ビネガーおよびスパイス

平均的なスペイン人は1年間に1.4~2リットルのビネガーを消費します。サラダに、また、ガスパチョなどの一般的な料理や非常にバラエティに富んだスペインの野菜ピクルスに使用し、伝統的な料理、前衛的な料理のどちらでも香りづけの要素として用います。スペインは最高級サフランの世界最大の生産国であり、原産地呼称保護の対象であるスペインのPDOアサフラン・デ・ラ・マンチャは世界一であると考えられています。ピメントン(パプリカではなく)は、スペインの最も象徴的な素晴らしい産物のひとつです。

ビネガー

ワインビネガーは、もともとワイン製造過程でのミスからできたものであり、ローマ人からは「vinum acre(酸っぱいワイン)」 と呼ばれていました。何世紀にも渡り、この香りのよい液体はそのツンとする複雑な香味をスペインの美食に供してきました。今日も、特にその伝統的な精巧さが保護原産地呼称(POD)の対象となった地域では、この状況が続いています。
平均的なスペイン人は1年間に1.4~2リットルのビネガーを消費します。サラダに、また、ガスパチョなどの一般的な料理や、非常にバラエティに富んだスペインの野菜ピクルスに使用し、伝統的な料理、前衛的な料理のどちらでも香りづけの要素として用います。スペインでは、高品質のビネガーは簡単に見つけられます。PDOに分類される欧州の5種類のビネガーのうち3種類はスペインのものだからです。PDO ビナグレ・デ・へレス (とても香味が高く、マホガニー色をしたシェリービネガーで、少なくとも6ヵ月間熟成させたもの)、PDO ビナグレ・デ・コンダード・デ・ウエルバ (濃い栗色でキリッとした辛口のもの)、PDO ビナグレ・デ・モンティージャ・モリレス( ペドロ・ヒメネス種のぶどうから作ったやや甘口または甘酸っぱいビネガー)の3種です。これらの呼称の下で生産されるビネガーはどの種類もすべて、同様に保護対象となっているワインから作られなければならず、ワインとワインビネガーは同じ設備、樽、古くからの技術を共有していることがよくあります。
こうした製品について最も重要なのは3種のビネガーの呼称すべてに用いられている熟成方法です。クリアデラ・ソレラ法として知られるこのプロセスでは、ピラミッドのように交互に積み上げた何段もの樽の中でビネガーを熟成させます。最下段、すなわちソレラには最も古いビネガーが入っており、ここから一部を取り出して瓶に詰めます。このとき、同量のビネガーがすぐ上の樽それぞれから下の樽に移され、最上段の樽に新しいビネガーが追加されます。
ガリシア、カスティーリャ・ラ・マンチャ、ラ・リオハ、カタルーニャといったスペインの有名なワイン生産地域では、他の種類のワインビネガーが作られています。いくつか例を挙げると、アルバリーニョ、テンプラニーリョ、グルナッシュ、シャルドネといったワインから作られます。
ニンニク、ハーブ、ラベンダー、サフランまたは果物などで作り、香味づけしたビネガーもスペインでは人気のある伝統的な製品です。また、シードル(アストゥリアス州やギプスコア県の典型的な飲物)から作ったなめらかで上品なビネガーについても同様です。

スパイス

サフラン

ムーア人の到来まで、塩以外のスパイスや香辛料は、イベリア半島で少々使われる程度でした。スペイン料理でのサフランやピメントンの重要性を考えると、現在では意外に思われます。実際、パエリヤのような象徴的なスペイン料理やチョリソのような製品 にこれらが入っていないというのは想像しにくいことです。
近東原産のサフランはムーア人がスペインにもたらし、ラ・マンチャの平野での栽培に成功しました。サフランの使用は多くのアラブ料理の特徴でもあり、アラブ文化がスペイン料理に与えた影響の重要な印です。サフランはスペインから欧州の他地域に広まり、大いなる人気と名声を得ました。
サフランは10月に数日間だけ花を咲かせる球根植物であるサフランの雌しべ柱頭から得られます。栽培は非常に骨が折れます。土壌には十分な手入れが必要であり、生産、収穫、雌しべの分離、それに続く乾燥に関わる作業はすべて手作業で行わなければなりません。サフラン1kgを得るには、約10,000本の花が必要です。
スペインは最高級サフランの世界最大の生産国であり、アサフラン・デ・ラ・マンチャ(PDO)は、その明るい赤色と、花々や乾いた葉の刺激的で快い香り、そしてすばらしい着色力から、世界最高であると考えられています。
サフランの栽培も、テルエル県(アラゴン州)のリベラ・デル・ヒロカとして知られる地域で、長く伝統的な歴史があります。生産量は非常に限られているものの、その高い品質はスローフード運動の注意を引き、この選ばれ、危険にさらされているスペイン産品を保護するという共通の目標に向かって栽培業者とともに活動するための「フラッグシップ」(最重要)品に分類されました。

パプリカパウダー (ピメントン)

ピメントン、すなわちスペインパプリカとは、ある種の赤唐辛子を乾燥させて潰して作る、細かい明るい赤色の粉のことです。このすばらしい調味料で多くの伝統的なスペイン料理、貯蔵加工した肉製品、およびチーズに特徴的な風味と色がつけられます。
ピメントンの歴史はその原料となる唐辛子の歴史と必然的に関連しています。最初の唐辛子の種は、1493年、クリストファー・コロンブスがアメリカから持ち込みました。これが エストレマドゥーラ州のグアダルーペ修道院の修道士に渡り、ここから、この製品はラ・ベラ地域(カセレス県)にあるユステ修道院に、次にムルシアのラ・ニョラ修道院に、そして最終的にその他の ジェロニモス系の大修道院や修道院に伝わりました。意外なことではありませんが、ピメントン・デ・ラ・ベラ(PDO)とピメントン・デ・ムルシア(POD)は、今日、主要なピメントン生産地域となっています。
ムルシアで用いられる唐辛子はボラまたはニョラ種の唐辛子で、これは、熟したら一般に数日間天日干しにしてから粉末にします。ムルシアのピメントンは明るい赤色で、強く刺激的な香りと甘い風味があります。
ラ・ベラでは、ボラ亜種に加えて、オカレス群の唐辛子も栽培されています。これらを様々な方法で組み合わせることで、甘いもの、甘酸っぱいもの、スパイスが効いたものと各種のピメントンを作ることができます。
乾燥プロセスは一般に熱いオークの木炭の上に置いたラックで、または熱風で行います。これにより最終産品に特長的な燻したような風味がつきます。唐辛子を挽くには特殊な石が使用され、それにより鮮やかな色、刺激的な香味、そして強い着色力が出ます。
スペインのすべてのピメントンのうち相当の割合が肉加工食品に使用されて風味と色を添え、同時に天然の保存料の役割も果たします。このスパイスはほぼすべての食品とよく混ざり、ニンニクスープ、ガリシア風タコ料理、伝統的なシチュー、およびその他の無数の料理の味付けに使用されます。疑いなく、ピメントンは世界の料理へのスペインの偉大な貢献のひとつです。

ビネガーおよびスパイスの産地

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