も冬も穏やかな気温に恵まれており、氷点下になることはほとんどありません。内陸部の谷では、冬の気温は沿岸部に比べてやや低めで、湿気も多く、夏は乾燥気味です。自治州の南部は標高が高く海から離れているため、大陸性気候に属し、気温が低く、より厳しい条件になります。冬は気温が低く雪も多く、夏はより乾燥します。

雨は年間を通して降りますが、特に春と秋に多く、年間平均降水量は900mmです。 起伏に富んだ複雑な地形と雨の多さにより河川網が発達しました。ほとんどの川がカンタブリア海に流れ込み、リアス式海岸を形成しています。主要な河川はパス川、ベサヤ川、アソン川、サハ川です。植生は豊富で種類も多岐にわたり、湿度の高い気候特有の植物が育っています。そのため、田園地帯では一様に緑に覆われています。内陸部や高い山地では在来種の木が生える森が広がっています。

最低熟成期間は加塩が終わってから7日間です。熟成中はチーズをひっくり返して磨く作業を続けます。

PDOケソ・パルメロ(Queso Palmero)

パルメラ種の山羊の乳のみを使った、カナリア諸島のパルマ島で作られる圧縮チーズです。

風味の特徴

すっきりとした風味で山羊乳と天然のレンネットの香り。草、干し草、マッシュルーム、ナッツを感じさせる風味。スモークしたチーズはアーモンドの殻、カナリア松の松葉、乾燥させたウチワサボテンの実の香りがします。中程度の塩味に加えて舌の上でわずかに刺激を残す味わいとで、後味として甘味が残ります。生地はしっかりと詰まって弾力感がある、ほどよい柔らかさです。

その他の特徴

平らたくつぶれた円筒形で、上下も平面です。高さ6cm~15cm、直径は12cm~60cmで、高さに比べ2倍~4倍長いことが基本です。重さは0.75kg~16kg。側面の外皮は滑らかで、ホエーを排水するために型に開けられた小さな丸い穴の跡がついていることもあります。上下の面に小さな四角い網目模様がついているものもあります。

スモークしていないチーズの色は白色で、熟成の間に黄色味を増した色になることもあります。スモークしたチーズは茶色っぽく、濃い色の筋が入っています。外皮にオイル、ゴフィオと呼ばれる炒ったトウモロコシの粉、小麦粉を擦り込んだ場合、外皮はそれに応じた色になります。製造者の識別シールが上部に貼られています。

生地は艶のある白色、熟成するにつれてアイボリーや艶のないマットな白色に変わります。断面には気孔やひびはありませんが、小さな孔がまばらに散らばっているものもあります。外見や成分は熟成の度合いによって変わりますが、最低含有量は以下の通りです。

-タンパク質:17.5%
-固形分中の脂肪:35.10%
-固形分: 48.5%

製造および熟成方法

山羊は自然の牧草を餌にしています。パルメラ種の山羊は乳量が多く、アルファカゼイン乳タンパク質を多く含むためにその乳はチーズ作りに非常に適しています。

呼称統制委員会が認定した酪農家が育てた健康な山羊から採れる、自然なままの乳のみを使って作ります。チーズの製造、熟成、保存、衛生状態にマイナスの影響を与える恐れのある初乳や薬剤は使用しません。

搾乳は、微生物の繁殖を抑えるために衛生的な環境の中で、手作業あるいは搾乳機を使って行われます。搾った乳はろ過され、子山羊の胃袋を乾燥させた天然のレンネット、または呼称統制委員会が許可した酵素のスターターを加えて凝固させます。凝固は27℃~33℃の温度で約45分かけて行います。

生成されたカードは、小さな粒状になるまでカットされ、リング状の型に入れられます。その状態で圧縮し、ホエーを排水するためにプラスチック製の四角いメッシュ状のシートの上に並べられます。

次に、島の製塩工場で作られた乾燥した海水塩を使って加塩します。塩水に漬けて加塩する場合、塩水濃度は最大で20º Beaumé(ボーメ度)、24時間を超えないようにします。

加塩の後にチーズをスモークする場合もしばしば見られます。燻製に使用する植物性チップの種類はさまざまですが、アーモンドの殻、ウチワサボテン、カナリア松が通常使われます。

熟成は洞窟や特別な保存室で行います。熟成期間中、チーズの向きを定期的にかえ、チーズの外皮を保護するためにオリーブオイル、ゴフィオと呼ばれる炒ったトウモロコシの粉、小麦粉などを擦り込むこともあります。

地理、起伏、気候

ユネスコの生物圏保護区であるパルマ島は、カナリア諸島の北西の先端部に位置しています。総表面積は706平方キロメートル、面積に対して山が占める割合が世界で最も多い島として知られています。島の最長地点はプンタ・デ・ファン・アダリド岬とフエンカリエンテ灯台の間の、距離にして45 km、続いて、プンタリャナとプンタゴルダの間の28 kmです。起伏に富んだ島の地形によって、気候は場所によって非常に異なる微妙な変化をみせ、それにより家畜は一年を通して飼料となる牧草に恵まれています。

一般的に、標高500m未満の土地では気候は非常に穏やかで、1500mの高地と比べて大陸性の気候になります。 標高2426mのロケ・デ・ロス・ムチャチョスの気候は厳しく、溶岩や火砕岩の地層には氷穴が数多くみられ、積雪や吹雪になることもあります。

島の湿度はとても高く、特に冬は大西洋で発生する低気圧と貿易風により湿気が液化することで、雨の降る日が多くなります。その結果、年間を通じて島全体の土地は緑色の植物に覆われています。
植生は豊富で多岐にわたり、さまざまな固有種と質の高い牧草が育ちます。飼料として利用できる主な植物はタガサステ(Tagasaste - Chamaecytisus proliferus)と呼ばれる、パルマ島固有の植物です。

スモークしていないチーズの色は白色で、熟成の間に黄色になることもあります。スモークしたチーズは茶色っぽく、濃い筋が入っています。外皮にオイル、コーンミール、小麦粉を擦り込んだ場合、外皮はそれらに応じた色になります。

PDOケソ・テティージャ(Queso Tetilla)

フレッシュからやや熟成させた(最低8日間)熟成チーズで、昔ながらの飼育方法で育てられたホルスタイン種、ブラウンスイス種、ルビア・ガレガ種の牛の乳を使って作られます。

風味の特徴

その香りと味は、牛乳や出来立てのバターを感じさせます。味はマイルドで、刺激はなく、酸味や苦みもほどほどです。また、バニラやクルミ、軽い生クリームの趣を感じさせることもあります。触るとつぶれやすく、べたつき感があり、食感は中程度のクリーミーさや溶けやすを持ちながら、軽い弾力性があります。口の中でもろく崩れて、つぶつぶと軽い粒感を残します。水分量は中程度、脂肪分は高めです。

その他の特徴

「テティージャ」とはスペイン語で「おっぱい」を意味する言葉です。その名のとおり、形状は均整のとれた円すい形、表面に浅い凹凸が見られ、てっぺんに乳頭のような小さな突起があります。チーズの底の部分の外周の縁は丸みがあるか真っすぐで、底の半径が高さの四分の一の長さを超えることのないバランスです。高さと直径は9cm~15cm、重さは0.5kg~1.5kg。外皮は自然のままで、表面はスムースか、または少し網状のでこぼこがあり、弾力性があり、厚みは3mm以下の薄いもので、かびは見られません。色は均一で、アイボリー(非常にフレッシュなタイプのチーズの場合)から黄色までさまざまです。底辺の部分ほど明るい色をしており、トレーの跡が残っている場合もあります。

生地は均一にしっかりと締まり、中程度のクリーミーさをもちながら、若干の砕けやすさもあります。生地の色はアイボリーから淡い黄色、孔は全くないかあってもごく僅かで、孔の大きさが米粒大より大きくなることはありません。

成分は以下の通り。
固形分中の脂肪:最低45%
固形分:最低45 %
pH:販売時点で5~5.5

製造および熟成方法

牛は伝統的な飼育方法で育てられることが義務づけられています。呼称統制委員会の定める方針のひとつには、放牧された牛が牧草地で直接牧草を食べることが定められています。

乳はできる限り良い衛生状態を保ったかたちで運搬され、断熱タンクや冷蔵タンク、その他の品質に影響を与えないことが保証された方法で行われています。

初乳、保存料、薬品の使用は禁止されています。凝固には動物由来のレンネット、または必ず許可された酵素や乳酸菌スターターを使用して、30℃~34℃の温度で行います。認可された乳酸菌スターターは、ラクトコッカス ラクチス・サブスピーシーズ・ ラクチスやラクトコッカス ラクチス・ サブスピーシーズ ・クレモリス、あるいは原産地呼称制度で守られるべきチーズの特性を変えることなく、チーズの性質を保持するために明確に許可されている凝固剤です。適量のレンネットを使い、30分以上60分以下の時間内に凝固させます。生成されたカードをひよこ豆の大きさにカットし、ホエーをある程度抜き、場合によっては酸性度を4º~6º に下げるために水で洗います。

最後にカードを適宜な大きさと形状の型に入れ、必要な時間圧縮します。そして容器の中で塩をまぶして浸透させるか、塩水に漬け込むことで加塩します。漬込む場合の最長時間は24時間です。

原産地呼称保護委員会の認定を受けるには、チーズの製造を開始しした翌日から数えて最低8日間熟成させる必要があります。熟成期間中はチーズの向きを変え、磨く作業を行うことで世話を続け、チーズ独特の特徴を引き出します。

いかなる種類のカゼイン、粉乳の使用は認められておらず、またバター等の脂肪を混ぜることもできません。また添加物に関しても、不正/適正に係わらず、呼称統制委員会が明確なかたちで使用を許可している場合を除き使用することはできません。

外皮の外観をつくろうような行為は認められておらず、それがいかなる方法であれ禁止されています。PDO の認定を受けたこのチーズには、呼称委員会が発行するPDOの表示ラベルと、同様に裏側には呼称委員会が発行する番号付きラベルを用いての、製品特定がされます。各製造者が独自につけるラベルでも、PDOの名称は明示するように要求されています。

地理、起伏、気候

ガリシア地方はイベリア半島の北西に位置しています。ヨーロッパの大西洋沿岸線で最も西にあるため、さまざまな生態系分野が関係し合う地理的交差点となっています。南北には気候と地形の組み合わせ、東西は内陸側と沿岸側の対比など、これらの要素が多様性を生み出しています。南北の間では気候に関する違いがより顕著で、それにより南北の土壌や植生に違いが見られます。

「wet Spain(湿度の高いスペイン)」に属する地域であるにもかかわらず、ガリシアはその緯度によりカンタブリア海沿岸の他の地域とは異なり、亜熱帯の大西洋気候に似た気候となっています。実際、北部では海洋性気候、南部では海洋性気候に近い気候で、ガリシア地域の中でも属する気候に違いがあります。海洋性気候の北部は雨が多く温暖で、冬季に最大降水量を記録し、夏季に降水量は最小となるので、ある程度の干ばつ状態になることもあります。南部の海洋性気候に近い気候では(ビーゴ市やオーレンセ市周辺のバイショ・ミーニョ地区がその典型)、降雨量にさらにはっきりした季節差があり、夏は最低2か月間(7月と8月)の乾燥した干ばつ期となり、冬は多雨、年間平均気温は高めです。

古生代の岩と雨の多い気候が組み合わさっているために、酸性で土壌生成が未発達な土地となり、一般的に土地の有用性は限定されます。実際、やせた土地がガリシア地域の大部分を占め、肥沃な土地は谷間の地域や低地、海岸線沿いなど限られた場所だけになります。

しかし、多くの雨と温暖な気温のおかげで、緑が生い茂る土地が形成され、牛が飼育される場所の多くである準平原では、土壌は水分量が多く褐色土で珪質の堆積物が見られます。この地域の起伏の多い地形と雨の多さはまた、河川網を発達させました。ナビア川、エオ川、オロ川、ランドベ川、ソル川、エステイロ川、ドラ川、バレオ川、マヨル川、メラ川がカンタブリア海の北部沿岸に流れこみ、タンブレ川、ウラ川、ミーニョ川は大西洋沿岸で最も長くて大きい川です。またそれぞれの河川ごとに、その他の小さな川も流れており、エウメ川、マンデオ川、 アリオネス川、ミラ川、ウミア川、レレス川などがリアス・アルタス地域とリアス・バイシャス地域の両方のリアス式海岸に流れ込みます。オーレンセ市の南東に流れるタメガ川は、北部の流域には属さず、ドゥエロ川流域に属しています。

牛の飼育は天然の牧草地と耕作された牧草地の両方で行われ、低木地帯も含まれます。非常に多くの種類の草が生え、一年に1ヘクタールあたり25トン~30トンの牧草が育ちます。ルーゴでは トウモロコシ、飼料用ビート、カブも飼料用に栽培されています。

均整のとれた円すい形、表面はでこぼこして、一番上には多少とがった小さな乳頭があります。チーズの下部分の外周は丸みがあるか真っすぐで、その幅は高さ全体の四分の一を超えることはありません。

PDO ケソ・サモラノ(Queso Zamorano)

チュラ種とカステヤナ種の羊の乳から作る圧縮タイプのチーズ、最低100日間熟成させます。

風味の特徴

香りは特徴的で力強さをもった成熟した香りです。原料の羊乳の香りが感じられます。口の中で余韻が長く残る味で、メインであるキレの良さと塩味に加え、辛味もあります。硬めでしっかりと締まった質感です。

その他の特徴

形状は円筒形で、上下にヘリンボーン模様、側面にはジグザグ模様がついています。最大で高さ14cm、直径 24cm、重さ4kgになります。

外皮は硬くて、生地とは明瞭に区別できます。外皮の色は淡い黄色から濃い灰色。生地はアイボリーで、白っぽいものから黄色みを帯びた色まで幅があります。また、小さな孔が所々にあいています。

成分は以下の通り。
- 脂肪: 固形分中 最低45%
- タンパク質:最低25%
- 固形分:最低55%
- pH: 5.1~ 5.8

製造および熟成方法

新鮮な搾ったままの乳のみを使い、初乳、混入物質、保存料、抗生物質や、チーズの製造、熟成、保存に影響を及ぼす可能性のある物質の使用は禁止されています。まず初めにレンネットを添加します。この段階では原乳を28℃~32℃の温度にして30分~45分間保ちます。

生成されたカードを5mm~10mmの粒状になるまでカットします。その後、最高で40℃の温度になるまで徐々に再加熱します。その後、カードを型に入れ、このチーズ独特の円筒型に成型しながら圧縮します。加塩は、乾燥した塩を擦り込む方法と、塩水に漬けこむ方法がありますが、塩水に漬ける場合、最大の漬け込み時間は36時間までです。

その後、成型した日から数えて100日以上チーズを熟成させます。熟成期間中は必要に応じてチーズの向きを変え、磨く作業を行いチーズの世話を続けます。PDO認証を受けたチーズには、固体識別番号、PDO を示すラベルなど、カゼインでできたラベルを付けて特定されています。

地理、起伏、気候

イベリア半島のサブ・メセタ(メセタよりやや標高の低い地域)の北部に位置するサモラ県は、場所によって地形に大きな違いが見られます。南東部は、ドュエロ川に流れ込む広範な河川網によって形成された、緩やかな傾斜の谷が交差する広大な景観が広がります。北部は谷や荒地が続き、一方、南西部では、山こそありませんが、不規則な起伏変化に富んだ急勾配が見られます。

土壌は三種類あり、一つ目は地層が形成されていない場所にある水はけのよい石灰質の褐色土で、土壌浸食の影響を受けているところもあり、粘土が混ざっていることで、高い土壌凝集力があります。二つ目は石の多い異地性の鉱床にある褐色土で、有機物が少ないものの通気性と水はけがよく、カルシウムが豊富です。三つ目は火成岩の上にある酸性の褐色土で、細かい砂から、シルト質や砂質の粘土まであらゆる性質が見られ、さらにカリウムも豊富です。

サモラ県は大陸性気候に属し、気温の変動が激しく、冬には頻繁に霜が降りる期間が長く、時にはその状態が春まで続くこともあります。夏は暑くて乾燥し、晴天が続きます。降雨量は少なく、秋に集中して降ります。年間平均降水量は300mm~500mmです。

ほとんどの川はドュエロ川流域を流れています。ごく一部の狭い地域では、ミーニョ川流域のビベイ川に流れ込む川があります。

天然の牧草地は20,116ヘクタールの広さで、ほぼ県の2%を占めています。そのうち316ヘクタールは森林地区です。牧草地で育てる牧草の大部分はイネ科の植物です。

それ以外にも、羊の放牧に使われていない地域はわずかです。たとえば耕作地では収穫後の刈り株が家畜の飼料とするため放牧に使われます。同様に、麦わらやその他の穀物のわらや、その他にたんぱく質を豊富に含むマメ科の植物の収穫後に残ったものは飼料として利用されています。

硬くてしっかりとした外皮は淡い黄色から濃い灰色、生地は白から黄色みを帯びたアイボリーで小さな孔が所々にあいています。

PDO ケスコス・デ・リエバナ(Quesucos de Liébana)

成分調整をしないままの牛乳のみを使うことがほとんどですが、羊乳や山羊乳を混ぜて作る場合もあります。牛はトゥダンカ種、ブラウンスイス種、ホルスタイン種、羊はラチャ種、山羊はピレネーやピコス・デ・エウロパ地域の品種、これらの乳を使い、最低15日間熟成させます。

風味の特徴

味はマイルドで酸味がありバターのような風味、特徴的な香りがします。スモークタイプでは、味により深みが増し、酸味と熟成感が増して、スモーク独特の香りが広がります。

その他の特徴

形状は円筒形または円板型、直径 8cm~12cm、高さ3cm~10cm、重さ約 500g。外皮は自然に生成されたままのタイプのものと、スモークタイプがあり、生地は硬めでしっかりと締まっており、少し黄色みを帯びている色調、まばらに孔が少しあいています。固形分中の脂肪分は最低45%、水分量は30%です。

製造および熟成方法

成分無調整乳を使います。そのため、異なる品種の乳の季節ごとの特徴に合わせて、脂肪分とタンパク質のバランスをみて原料にする乳を選びます。動物由来のレンネットを使って28℃~32℃の温度で、最低 45分間かけて凝固させます。生成されたカードをエンドウ豆くらいのサイズになるまでカットします。その後、型に入れた状態で、カード自体の重さで排水させながら、このチーズ独特の形を作ります。次にチーズの重さに対して2%~3%の量の乾燥塩を塗りこむ方法で加塩します。熟成は最低15日間、相対湿度85%~95%、室温15℃未満の場所に置きます。熟成期間中に、必要に応じてチーズの向きを変え、磨く作業を繰り返して世話をします。熟成期間が60日以下のチーズの場合は、製造を始める前に乳を低温殺菌します。スモークの工程を加える製造方法は、アリバ、ブレス、ロメニャ地域の特徴で、チーズを長持ちさせるだけでなく、燻製の香りが加わります。スモーク工程は、特別な燻製場でセイヨウネズの木材チップを使った伝統的な方法で行います。求める風味の強さに合わせて一日から一日半、スモークします。

地理、起伏、気候

リエバナ地域はカンタブリア自治州の南西に位置しています。西部はアストゥリアス自治州、南部はパレンシア県とレオン県(カスティーリャ・イ・レオン自治州)にそれぞれ接しています。北部にはピコス・デ・エウロパ山脈を中心にする国立公園があり、チーズ愛好家のパラダイスと言われる場所です。

この地域は直径約40kmの円形の地溝に位置しています。地溝の一番底の部分で海抜300m~400m、周囲の部分は2000m以上になります。

非常に変化に富んだ景観で、長くて狭い谷が、浸食の影響を大きく受けた不規則な流域と交互に見られます。山脈の西部分は、垂直に近い角度で崖がそそり立つ絶壁が続きます。地溝の南と東の縁の部分では起伏は緩やになり、斜面部分の一部が台地になっているところもあります。

地溝の最も低い場所は、古生代のスレート岩が表面を覆っており、高アルカリ性で栄養分が豊富な、水分量の多い石灰質の褐色土になっています。地溝の側面部は、古生代の石灰質の土で形成されています。ペーニャ・ラブラの山頂を超えると、礫岩、砂岩、粘土、リモナイトなどが交互に見られます。

気温は穏やかで、年間平均気温は14.5℃、平均最低気温は10℃、平均最高気温は20℃です。7月から8月にかけて最高気温が36℃前後まで上がることもあります。雨は多く900mm~1200mm、年間90日~120日降ります。風も多く記録される地域で、北部は冷たく湿った風、南部は非常に乾いた熱い風が吹きます。

主な川はデバ川とナンサ川で、デバ川はピコス・デ・エウロパを水源とし、下流ではアストゥリアス自治州との境界線となって流れています。最も重要な支流はキビサ川とバヨン川です。デバ川はこの地域で最も変化に富んだ川で、その河口はティナ・マヨールの入り江を形成しています。ナンサ川はパレンシアとの境界線近くを水源とし、標高差のある場所を流れてティナ・マヨールに流れ込みます。ナンサ川の最も重要な支流はラマソン川です。

この地域は非常に多くの種類の植物が育ちます。牧草地には自生する草があり、それらのほとんどは一年草で、家畜の飼料として有益な植物です。高い山地地域でも牧草地とよく似た種類の植物が育ちます。

マイルドで酸味がありバターのような風味、特徴的な香りがします。スモークしたタイプはより深みが増し、酸味と熟成された風味、スモーク特有の香りが広がります。

PDOロンカル(Roncal)

羊の乳を使った、圧縮タイプのチーズ。ラサ種、ラチャ種、さらにラチャ種と東フリージアン種の交雑種(F-1)の羊の乳を原乳として使用します。最低4か月間熟成させたチーズです。

風味の特徴

香りは心地よく力強い香りです。味には強い個性がある風味で、わずかな刺激味、シャープ感がありながら、舌の上でバター風味を感じさせます。芳醇な羊乳の風味が混ざり、余韻が長く残ります。

その他の特徴

形状は上下が平らな円筒形、高さ8cm~12cm、直径はさまざまあり、重さは1kg~3 kg。外皮は自然のままで、硬く、厚めで、ざらざらして、油っぽく、色は明るい茶色から麦わら色まで幅があります。かびがある場合と無い場合があります。生地の断面はアイボリーホワイトから淡い黄色で、硬めの食感です。気孔はありますが、割れ目としてのうろは見られません。固形分中の脂肪は少なくとも45%以上、水分量は40%以上になります。

製造および熟成方法

製造に使う乳には初乳、薬品、保存料等が混入しないように注意します。これらが、チーズの製造、熟成、品質維持、さらにチーズの出来や衛生状態に悪い影響を及ぼす可能性があるからです。認定された品種の羊から搾乳した、加工処理や保存料の添加がされていない純粋な成分無調整乳で、季節ごとの乳の変化に合わせて、脂肪分とタンパク質のバランスが取れている乳を原料に選び、最終的な完成品のチーズの脂肪分が最低でも45%になるように調整します。また、微生物の増殖を抑えるため原乳の保存は10℃未満で行います。

最初に凝固作業を行います。30分~60分間で凝固するよう、正確な量の天然のレンネットを使って乳を凝固させます。凝固、カッティング、ホエーの排水は30℃~37℃の温度で行います。

その後、生成されたカードを米粒程度の大きさになるまでゆっくりとカットします。カットしたカードを手で打ちつけながら固まりをつくりつつ、ホエーを抜いてゆきます。その後、ブロックに切り分けます。

次にホエーを抜くために、布巾を敷きこんだ型に入れます。型の中で、手作業かプレス機で圧縮し、完全にホエーを抜くことでチーズの最終的な形が出来上がり、外皮が形成されます。

加塩は乾燥塩を手で擦り込むか、あるいは最大48時間まで塩水に漬けて込んで行います。最後に、12℃の室温に保たれた第一熟成室で40日間熟成させ、その後、 湿度の低い7℃の室温の第二熟成室で約2か月間熟成させます。

熟成は、加塩の最終日から数えて全体で4か月以上必要です。熟成を待つ間、このチーズ独特の特性が生まれるよう、必要に応じてチーズの向きを変え、磨く作業を加えて世話を続けます。

地理、起伏、気候

熟成は、加塩の最終日から数えて全体で4か月以上続けなければならず、その間、チーズ固有の特性が生まれるよう必要に応じてチーズをひっくり返して磨く作業を続けます。

このチーズが製造・熟成される地域は、ナバラ県のロンカル渓谷を形作る、ウスタロス、イサバ、ウルサインキ、ロンカル、ガルデ、ビダンゴスとブルギの市町村からなっています。

ロンカルのチーズに最適な羊乳の生産地域と一致しており、これは、ナバラ県のその地域が、ちょうどラサ種、ラチャ種の羊が自然に成育しやすい地域であるからです。

PDOサン ・シモン・ ダ・ コスタ(San Simón da Costa)

牛乳を使った、スモークされたチーズ。原料の牛乳は成分無調整の生乳や低温殺菌されたものを使用。搾乳する牛の種類は、ルビア・ガレガ種、パルダ・アルピナ種、ホルスタイン種、または交配種。熟成期間は最低で30日。大きなこまのような独特な形が特徴的で、平な底面からとがった先端部分に向かって細くなった形です。

風味の特徴

スモークチーズの典型的な香りと風味を持ちます。樺の木を使って行う燻製から生まれるスモーキー感があります。チーズの質感はキメが細かく、脂肪分は多め、やや硬めで弾力性もほどよくあり、しっかりと締まっています。色はクリームイエロー、滑らかにカットできるチーズです。

その他の特徴

スモークした外皮は硬く、弾力性はなく、厚みは1mm~3 mmで、 外観の色は黄土色(赤みがかった黄色)で脂肪分は少なめです。大小さまざまな大きさの、丸や不規則な形の「チーズアイ」が少し見られます。このチーズアイのサイズは、通常はエンドウ豆の半分以下の大きさです。

成分は以下の通り。
固形分:最低55%
脂肪:固形分中最低45%、最大60%
pH:5.0~5.6

形状:
大きいタイプ:重さ0.8kg~1.5kg、高さ13cm~18 cm
小さいタイプ:重さ0.4kg~ 0.8kg、高さ10cm~13 cm

製造および熟成方法

製造工程は次の通りです:

凝固:レンネットを使って凝固させます。生産地固有血統の動物性レンネットを使用するよう、呼称統制委員会では特に推奨しています。31℃~ 33℃の温度で 30分~40分かけて凝固させますが、生乳を使用する場合には28℃~32℃の温度で30分~35分かけて行います。 

カッティング:直径2mm~5mmの細粒になるように、カードをカットします。

成型:PDOに認定された形状になるよう適切な形と大きさの型にカードを入れます。 

圧縮:特別な圧縮機を使います。圧縮時間は、加える圧とチーズの大きさに応じて設定します。その後、型から出したカードから、さらにホエーを自然に排水させ、滑らかな外皮を作るために、チーズ一つ一つを綿の布巾で包みます。 

加塩:14%~17%の塩水に最大で24時間漬け込みます。

熟成:加塩工程の最終日から数えて、大きいタイプで最低45日間、小さいタイプで最低30日間熟成させます。 この熟成期間中に、このチーズ独特の特性が生まれるように、必要に応じてチーズの向きを変え、磨いて世話を続けます。

防カビ溶液に漬ける:この作業は任意です。オリーブオイルや許可された材料を使用した溶液にチーズを漬けてかびの生成を防ぎます。

スモーク: チーズに独特な色がつくまで、適切な時間をかけてスモークします。チーズが直接火に当たらないように終始注意が必要です。スモークには樹皮をはがした樺の木が常用されています。
品質とトレーサビリティを保証するために、通常、PDOチーズはホールの状態で、呼称統制委員会に認められた包装方法でパッケージされ販売されます。しかし、委員会はポ―ションタイプでの出荷や販売時にチーズをカット売りすることも認めています。

地理、起伏、気候

ルーゴ県のテーラ・チャ郡はガリシア州の中で最も広く、特徴のある地域の一つで、周りの山のすそ野に囲まれた、緩やかなうねる風景が広がっています。牧草地として理想的な場所で、温暖で湿気のある気候のもと、牧草がよく育ちます。この地域でたくさん育つ樺の木はチーズをスモークする際の木材として使われ、独特な色と香りの仕上がりをチーズに与えています。

質感はキメが細かく、脂肪分は多め、やや硬めで弾力性もほどよくあり、しっかりと締まっています。色はクリームイエロー、滑らかな断面です。

PDO トルタ・デル・カサール(Torta del Casar)

羊の乳から作るチーズです。羊の種類はメリノ種やエントロフィーノ種。自然の植物から採ったレンネットを使って凝固させます。熟成期間は最低60日です。

風味の特徴

深い香りと芳醇な風味に加え、植物性レンネットによるほのかな苦みがあります。口に入れると溶け、わずかな塩味が感じられます。質感は柔らかめから非常に柔らかいものまであります。

その他の特徴

形状は上下が平らな円筒形で、側面の外周は真っすぐ、またはやや膨らんだ形です。サイズによって三つのタイプに分かれます。直径はどのタイプでも最低7cmで、高さは直径の半分までの高さと決まっています。タイプAは重さ801g~1100g。タイプBは重さ501g~800g。タイプCは重さ200g~500g。外皮は生地とは明瞭に区別できる、薄いく、セミ・ハードなもので、色は黄色から黄土色、表面に小さなひびが入っていることもあります。生地は白色から黄色っぽい色で、クリーム状に、柔らかく、しっかりと詰まっています。カット面には、熟成期間にできる小さな孔が多少みられることもあります。

成分は以下の通り。

- 固形分中の脂肪分: 最低50%
- pH: 5.2~5.9
- 固形分: 最低50 %
- 塩化ナトリウム:最大3 %

製造および熟成方法

羊の飼育は、羊の群れだけ、あるいはほぼ羊だけの環境でおこなわれています。羊は伝統的な給餌方法で、生産地に育成する牧草を食べて育ちます。必要なあらゆる栄養補助飼料は呼称統制委員会によって規制・監督されており、呼称統制委員会は羊の飼育と給餌方法について規則を定めています。上記の種の羊は乳量が少ないため、1kgのチーズを作るのに約20頭分の乳が必要になります。

原料の羊乳は搾ったままで成分調整を行っていない乳で、純粋なまま、他物の混入のないものを使用します。そのため認定酪農家が育てた健康な羊から採れた乳を使います。チーズの熟成、保存、健全さや衛生状態に悪い影響を及ぼす可能性のある初乳、阻害剤、抗生物質、薬品、保存料などの使用は禁止されています。

微生物が増殖しないように、搾りたての乳は4℃未満の温度を保てる冷蔵設備の中で保存され、保存時間も最大48時間までです。チーズ作りは凝固から始まります。まず、植物性レンネットを使って26℃~32℃の温度で50分~90分かけて凝固させます。レンネットは朝鮮アザミ(現地ではHierbacuajo - 「凝固させる草」として知られている)の繊維状の花を水に浸して抽出します。

その後、金属製の細いワイヤーが組み込まれた特別な道具を使って、カードを米粒大になるまでカットします。出来上がったカードを、円筒形の型に入れ、1平方インチ当り1~3Kgの圧をかけてホエーを抜きます。ホエーが完全に抜けて、完成品の形になるまで、最低8時間圧縮します。

加塩作業には塩化ナトリウムを使います。乾燥した状態で直接チーズに塩を擦り込むか、16ºボーメ度の塩水に1時間~6時間漬け込んで加塩するか、いずれかの方法で行います。

その後、熟成は4℃~12℃の温度、相対湿度75%~95%の環境で、最低60日間行います。うまく熟成が進むように、毎日チーズの向きを変えて世話をします。熟成期間中にこのチーズの特徴であるとろりとした生地ができあがっていきます。柔らかい外皮から生地が流れ出ないように、チーズを包む場合もあります。

外皮は自然のままか、洗う、あるいはブラッシング等の手を加えることもあります。この他、伝統的な方法としてオリーブオイルや他の認可された材料でコーティングされたタイプもあります。

地理、起伏、気候

このチーズが生産地域は、エストレマドゥーラ自治州のカセレス県にあり、広さは約40万平方メートルあります。位置的にはカセレス県の中央から南部に位置し、バダホス県との県境となるサン・ベドロ山脈まで北方向に広がり、東はアルモンテ川、北はタホ川が流れて、ロス・リャーネス・デ・カセレス、シエラ・デ・フエンテス、モンタンチェスの市町村を含む地域です。

地形はステップのような平原で、北西から南東にかけてシエラ・デ・フエンテス地区が広がり、砂が多い不毛のやせた土地で、岩がたくさん露出しています。

大陸性気候に属する地域で、夏は長くて暑く、冬は短くて温暖、年間降水量は300mm~500mmと幅がありますが、そのほとんどは春と秋に降ります。

外皮は薄くて軽く、セミ・ハードで黄色から黄土色、表面に小さなひびが入っていることもあります。生地は白色あるいは黄色っぽく、しっかりと詰まっていますが柔らかくてクリーミーです。

トロンチョン・チーズ(Tronchón cheese)

羊乳だけ、あるいは羊乳と山羊乳の混合乳を原料とした、伝統的な方法で作るチーズです。

風味の特徴

均一でしっとりと締まった生地、やや弾力があり、硬めの食感。味は質実で深い味わいで、バターのような風味があります。山羊や羊のミルクの風味と、飼料としているハーブの香りも感じられます。強い風味で脂肪分が多く、少し刺激があり、野生植物の香りがします。

その他の特徴

熟成タイプのチーズで、ソフトタイプからハードタイプまで種類があります。このチーズの最大の特徴は、形状で、上下二つの面のうち片方に火山のクレーターのようなくぼみのあるつぶれた球形、または木の幹のような円筒形です。重さは0.5kg~2kgまであります。

このチーズの名前は生産地の町の名前に由来しています。アラゴン自治州テルエル県のエル・マエスロラスゴ地域にある、トロンチョンという町です。現在、ここにはトロンチョン・チーズを作る数少ない製造業者の一つ「Queseros Artesanos de Tronchón-トロンチョン手作りチーズ工房」があります。

生地は白っぽく、孔が無く、弾力性はそれほどありません。外皮は滑らかで濃い黄色です。

トロンチョン・チーズの形状は、つぶれた円筒形で、上下どちらか、または両面に火山のようなくぼみがあります。片方だけにくぼみがあるタイプでは、反対側はやや膨らみをもった平面になっています。外皮には一般的に、花柄や特徴的なモチーフ、または文字が彫られています。

製造および熟成方法

原料の乳は羊乳または山羊乳です。エル・マエスロラスゴ地域から集められた乳をタンクで保存して使い、異なる地域で生産された乳を混ぜることはしません。乳を冷却タンクからステンレス製のカードタンクに移します。カードタンクは二枚の仕切りで分けられた長方形をしている容器、あるいは温水を入れて湯煎のできるタンクのついている長方形の容器です。

凝固は乳を30℃の温度まで温め、レンネットを添加した後、全体に行き渡るように最低30分間攪拌します。カードの硬さをチェックするために、幅の広い刃のナイフをカードに差し込んで回し、カードを切り出します。カードを切り出した跡が崩れてしまうようならまだ固まっていないことを意味し、そうならなければチーズを作る段階まで凝固したことを意味します。

カッティングは、カードが小さな粒になるまで、全方向にパレットカッターを動かして行います。次に再加熱します。再加熱の温度は35°C までが限度、パレットカッターでカードを混ぜ続けてながら温度を上げていきます。この工程で、カードは米粒ほどのサイズまで小さくなり、ホエーを最大限排水します。

タンクの温度が32℃~35℃まで上がったところで、混ぜるのをやめてしばらくカードを休ませます。小さな穴のたくさんあいたトレーをタンクの先端に置き、ホエーをタンクから抜き、カードだけ残します。しっかりと排水できたら、さらにもう二枚のトレーを使ってカードを挟んで圧縮し、ホエーを全て抜きます。その後25分間休ませます。

休ませたカードをこのチーズの独特な形の型に分け入れます。ハードタイプの場合で最低90日間熟成させます。

地理、起伏、気候

トロンチョン・チーズの生産地は、イベリコ山系の中心部、すなわち、アルト・マエストラット地域といわれるテルエル県(アラゴン自治州南部)、カステリョン県(バレンシア自治州)、タラゴナ県(カタルーニャ自治州)にまたがる地域にあります。この地域は標高が高く、険しい地形で、石灰岩が大部分を占めています。長い年月をかけて深い渓谷を削り出した河川の間に、石灰岩の高い尾根が形成されています。

マエストラットは半ば山の中に入り込んだ、地中海性気候で、寒暖差が激しく、年間平均気温は8℃~12℃です。全体的に降水量は少なく、東側の山脈で多く降り、北部や西部では少なくなります。

トロンチョン・チーズは円筒形で、上下どちらか、または両面に火山のようなくぼみがあります。

ビジャロン・チーズ(Villalón Cheese)

羊乳から作るフレッシュチーズで、羊乳と牛乳を混ぜて作る場合もあります。円筒形または断面が底が平らな楕円形のかまぼこ型、高さ5cm~7cm、長さ22cm~23cmです。

風味の特徴

甘く、ミルク風味があり、しっとりしており、わずかに塩味と脂っぽさが感じられます。柔らかな質感ですが、生地は濃密にしっかりと締まっており、羊乳をほどよく感じさせる味わいです。甘さ、わずかな塩味、脂っぽさが特徴です。

その他の特徴

形状はかまぼこ型で、断面は円形または底が平らな楕円形のかまぼこ型です。チーズのサイズは小さく、0.5kg程からで2kgを超えることはありません。白くキメの細かい質感の外皮に、不均一な孔がみられます。内側の生地は濃厚にしっかりと締まっており、また、ややフレーク状に崩れます、小さな孔がいくつも散らばっています。わずかな乳の風味と軽い塩味が感じられる甘めの味が特徴の白いチーズです。

製造および熟成方法

原料は羊乳または羊乳と牛乳の混合乳です。乳をよく混ぜ合わせた後にレンネットを加え、その後圧縮して型に入れ、塩水に漬け込んで加塩します。このチーズはフレッシュタイプのため、10日間~20日間熟成させます。

地理、起伏、気候

ティエラ・デ・カンポスにはバルデラドゥエイ川とセキージョ川の二つの小さな川が流れています。緩やかな起伏が続く土地で、さまざまな形状の低い丘の上にはいくつもの城が点在しています。ティエラ・デ・カンポスの地理上の境界部分は、東はカリオン川、西はセア川、最も東の端はピスエルガ川になります。スペイン中央平原の中心部にあり、平らな景観が特徴です。

気温の変動が極端で冬は寒く、夏は暑くなります。また、乾燥した地域です。大陸性気候に属し、降雨量は少なく、春と秋に雨が降ることが多いです。

羊乳または羊乳と牛乳の混合乳から作るチーズです。

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